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    • 26本

    龍谷大学社会学部・椿原ゼミによる読書案内とエッセイ。

最近の記事

性的マイノリティはなぜ、カミングアウトをするのか。

[紹介書籍]砂川秀樹(2018) 『カミングアウト』朝日新書. 「カミングアウトは、伝える側と伝えられた側との関係が作り直させる行為だ。いや、作り直される行為の始まり、という方が正しいだろう。なぜなら、カミングアウトは伝えればそれで終わり、というものでもないからだ。」(p3) 筆者は冒頭でこのように語る。  カミングアウトをする側はもちろんのこと、された側の反応、態度などからも互いに相手のことを改めて知るのだ。さらに、性的マイノリティの当事者には、カミングアウトの先に伝え

    • 差別はたいてい悪意のない人がする

      【書籍紹介】 キム・ジヘ(2021)『差別はたいてい悪意のない人がする』大月書店 この本は、著者の講演会での体験から語られるところから始まり、それをもとに現在の韓国社会で起きている差別の権力関係の構造やそれぞれの問題に対してのアプローチの仕方などについて書かれている本である。さらに、マジョリティ側からは見えづらく、無意識的に持っている特権について韓国の事例を用いて詳しく説明を行っている。そのため、差別について知るための第一歩としての本に最適である。 次に章ごとの内容と事例につ

      • なぜ批判的になるのか?

        鳥井一平 2020 『国家と移民「外国人労働者と日本の未来」』 この本の著書である鳥井さんは特定非営利団体活動法人「移住者と連帯する全国ネット ワーク」、略して移住連の代表理事である。日本に暮らす移民や海外にルーツをもつ人び との権利と尊厳の保障を追求し、誰もが安心して自分らしく生きられると同時に、多 様性を豊かさと捉える社会を目指して活動する NGO です。 この本は、外国人労働者がどのようにして日本で働く人びとが経験した事柄や、 外国人労働者の労働環境、外国人労働者受け

        • 音楽の危機と新たな可能性

          〈岡田暁生 2020年『音楽の危機《第九が歌えなくなった日》』中公新書〉 2020年1月、新型コロナウイルスが世界的に流行し始める。その影響で日本国内では「三密」と「不要不急」とみなされる業種に対して休業要請が出された。パチンコ店や映画館などの他に、ライブハウスや劇場などの「音楽」の分野もその一つとされ、演奏会やライブイベントが軒並み中止となった。これと同時に感染症対策として、「ソーシャルディスタンス」と呼ばれる、人との距離を2メートル空けましょうということが多く言われるよ

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          LGBTを読みとくための「ツール」

          (紹介書籍) 森山至貴(2017) 『LGBTを読みとく ─クィア・スタディーズ入門』ちくま新書.  「あなたはセクシャルマイノリティに対する偏見がありますか?」こう質問されると、ほとんどの人は、「偏見はありません。」と答えるだろう。しかし、本書の表紙には、「セクシャルマイノリティを見下す心が見え隠れする人がよく使う枕詞は『私はセクシャルマイノリティに対する偏見を持っていませんが……』です。」と書かれている。つまり、セクシャルマイノリティを無意識に傷つけてしまわないために、

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