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【詩の翻訳】旅/ゴットフリート・ベン

こう考えたことはありますか、例えばチューリヒは、
人が奇跡と厳粛さを
常に内実として有する
より低地の街の一つだと。

こう考えたことはありますか、ハバナから、
白とハイビスカスの赤をした
永遠のマナが
あなたの砂漠の苦しみを癒すために湧き出てくるかのようだと。

BahnhofstraßeにRue、
Boulevard、Lidos、Laan——
Fifth Avenueにいるときでさえ
虚しさがあなたを襲うのです——

ああ、無益なるかな遠き旅路よ!
遅ればせにようやくあなたは自らを知るのです。
自らを境界づける自我で
あることに留まり、それを粛々と守っているのだと。


第3節では数種類の言語が使われています。「ことばによる旅」というイメージを失わないために、日本語には訳しませんでした。なお、それぞれの単語の意味は以下のとおりです。
Bahnhofstraße: 駅前通り(ドイツ語)
Rue: 街路(フランス語)
Boulevard: 大通り(フランス語)
Lidos: 海岸(イタリア語)
Laan: 並木道(オランダ語)
Fifth Avenue: 5番街(英語)


Gottfried Benn: „Reisen“, In: „Deutsche Gedichte für die Hauptschule”, Hrsg. von Ernst Meyer-Hermann[u.a.], Frankfurt a. M.: Diesterweg 1966, S.86-87.

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