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授業の様子⑪:グローバルスタディーズ学科

今回は、グローバルスタディーズ学科の初年次の学生が必修科目として学ぶ「基礎演習1」の授業の様子を紹介します。この授業では、レポートの書き方の基礎を学び、その後、実際に2000字以上のレポートの執筆に挑戦します。テーマは、今年の夏にフィリピンやベトナム、台湾で行った海外短期フィールドワーク(現地、或いはオンライン参加による、語学・体験型学習プログラム)に関することであれば、何でも良いことにしました。

ディスカッションの様子①(2022年11月撮影)

レポートのテーマ選びには、各学生の心の中にある「ひっかかり」を大事にするように指導しています。「これ何だろう」「気になる」というひっかかりを頼りに自分なりの答えを見つけに行くという姿勢が大事です。そこで、この授業では、レポート執筆の前に各学生が皆の前でひっかかりを披露し、ディスカッションを行うようにしています。例えば、アヅキさんは、ベトナムでの10日間のフィールドワークを経て、ベトナム人が朝食を外で食べる習慣があることに気がつきました。彼女は、その原因を調べるために、ベトナム人の食事に関する本をいくつか入手し、同じベトナム人でも朝食を外で食べるのは主に都市に住む人で、地方に住む人は家で食べる習慣があることを知りました。

では、なぜ都市に住むベトナム人は外で朝食を食べるのでしょうか。ひょっとして共働き世帯が多いのかも知れません。共働きであればお母さんに朝食を作る余裕はあまりありません。しかし、韓国出身のジエさんは、「韓国では共働き世帯でも朝食を家で食べることが多いです。私の家も共働きで、お母さん、お父さん、私が分担して朝食を作っていました」と教えてくれました。日本も昔に比べて共働きが増え、女性ばかりが家事を行うような性別の役割分担は一頃に比べて減ってきているように思います。しかし、だからといって、ベトナム人のように外で朝食を食べることは、(韓国と同様)まだあまり一般的ではないように見えます。単純に、共働きかどうかでは、外で朝食を食べる習慣を説明できないようです。

ディスカッションの様子②(2022年11月撮影)

アヅキさんは、さらにベトナム人が朝早くから夜遅くまで建設現場で労働をしていた様子を思い出し、「労働時間が長く、家事の時間を短縮させる必要があるから朝ごはんを作らないのかも知れません」と話してくれました。これを聞いたカホさんは、アヅキさんの気づきをさらに含まらせて「日本人とベトナム人では時間の使い方が違うのかも知れないですね」と問題提起をしてくれました。確かに、日本人であれば、自炊をせずに浮いた時間をゲームなどの娯楽に使うかも知れませんが、ベトナム人は、浮いた時間を少しでも労働に充ててお金を稼ぎたいと思うのかも知れません。朝から晩まで働き続けるベトナム人にとって、自炊をすることは、自炊をしなければ得られたはずの賃金を放棄することを意味します。

つまり、自炊にかかる実質的な費用は、実際にかかる食材の費用に、自炊をせずに働くことで得られたはずの賃金を足したものになります。経済水準が低く、たくさん働かなくてはいけない国の人ほど、自炊という行為は割高なのです。ちなみに、経済学では、こうした考え方を「機会費用」という言葉で表現します。こうなると答えは複雑です。共働きかどうかだけでなく、その国の賃金水準や物価水準などが複雑に絡み合い、朝食を外で食べるか否かという習慣に影響を与えているのかも知れません。アヅキさんのテーマは、ジエさんやカホさんとのディスカッションを通してさらに具体的になり、良いレポートの完成へと一歩近づきました。

このようなディスカッションとレポート執筆を通して、学生皆が研究力や表現力を大いに磨いてくれることを願っています。

2022年11月14日 
國分圭介(グローバルスタディーズ学科教員)

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