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【詩の翻訳】今夜も/エーリヒ・グリザー

今夜も

今夜も
車輪は駆けてゆき、火は炎々と燃え上がり、
一人の母の孤独な心臓は脈を打つ。
船は大海原をゆき、
明るく輝く電車はうなりをあげて
いくつもの街を過ぎてゆき、
熱を帯びた額の上を
看病する姉妹たちの手が優しく進む。
わが家のような部屋やあるいは広間の中の
いつも人々が祝いのために集まるところは、
晴れやかに照らされて、
ある人は外の夜の闇の中にいる。
ある人は通りをぐるぐると走り抜け、
ある人は車を運転し、あるいは発電所で
レバーを握っている。
僕らのうちの一人はいつも準備しなくてはならない、
犠牲を払って祝祭にその意味を与える準備を。
彼が遠くにいるというのはたとえ話だ!
どこかでまだ暗闇のなかで生きている人がいる、
あこがれのために光を求めてやつれた人が。
僕らはその人たちのために扉を開けたい、
あかるいろうそくのかがやきのなかで、
僕らの愛の輪が全ての人を囲んで
ぎゅっとつまって
閉じるよう。

Erich Grisar: „Auch in dieser Nacht“, Hrsg. von Ernst Meyer-Hermann[u.a.], Deutsche Gedichte für die Hauptschule, Frankfurt a. M.: Diesterweg,1966, S.28-29

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