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差別はたいてい悪意のない人がする

【書籍紹介】 キム・ジヘ(2021)『差別はたいてい悪意のない人がする』大月書店
この本は、著者の講演会での体験から語られるところから始まり、それをもとに現在の韓国社会で起きている差別の権力関係の構造やそれぞれの問題に対してのアプローチの仕方などについて書かれている本である。さらに、マジョリティ側からは見えづらく、無意識的に持っている特権について韓国の事例を用いて詳しく説明を行っている。そのため、差別について知るための第一歩としての本に最適である。
次に章ごとの内容と事例について述べていく。また、私が特にこの本で紹介したい章である1章、4章、7章、8章を中心的に述べていく。
1章 「立ち位置が変われば風景も変わる」
・すでに特権を持った側の人間にとっては、社会が平等になることが損失として認識されるということがある。
・相対的に特権を持った集団は、差別をあまり認識していないだけでなく、平等を実現するための措置に反対する理由や動機を持つようになるが、その一方で、自分が差別をしているという事実を認めるのは難しいため、結果的に矛盾した態度をとるようになる。
・私たちはまだ、差別の存在を否定するのではなく、もっと差別を発見しなければならない時代を生きている。
4章 「冗談を笑って済ませるべきではない理由」
・ネット空間では特に、対象が何であれ、笑いの種にさえなれば問題ないとでもいうように、集団に対する偏見と敵対心の封印が解除されたのである。
・ユーモアや遊びを装ったヘイト表現は、笑いの「ものごとを軽くする性質」のせいで、逆説的に「簡単に挑戦できない強大な力」を持っている。
・ユーモアの重要な属性のひとつは、聞き手の反応がその成否を分けるということだ。そのため、いかにそれに対して、抵抗を表す態度の一つである、反応しないようにするかが重要である。
7章 「私の視界に入らないでほしい」
・だれにでも、どんな場でも嫌いと言える自由があるわけではない。
・権力を持った人が使う「嫌い」の表現は違う。社長が社員に向かって嫌いと言うとき、教師が学生を嫌いと言うとき、これらはたんなる個人の好みの問題ではなく、権力関係の変動でもない。まさに権力そのものである。
・心理的効果を通じて、人々は、不平等な状況を平等だと考える矛盾におちいる。
・民主主義を実現するためには、基本的な前提として、社会のすべての構成員が平等な関係をもち、対等な立場で討論できなければならない。
8章 「平等は変化への不安の先にある」
・集会とデモの自由は、万人の権利である。しかし、この権利を行使する人に対する感覚は、自分がどこに位置しているかによって異なる。立場や置かれた状況が変われば、人々の反応も変わるのである。
・既存の法律に対して何の疑問も抱かず、無批判に服従する態度をとるのは民主主義社会の市民にふさわしくない姿勢である。無批判な服従は全体主義の特徴である。
・ジョン・スチュアート・ミルが『自由論』で指摘したように、だれにでも表現の自由があると言われる。しかし、実際にマジョリティとマイノリティの自由は同じではない。    
・マイノリティの「話しかけ」にマジョリティがどう答えるかによって、状況は大きく変わることになる。
この本を読み意識していなくとも差別的になっているという無自覚での差別的行為について深く学ぶことができた。

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