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【開催報告】LGBTQ+&かもしれない人のための就活・就労(2023/12/21)

今年度もLGBTQ+向けの就活・就労イベントを開催しました。

今回は、前年度の内容から一部変更をしました。ゲストによる体験談として、昨年は3名のゲストをお招きしましたが、今回はLGBTQ+フレンドリーな企業の取り組み状況についてお話しいただく時間を新たに設けました。今回はPRIDE指標GOLDを7年連続して受賞している日産自動車株式会社の取り組みをお話しいただきました。

当日参加できなかった方のためにも、このイベントの内容を本イベントの主担当だった職員の「山さん」からダイジェストでお伝えします。

1.イベント概要

就活・就労を迎えようとしているLGBTQ+&かもしれない皆さんにとって、会社選びや面接時の対応について悩んだり、不安に思ったりした方は多いのではないでしょうか?

LGBTQ+ & そうかもしれない人が就活・就労をする際、大変残念で許されないことでありながら社会的トランスフォビア、バイフォビア、ホモフォビアなどが障壁となるケースがあります。これは学生個人の問題ではありません。社会の問題です。LGBTQ+当事者学生が就活・就労を行う際には、具体的な対策を講じておくことで安心感を得られたり、心構えを整えやすくなることがあります。

ジェンダー・セクシュアリティについて専門知識のあるキャリアコンサルタントや実際に就活体験、就労経験等された先輩の体験談、そして企業の取り組み状況を知ることによって、参加者とともに就活・就労について考える場を提供することがこのイベントの目的です。

2.当日の内容

イベントは、

  1. 開始挨拶、本日の流れの紹介

  2. 【第一部:知識】LGBTQ+の就活・就労について

  3. 【第二部:体験談】当事者の就活・就労体験談

  4. 【第三部:企業談】LGBTQ+フレンドリー企業からのメッセージ

  5.  質疑応答

  6.  リソース紹介、閉会

という流れでした。

【第一部:知識】LGBTQ+の就活・就労について

■専門知識のあるキャリアコンサルタントからのお話とアドバイス

  • 「キャリアとは轍(わだち)」であるが、LGBTQ+の人はその轍について語る機会を奪われたり、その環境が整っていなかったり、轍を残すことができなかったりする

  • 今の就活は過渡期にある。終身雇用が崩れ、自分のキャリアを作って行ける会社を探さないといけない。

  • D.E.スーパーによる「ライフキャリアレインボー:①子ども、②学生、③余暇人、④市民、⑤労働者、⑥配偶者、⑦家庭人」という概念があるが、これはそもそもそのキャリアを築く人がシスジェンダー・ヘテロセクシュアル・性愛者であることを前提に作られた。

  • キャリアを発展させてゆくための資本には、①ビジネス資本、②社会関係資本、③経済資本があるが、LGBTQ+の当事者性が高い人には困難な点がある。

  • PRIDE指標の評価は参考になるが、日本の企業では約400社(0.1%)しか受賞していないので、自分で見抜くことが重要。

  • 一人で就活に望まず、GSセンター、キャリアセンター、外部のリソースなどからサポートを受けるとよい。

  • 多様な人材が活躍するダイバーシティ経営が企業の成長に不可欠。

【第二部:体験談】当事者の就活・就労体験談

■米田さん
自己紹介、就職活動、就労体験についてお話しいただいた。

  • スウェーデン交換留学を経て、日本体育大学を卒業し、面接時からゲイであることをオープンにして就職した福祉・教育系の会社にて就労するかたわら、プライドハウス東京レガシーのいくつかのプロジェクトにもスタッフとして関わっている。

  • 小学校に上がる前から男の子として男の子が好きだと自覚があったが、自分の性のあり方については学校生活の中で隠して過ごしてきた。

  • スウェーデンで過ごした時にゲイであることが当たり前に受容される経験をしたことが、それ以降の人との関わり方に大きな影響を与えた。「カミングアウト」をよくするようになった。

  • 就労体験として「無理しない。偽らない。ゲイである等身大の自分でいる。」が自分にとっての大事な点。

  • NPO活動として、洋書整理ボランティア、「レガシーサロン」スタッフとして従事。

  • カミングアウトは本人の選択である。

■STさん
クローズド就職からセミオープン&在職しながらのトランジション(性別移行)についてお話しいただいた。

  • セクシュアリティやジェンダーについて迷子になったが、最後に「FTM」に着地。

  • 大学卒業後は性自認をオープンにせず就職。

  • 現職(知的障がい者グループホーム職員)を選んだ理由は、「望まない性表現を求められない」から。

  • フィリピン旅行を機に、ジェンダー外来の門をたたき、職場でセミオープン就労(限られた一部の人にジェンダー・セクシュアリティを伝えた状態での就労)。

  • 業務の中で異性である女性の介助を担当することがなくなって楽になった。

  • 前の上司からパワハラを受けたこともある。「上司ガチャ」はある。

  • 他部署の社員にカミングアウトしていないことが課題。

【第三部:企業談】LGBTQ+フレンドリー企業からのメッセージ

■福田りささん(日産自動車株式会社シニアマネージャー)
日産自動車のDEI推進とLGBTQ+支援施策についてお話しいただいた。

  • DEIとはダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンのこと。この三つのサイクルを生み出すことで多様な人材を最大限に活かし、イノベーションをドライブし続ける。

