見出し画像

【イベントレポート】Groov編集会議vol.4

編集会議のテーマ「これからの地域の“担い手”とは?」

様々な分野で活躍する地域のプレイヤーが情報を発信する、ソーシャル地域メディアGroov(グルーヴ)。Groovは、キュレーターが発信する情報を見てオンラインで楽しむだけでなく、投稿される情報をオフラインの場でキュレーター・ユーザーが議論することで、地域に必要な情報をみんなで作り上げていくというところに大きな特徴があります。

今回のイベントでは「これからの地域の“担い手”とは?」というテーマで、株式会社CAMPFIREの代表取締役を務める家入一真氏をメインゲストにお迎えし、DERTA CEO 坂井とGroovキュレーター3名とともにディスカッションを行いました。また、当日はパネルディスカッションで得た気づきや感想を投稿できる「Groov Voice」というGroovアプリの新機能を使い、ユーザーも議論に参加しました。
働き方や生き方が多様化し、多拠点生活など居場所を問わないライフスタイルが一般化する一方、人口減少などによって様々な分野で担い手不足が叫ばれている時代に、これからの地域を担っていく人材に求められることとは。

クラウドファンディング事業によって多くの地域の方の挑戦を後押ししている家入さんをメインゲストに、新潟のプレイヤーとともにこれからの地域の担い手の役割と可能性を探っていきます。


パネリスト・モデレーター紹介


家入一真 氏
株式会社CAMPFIRE 代表取締役

坂井俊 氏
株式会社DERTA 代表取締役CEO/株式会社クーネルワーク 共同創業者兼取締役CFO

稲葉一樹 氏
新潟市都市政策部/8BANリノベーション代表/Groovキュレーター

モデレーター / 後藤寛勝 氏
合同会社 Flags Niigata 代表/Groovキュレーター


移住者がもたらす地域への変化と刺激

後藤: 
家入さんはこれまでのキャリアの多くを東京で過ごされていますよね。「地域」というイメージはあまりなかったのですが、なぜ今地域へと視点を向けるようになったのでしょうか?

家入: 
現在色々な使われ方をしているクラウドファンディングですが、僕が日本でクラウドファンディングのプラットフォームを運営する意義は、人口減少が進む中で特に地域で増えていく「声を挙げたくてもあげられない人たち」の小さな一歩を後押しするため。CAMPFIREを立ち上げて13年経ちますが、その間ずっと地域への想いを持って取り組みを続けてきたつもりです。

ただ、地域への想いはありつつも、自分自身は東京のど真ん中に住んでいて。「自分の言っていることに説得力が足りないな」とモヤモヤした気持ちを抱えていました。そのため、コロナ禍や子どもの教育について考える時期も重なったこともあって2023年に軽井沢へ移住しました。

しかし、長野の限界集落に住んでいる方々からしたら、自分が住んでいる軽井沢はそこまで田舎ではないらしく(笑)軽井沢でも雪かきをしたり、薪割りをしたり、それなりに大変な部分はあるんですけどね。

後藤: 
「地域」という言葉を一括りにして語るのは、なかなか難しいですよね。新潟県内でも、僕の会社のオフィスもある自然豊かな妙高と政令指定都市の新潟市では、生活環境はかなり違うなと感じています。

家入さんのようにUIターンをして地域に移住されるケースは近年増えているように思いますが、新潟市に長年住まれている稲葉さんから見て、感じる変化などはありますか?

稲葉 : 
新潟市は、実は人口規模的には全国15位の程よい都会。なので、比較的移住もしやすい都市だと感じています。また、自分の周りの移住者は積極的にアクションを起こしてくれる方も多く、それが楽しく刺激的で、自分がここに住み続ける理由にもなっていますね。


移住者が地域に溶け込むカギは、地域内コミュニティの可視化

後藤: 
家入さんは、軽井沢に移住する身としてどうしても「よそ者」という肩書きを背負ってしまうと思うのですが、移住して地域に入っていく中で感じる活動のやりづらさ、逆にやりやすさなどはありましたか?

