見出し画像

スタートアップと出資者での、よくあるトラブル事例

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、スタートアップと出資者とのトラブル事例というお話をしたいと思います。

弁護士に相談したい方はこちらから

問い合わせフォーム

チャットワークでの問い合わせ

公正取引委員会からスタートアップ資料が発表

2022年の年末に公正取引委員会からある資料が発表され、スタートアップをめぐる取引に関する調査結果が公表されました。これは何かというと、スタートアップに「出資者や取引先に何か嫌なことをされたことはありませんか?」というアンケートを送り、その回答について事例を公表した資料になります。スタートアップはどうしても立場が弱いため、「こんな嫌なことがありました」という事例を公表したわけです。私も弁護士として色々なトラブルを見ている中で、これはよくあるなと思うところをピックアップして、今回はスタートアップのあるあるをご紹介したいと思います。

スタートアップ企業が取引先や出資者から求められた嫌なこと

スタートアップ企業が取引先や出資者から求められた嫌なことの例としては、報酬の減額や支払遅延です。これはあるあるです。また、NDAを締結しないまま営業秘密、例えば「この技術ってどうなっているの?」といったものの開示要請を受けた。顧客情報、「どういう顧客がいるの?」といった情報の提供を要請された。さらに、片務的なNDA、つまりスタートアップ側だけが秘密保持を負っているような契約を結ぶよう要請されたという事例があります。
これらは本当にあるあるです。あるベンチャーキャピタル、出資者が「出資しますよ」と近づいてきて、いろいろな情報を聞き出した後に「出資はなくなりました」と言います。後日、同じようなものが他社で作られているというケースはよくある話です。これは当然、よくないとは思いますが、やはりビジネスは残酷な部分もあるのでスタートアップ側も十分に気をつけなければいけません。NDAはきちんと締結されているか、自分たちだけが義務を負うような片務的なNDAではないかを確認する必要があります。また、情報を出すか出さないかについても、情報は渡してしまうとそれがどう変えられてしまうかは分からないので、きちんと権利として保護されているものなのかどうかを含めて十分に注意が必要かと思います。

出資契約書の事例

また報告書の中では、出資契約書についての事例もありました。実際に投資をしてもらう場合に出資契約書は出資者の方から出される場合が多くなります。この時に経営株主等の個人に対して買取請求が可能な株式の買取請求権の条項が入っていたという事例がありました。経営株主とは創業者です。通常、中小企業やスタートアップについては自分が株主で代表もやっているというケースが多いと思います。つまり、創業者の株式を出資者が強制的に買い取ることができる、会社を乗っ取ることができるという条項なわけです。出資者の意向で会社を乗っ取ることができるという条項ですが、これが良いとか悪いという話ではなく、こういった条項をのむのかのまないのかという問題です。ただ、こういった条項が入っていることを事前に伝えられておらず、ただ契約書が送られてきて「サインしてください」と言われているケースが非常に多いと報告書に書かれています。これは本当に多いので、それでもいいと思って出資を受けるのであれば問題ありませんが、知らない間にその出資を受けて、いつの間にか株式を買い取られて乗っ取られたという事例も本当にあります。ですので、ここはやはり創業者、スタートアップ経営者自身もきちんと精査する必要があります。分からない言葉があれば、誰かに聞いてください。弁護士でも、ネットで調べるでもいいですが、とにかく立ち止まるということが非常に大事です。
出資契約については本当に難しい言葉が非常に多くダーっと並んでいます。契約書の中でもかなり難しい部類に入ると思うので、ちょっとでも「ん?」と思った時にはネットで調べるなり、詳しい人に聞いてみるなりした方がいいかと思います。

弁護士に相談したい方はこちらから

問い合わせフォーム

チャットワークでの問い合わせ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?