大本命は大撃沈
いよいよ、私の大本命の付属高校だ。
自信をもって対策は不十分だが行くしかない。
普段家庭に関わることを避けている父も、この日だけは何故か学校の正門まで一緒についてきてくれた。
父は、私の受けた高校の中で、都内の2校を除き全てを否定していた。
しかし、都内の2校に関しては、本気で合格して欲しいと思ったのだと思う。
父が、目の前まで付いてきてくれるのは、大学受験を含めても、この時が最初で最後だった。
ここは大学の付属校で、その大学自体は偏差値の高い大学ではなかったのだが、他大学へ進学する人の割合が多いと書かれてもあったことが、父に期待を持たせた要因の一つでもある。
少し早めに到着したと記憶している。
何故なら、到着してから暫く待っていたからだ。
その間も、父が一緒にいてくれた映像が記憶の中に残っている。
あれだけ、家庭のことを顧みずに仕事だけの人が、受験のこの日の為だけに、わざわざ遅れて職場に行くという行動パターンは実に初めてだ。
希望する、または希望に値する都内の私立は沢山あったな缶で、なぜ自分はこの高校を選んだのだろう。
多くの過去問をみたし、過去問を見なくとも、調べたことないけど、聞いたことのある同じレベルの私立がそれなりにあるのに、これと言って特段強みがあるわけでもなかったこの私立を選んだのは、なんだったのだろう。
唯一覚えていることとしては、当時兄が毎月購入していた、「ポパイ」という雑誌に、この高校の女子が映っていて、外見が自分の好みに限りなく似ていたのを覚えている。
しかし、この高校に興味を持ったのは、その雑誌を見る前で、このモデルを見た時に、学校や制服が自分の希望していた高校と同じだったことで、希望が更に強くなったというのは確かである。
さて、そろそろ入る時間になった。
校門が開くのを待っていた受験生たちが動き始める。ここで父には「ありがとう」と礼を言って別れた。
父が「がんばってな」ということは人生でほぼなかった。そのうちの一つがここにある。
手ごたえはなかった。できたという自信はなかったが、出来なかったという自信はあった。
その自信に賭けてみようと思った。
賭けていたら、年間の学費くらいは稼げていたはずだ。この自信には、それだけの価値があった。
合格の発表の日、プロギャンブラーのごとく私の賭けは的中した。
賭けには勝った。
しかし、不合格には残念でならなかった。
やり切った感はなかったが、浪人できないので、もう一度挑戦することが出来ないのは本当に残念である。
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