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コロナで世界はどう変わったのか。13カテゴリー27枚のグラフから未来を探る。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威によって私たちの住む世界は間違いなく大きく変わってしまいました。「ウィズコロナ」「アフターコロナ」という言葉も生まれ、盛んにコロナの社会経済へのインパクトが議論されています。この記事は、各業界の統計データをもとに、コロナによって世界はどう変わったのかについてまとめ、「アフターコロナ」を占う羅針盤となるような内容となっています。

自己紹介

グロースボウズ(@growthbozu)」は、ファンド業界(VC/HF)の有志によって運営されている情報分析チームです。普段はSaaS/Fintech/ECなどのテクノロジートレンドや、グロース企業の分析をツイートしています。

コロナの現況

COVID-19は、2019年12月ごろから中国・武漢で感染が広まり始めたといわれていますが、すでに世界で感染者数1000万人、死亡者数50万人を突破しています(2020年7月2日時点)。

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アメリカ・インド・ブラジルなど、なおも新規感染者数が増加傾向にある国もあり、感染者の増加には歯止めがきいていない状況です。

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①世界のGDP

コロナの影響が深刻化する中で、各国は都市部のロックダウンを実施。経済活動が制限されたことによって各国のGDP成長率は軒並み大幅に悪化し、COVID-19の感染爆発が最初に起きた中国に至っては1990年以降初めてマイナス成長となりました。

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②世界の株価

実体経済の落ち込みが顕在化する中で、2020年3月は世界中の株式市場がリーマンショックを上回る暴落を経験しました。特にアメリカのダウは、
2020年3月16日 -2,997.10ドル安 (12.93%安、下落幅歴代1位)
2020年3月12日 -2,352.60ドル安 (9.99%安、下落幅歴代2位)
2020年3月9日   -2,013.76ドル安 (7.79%安、下落幅歴代3位)
2020年3月11日 -1,464.94ドル安 (5.86%安、下落幅歴代5位)
2020年3月18日 -1,338.46ドル安 (6.30%安、下落幅歴代6位)  
など連日強烈な下げに見舞われ(ちなみに下落幅歴代4位は2020年6月11日です)、一時は20,000ドルの大台を割れる局面もありました。
しかし、その後は各国政府による積極的な景気刺激策や、中央銀行による追加緩和がポジティブ視され、株式市場は急上昇していきました。特にアメリカの新興企業から構成されるナスダック指数は3月末から30%以上上昇しており、過去最高値を更新しています。

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経済活動の正常化への期待感が先行しており、実体経済と資産価格の間にギャップが生じているのが現状です。

また、GAFAMと呼ばれているテックジャイアント企業5社(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)はコロナによる社会構造の変化がポジティブに作用するはずだと評価され、上場来高値を更新している企業もあります。Amazonに至っては19年末から70%近くも株価が高騰しており、筆頭株主のジェフ・ベゾスの個人資産は20兆円を上回りました。

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③世界の雇用

コロナは雇用にも強いショックをもたらしました。下図はアメリカの非農業部門雇用者数の変化です。ニューヨーク州がロックダウンされていた4月には史上空前の2054万人の雇用が失われました。その後5月に251万人・6月に480万人の雇用が戻り、アメリカ経済がコロナから徐々に立ち直りつつあることを示唆しています。

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一方、日本の雇用状況を示す有効求人倍率は低下の一途をたどっています。

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このように先が見えない状況の中で、業界別では大きく明暗が分かれる結果となりました。ここから先は、特に断りのない限りは日本国内における産業動向を記しています。

④旅行・ホテル産業

ここ数年間、インバウンドの拡大によって旅行業界は大きく成長してきましたが、日本においても入国制限が実施されると急速にインバウンドが失速。2020年5月には前年同月比99.9%減の月間1700人にまで訪日外国人の数が減少しました。

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日本人の海外旅行需要も当然のことながら強烈な下落に見舞われており、海外旅行に強い旅行代理店であるエイチ・アイ・エスの5月の旅行取扱高は前年比98%減になっています。

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同様にホテル業界も大幅な需要減が生じており、宿泊者数(人泊)は前年比85%減。おそらく一泊当たりの単価も下落しているため、市場規模は宿泊者数の減少以上に縮小していると考えられます。