  • エクイティ(公平)とイクオリティ(平等)は異なる。

  • 多様な人材が活躍、フレキシブルな働き方、性別を問わず育児と仕事の両立する社員の活躍を目指す。

  • LGBTQ+に関する取り組みとしては、風土醸成(セミナー、e-learning、メールマガジン、ステッカー、エンプロイーリソースグループ)、制度整備・ガイドライン(休暇・祝い金、健康診断個別設定、多目的トイレ、社内外相談窓口、グローバル人権ガイドライン)、社外への貢献(東京レインボープライド協賛・出展、セミナー・ワークショップ、PRIDE1000、PRIDE指標GOLD7年連続受賞)を行っている。

  • 誰もがわくわくと働ける日産を目指し、「言い続ける、やり続ける、アライを増やす」。

  • 服装は面接やビジネスにふさわしい服装であれば大丈夫。面接で何を話すかが重要。カミングアウトのタイミングは入社前でも後でも大丈夫。

  • 志望動機には、「LGBTQフレンドリーな会社だから」という理由ではなく、会社で何を実現したいのかを書くべき。

【質疑応答】

質疑応答の中から出た主な回答・アドバイスは以下。

  • 「自分自身」にとって安全な場で知っていくと良い。GSセンターはそのひとつ。企業を選択する際、日産自動車のように社外での活動や相談窓口を持っている会社はポイントが高い。(キャリアコンサルタント)

  • カミングアウトして理解を得られたが、あくまでも個人の選択。福祉業界は当事者にとって比較的働きやすい。(米田さん)

  • LGBTQ+当事者の話をたくさん聞こう。カミングアウトしたら自分のフアンを増やそう。本業+副業のすすめ。(STさん)

  • 企業も発展途上にあり、改善を続けて行く。(福田さん)

【リソース紹介】

学内外の就活・就労で使えるリソースを紹介しました。学内の相談窓口としてGSセンターとキャリアセンター、LGBTQ+稲門会、企業探しに役立つイベントおよびサイトとして、ReBitのDIVERSITY CAREER FORUMとJob Rainbowをご紹介しました。

3.参加者の感想

自分は就活よりも就労の部分に不安があって話を聞いていたのですが、「それとなくカミングアウトして認めてもらうことで、ストレスなく働けている」ということで、カミングアウトという壁さえ超えてしまえば、セクシャリティー(原文ママ)に悩まず働けるかもしれないと思えて良かったです。

4.GSスタッフ担当者後記

  • 今回のイベントの司会を務めた学生スタッフのけいです。私は現在卒業を控える大学4年生で、ちょうど1年前実際に就職活動をしていました。ゲストの方々からのお話を拝聴しつつ、当時傷ついたことや、腹が立ったことを思い出していました。就職活動って多くの人が行なっているはずなのに就職しているとき、私はすごく孤独を感じていました。またその孤独を我慢しなければいけないと思っていました。今回のイベントで、キャリアコンサルタントの方、就活・就労を実際に経験された方、そして企業の方から多角的に話を聞くことで、私が感じていた孤独は私だけの問題ではなく、構造的に生み出され、多くの人と共有できるものなのだなと思い、今更ながら心が軽くなりました。実際に就活・就労をしている間は、目の前のことだけに集中してしまいがちですが、決してあなたは1人ではないこと、あなた個人の問題ではないことを忘れないでほしいです。皆さんが心地よく就活・就労できることを願っております。(学生スタッフ けい

  • 昨年に引き続き、同じキャリアコンサルタントの方に解説をいただいた。とてもわかりやすい説明で感謝。

  • 米田さんの「等身大の自分でいる」というメッセージが心に残りました。

  • STさんの性自認の揺らぎや在職しながらのトランジションの様子がとても貴重な体験談だと思いました。

毎年開催しているこのイベントですが、私は今回はじめて担当しました。企業がどのようにD&Iに取り組んでいるかについても学びたいと考え、先駆的に取り組んでこられた日産自動車株式会社のご協力を得て、企業の取り組みについてご説明いただきつつ、参加者からのご質問にも回答いただきました。この場を借りて、日産自動車様にあらためまして、御礼申し上げます。

次回も少し改良を加えて開催したいと思いますので、引き続きのご参加をお待ちします。(職員 山さん)

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