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十坪の宇宙

先日、とある事情から、青梅街道を自転車で吉祥寺から新宿方面へ向かって走ることがありました。

実は僕、今から20年ほど前、西新宿の成子天神社のすぐそばに住んでいたことがあって、青梅街道を走ると、そのすぐ脇を通ります。 

もうとくに用はなく、滅多に来ない地域なので、思わず懐かしくてアパートの前まで寄ってしまいました。(かなり怪しいですよね(笑。)

いいアパートで、まだ丸ノ内線の「西新宿駅」ができる前だったので、超都心の割りに家賃が安く、大きさも一人暮らしにはちょっと贅沢なくらいの30㎡ 弱ほど。一階の物件で、部屋の前にはちょっとした坪庭もついていました。

最初に勤めた会社を辞めてから、新宿の BAR で働くようになってからも、そこに住み続け(というより、そこに住んでいたから新宿の BAR で働くことが出来たわけですが・・。)、かれこれ6〜7年くらい住んでいたと思います。

懐かしいですね。

新宿の BAR へは毎日ガードをくぐって通っていて(ちょうどドラマ「深夜食堂」のオープニンの映像を毎日見ていたようなものです(笑。)、帰りはそんな食堂が本当にありそうなゴールデン街で飲んで朝方帰ったりしていました。

楽しかった、です。

でも、

なにより一番強く印象が残っているのが、僕のこのアパートでした。

都心から近く、一人暮らし、そしてそこそこの広さ、ということもあってか、会社員時代の同僚たちなどが、深夜に訪れてくることが、度々ありました。

それも、僕が BAR での勤務を終えた、夜0時過ぎに(笑。

まあ、こちらも体力のある頃だったので、気前良く(?)応じ、夜な夜なパーティー状態(お隣の方、本当にすみませんでした)。

僕はこれを「一日2営業」と呼んで、眠い目を擦りながら、パスタなどを茹でておりました。

きっと、こっちは、こっちで楽しかったんでしょうね。


あの頃の自分には、それで充分だったし、満ち足りていました。


陽が昇って、寝て、陽が落ちて、起きて。 


地球は回る。


明け方、眠りに着くとき、

「ずっと、こんなんでもいいかな。」

なんて思って、怖くなったのを覚えています。



さて、

「そんなんだったら、いっそ自分で店を始めればいいじゃない。」

と、いうことで、一念発起。(元々やるつもりではいたのだけれど)

物件探しに入りました。


どんな物件が良いのか、そもそもどのくらいの大きさのものを探すのか。


想像力を働かせます。


自分がやる店のイメージを。


もう、お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、


実は今のこの店、BAR ground line の規模(30㎡ 強ほど)、

「昔住んでいたアパートの大きさとほぼ一緒」

なのです。


もちろん天井高や、ユニットバスの有無など、実際の印象は違うのですが、

大まかな全体の規模は、ほぼ今の店と同じくらい、

どちらも30㎡ 前後、ちょうど「十坪(トツボ)」くらい、

なのです。


しかも、一度、あまりに大勢の人間が僕のアパートに詰めかけたので、人数を数えてみたら、16人も入っていたことがあります。

これって、今のお店の最大収容席数(16席)です(笑。


単なる偶然でしょうか。


もしかすると、自分が店を探すときに、無意識に「店をやるならこれくらい」という、「あの部屋のイメージ」が、染み付いてしまっていたのかもしれません。

一人でやる店としてイメージできる、狭くもなく広すぎもしない、ちょうど目の届く、程よい広さ。


それが、だいたい「十坪」だったのかもしれません。


あれから20年。


「ずっと、こんなんでもいいかな。」


と、思うことばかりではありませんが、


ここでも、相変わらず地球は回っております。


僕にとっての「宇宙」かな。


随分狭い「宇宙」ですけど(笑。


なるべく長く回り続けたいと思っております。



神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。

また時短営業で、早起き生活です。しばしお付き合いを。

お待ちしております。


Image / Phlocalyst & cocabona 
S!X - Music
2020

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