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⑤エンタメ・レジャー産業

エンタメ・レジャー産業は三密懸念や自粛ムードのダメージをまともにうけ、5月までに壊滅的な市場縮小を経験しました。

まず、テーマパーク産業は東京ディズニーリゾート、USJなどが休園に見舞われ市場規模が99%減少。

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また、コンサートやライブステージも日本中で講演が中止となり、家庭のチケット消費額は93%減少となりました。ぴあ総研が発表した「新型コロナウイルスによるライブ・エンタテインメント業界への影響」によれば、4-5月の確定したキャンセルだけで市場規模9000億円の22%が消滅。さらに来年1月までこの状況が続けば、業界の77%におよぶ6900億円が失われると予測しています。

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映画産業も壊滅的なダメージを受けています。映画館の閉館の影響によって、5月の興行収入は98.8%減の2億円。6月以降に徐々に上映が再開されているものの、ソーシャルディスタンスを確保するために座席数を半減せざるを得ず、ビジネスモデルの岐路に立たされています。

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パチンコ産業は、ライブ・映画・テーマパークなどに比べればダメージは浅くなってはいますが、それでも深刻な影響が出ています。5月のパチンコホールの売上高は前年同月比77.5%減の666億円となりました。パチンコホール経営者ひげ紳士が運営するYoutubeチャンネル「パチンコ店買い取ってみた」においても、パチンコホールの窮状が述べられています。

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⑥フィットネス産業

フィットネス産業はコロナ前までは3500億円以上の市場規模を誇る成長産業でした。しかし、公的機関によってフィットネスジムがいわゆる三密状態であることが発表されると状況が一変。5月のフィットネスクラブ売上高は前年比97%減の17億円になりました。

また、3月に定されていたFast Fitness Japan社(Anytime Fitnessの日本マスターフランチャイジー)の上場も中止になっています。

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⑦冠婚葬祭産業

結婚式や葬儀などの産業もダメージを受けていますが、影響の大きさには差が出ています。緊急性が比較的低い結婚式産業は5月に前年同月比98%減となりましたが、葬祭を先送りするわけにはいかない葬儀産業は前年同月比23.6%減と比較的小さい影響にとどまっています。とはいえ、葬儀においても参列者を少人数にせざるを得ず、1葬祭あたりの売上高は縮小。結果として葬儀産業全体の縮小を招いてしまっています。

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⑧広告産業

広告宣伝費は不況時にまっさきに削減されるコストであるため、広告産業もコロナ禍によるダメージを受けています。広告が主要収益源のFacebookやGoogleは、20年1-3月決算時にコロナ禍による悪影響を報告しました。

ただし、影響度は4大媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)よりもインターネット広告のほうが小さくなっています。これは、巣ごもり消費によってインターネットメディアのPV数が高まっていること、およびECなどコロナ禍がプラスに働いた産業からのインターネット広告出稿額が増加したこと、などによるものだと推察されます。

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⑨運輸・交通産業

緊急事態宣言によって人々の行動が制限(Googleのコミュニティ・モビリティ・レポート)されたため、運輸・交通産業も軒並み激しい落ち込みに直面しました。

最も大きな影響を受けている航空産業は旅客人数が前年同月比99%減。影響の長期化を想定し、ANAは新規に1.3兆円、JALは3000億円の借入+融資枠を設定しました。ANAは現在毎月1000億円の現金が流出していると言われており、コロナ禍は航空業界の経営基盤を揺るがすダメージを与えています。

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鉄道需要も大きなダメージを受けていますが、特に新幹線や特急などの長距離輸送は旅行需要やビジネスニーズの減少を受けて90%以上の減少に見舞われています。

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また、自動車産業はもともと19年10月以降から消費増税の反動減により落ち込んでいましたが、コロナ流行後はディーラーの閉業や営業時間縮小などの影響によって販売台数を大きく落としています。

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一方で、移動手段として需要が伸びているのが自転車です。満員電車を避けるために自転車通勤・自転車通学のニーズが拡大。自転車販売店のあさひの月次売上高は、6月に∔40.5%と絶好調です。

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⑩外食産業

外食産業はコロナ禍によって最も深刻な影響を受ける産業の一つです。その理由としては、①固定比率が重く売上減が赤字に直結すること、②自営業で財務基盤の脆弱な中小事業者が多いこと、などがあげられます。また、外食産業は全体で500万人弱の雇用を擁しているため、外食産業のダメージは国全体の雇用減に直結していまいます。

グローバルで外食産業は縮小しており、飲食店予約サイト「Opentable」が公開している世界の予約数の前年同日比をみると、ロックダウンによって3月~4月の予約がほぼ消滅。その後、経済活動が再開されるもいまだに4割程度しか予約数が戻っていないことが見て取れます。

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国内においても飲食店は大きくダメージを受けていますが、業態によって影響度は異なっています。最も影響度が低いのはファストフードで、前年比10%程度の減少にとどまっています。フードデリバリー、テイクアウト、ドライブスルーへの対応が相対的にしやすかったためだと思われます。

一方、最も影響が深刻なのは居酒屋で、5月は前年比90%減となっています。夜の街に対するマイナスイメージが影を落としています。

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⑪小売業

小売業は業態によってくっきりと明暗が分かれました。

食品スーパーは、休校や在宅勤務による中食需要の増加や、品切れを見越した買いだめ需要などによって絶好調で、5月は前年比19%増加。

同様に、食品や必需品の販売比率が高いドラッグストアやホームセンターも好調を維持しています。

一方で、インバウンド向けの免税売上が消滅し、休業も余儀なくされていた百貨店は5月に前年同月比64%減と大きく減少しました。

コンビニエンスストアもビジネス街需要がテレワークによって消滅し、前年同月比10%減と苦しんでいます。

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また、家電量販店は商材によっても明暗が分かれています。カメラ類や生活家電はやや減少傾向ですが、パソコンやタブレットなどを含む情報家電カテゴリーは大きく伸びています。これは、テレワークの準備のために新たにパソコン・タブレットなどのハードウェアを買い求める人が増えているためだと推察されます。

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⑫EC

巣篭り需要の影響によってEC産業は全体的に好調に推移しています。その中でも特に好調なカテゴリーを抽出したのが下のグラフです。総務省「家計消費状況調査」によれば、20年5月の1世帯あたりのインターネットを介した支出のうち、出前は前年同月比+168%(2.68倍)、家具+148%(2.48倍)、電子書籍+85%、音楽ソフト・映像ソフト・ゲームソフト∔48%となりました。

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出前は巣篭り需要の増加に対して、UberEatsや出前館が積極的なマーケティング活動を展開したため、大幅な市場拡大につながりました。3月には、LINEグループが出前館に対して約300億円を出資し、さらなる事業拡大を目指しています。

家具に関しては、テレワークなどによる在宅時間の増大によって、在宅環境を整えるニーズが顕在化し、家具の需要が高まりました。

電子書籍や音楽ソフト・映像ソフト・ゲームソフトは、テレワークや休校による余暇時間の拡大を取り込んだ形になります。

⑬SaaS

SaaS(Software as a Service)産業も、テレワークの拡大にともなうビジネスフローのデジタル化の追い風を受けて好調です。
特に、
電子契約「クラウドサイン」の弁護士ドットコム
オンライン診療「CLINICS」のメドレー
シングルサインオンのHENNGE
グループウェアのサイボウズ
はウィズコロナ・アフターコロナの世界に適合したプロダクトを擁していることが評価され、株価は軒並み急上昇しています。

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コロナによる特需がすでに顕在化している報告もあります。例えば、弁護士ドットコムのクラウドサインは、4月の契約送信件数が15.7万件と前年同月比2.4倍。メドレーのCLINICSは、月間新規登録患者数が2月から4月にかけて10倍になりました。

まとめ

コロナ禍によってグローバル経済は大きなダメージをうけました。しかし、6月以降徐々に経済活動は正常に戻りつつあります。またコロナ禍による社会変動をとらえ、大きく成長する産業や企業も出現しています。執筆している現在(7月19日)も東京都の感染者数が高水準で推移しており予断を許しませんが、今後も定期的にコロナによる社会・経済動向の変化をNoteやTwitterでレポートしていくので、ぜひTwitterで「グロースボウズ(@growthbozu)」をフォローして頂けると嬉しいです。

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