家入:
移住直後はやはり知り合いが全然いないので、さまざまなコミュニティに積極的に顔を出すことを心がけました。最初はその地域のコミュニティに土足で上がっていく感覚がありましたが、意識的につながりを広げていく中で、自身がどう地域に貢献できるかを模索する土台を作ることができました。

一方で、新しいコミュニティに積極的に入っていくのは苦手だという方もいますよね。なので人によっては移住した先の地域のコミュニティに入れずに、閉塞感や疎外感を感じてしまう方もいらっしゃるのかなと思います。

後藤:
僕自身、Uターンした当時はなんのコミュニティにも所属していなかったこともあって、地元なのにすごくアウェイな感覚だったことを思い出しました。坂井さんは、株式会社DERTAの活動の中でコミュニティを運営されてますよね。その中で意識されていることや地域でコミュニティを運営する意義などについて、お話を伺ってもよろしいですか?

坂井 : 
地域活性化の文脈で「関係人口」という言葉が多く使われ、地域の外からどうやって人を呼び込もうか考えることはよくあると思います。ただ、地域に入った先、「地域に住んでいる人同士の関係性」に目を向けることが、実はあまりないのではと感じていました。

後藤さんのように新潟にルーツがあり知り合いも多い方が、いざ新潟に戻ってきたときに疎外感を感じた原因も、地域の中にいるのにお互いのことを知らない、知り合う導線がないという状況があるからだと感じたんですね。そういった課題も、地域の中にあるコミュニティが可視化され、いつでも誰でも入って来れる導線さえあれば、解決しうるのではないかと考えています。

DERTAが運営しているDERTA Community


”担い手”になるために必要な「覚悟」とは

後藤: 
地域の「担い手」を再定義することを考えるうえで、個人的には拠点をどこに置くかがキーポイントになると感じています。

リモートワークや他拠点生活等のライフスタイルが一般化する現代において、その地域に骨を埋める覚悟を持って移住することが本当の地域活性にとって必要なことなのか疑問に感じる一方で、外から来た移住者に自分の地域に中途半端に手をつけられたくないと感じる地域の方もいると思います。そういった点に関してはどうお考えですか?

家入:
今回のテーマである「担い手は誰なのか?」という問いを聞いたとき、正直考え込んでしまって。本音をいえば、自分の中ではまだ答えを出せていません。

最近ではフルリモート勤務やスポットバイトなど働き方が多様になってきて、組織に居場所を求める人が減り、軸足がどこにあるのか明確にならない、もしくはそもそも軸足が存在しないという方も増えていますよね。所属するコミュニティがフリーになったことで、担い手の役割を行政や政治家、地域の大企業など自分以外の誰かに押し付けてきた結果、こういう議論が生まれてしまっているんじゃないかな。

後藤:
会場では「地域活性化という名の元、色々中途半端にやって逃げていかれると地元民としては困るかも」というコメントが出ていますね。
個人的には、地域に関わる人は曖昧な存在でも良いのかなと思ったりするのですが、行政職員という民間や市民など、誰かに何かを任せなければいけない立場の稲葉さんにとって、担い手となる方に求める覚悟について、どうお考えでしょうか?

稲葉: 
僕も個人的に「担い手」というテーマについて考えてみて、都市の課題を解決する人が地域の担い手であると解釈しました。

僕は現在、新潟市の古町エリアにある本町8番町で、エリアに関わる人が心地よい過ごし方を選べることを目指す「8BANリノベーションプロジェクト」という活動を行っています。ただ、その活動を始めた時、実は僕はそのエリアに住んでいなかったんです。すると地域の方から「住んでもいないのにこの地域のことよくわからないでしょ」と言われてしまって。その言葉をきっかけに、現在は8番町エリアに住んでいるんですが。

結果として、地域の人々と関わる時間が増えたことで、彼らの思いや地域のことをよく理解できるようになりました。その経験から、覚悟を持ってその地域に来て住民と多くの時間を過ごすことの重要性は理解した一方で、「移住者に中途半端に介入されたら困る」という地域の方からの意見に対しては、「何が困るのかな」と気になります。地域のためと言いながら、そのときの自社の利益のため、一発屋のようなことを行政のお金で行う、というようなことでしょうか。

そういう意味であれば、それは行政の責任だと思います。職員の多くが土着の方である行政が責任感を持ってその土地に合ったやるべきことを明示できていれば、そのようなことが起こることはないのかなと思います。

坂井:
結局のところ、地域における関係性が最も大切なんじゃないかなと。自治体から支給されるお金を頼りに活動している方は、最初から「テイク(受け取る)」の姿勢から始まってしまっているように感じます。

地域に入る際の姿勢としては利他的であること、つまり、自分の利益だけでなく、何をしたら地域のためになるのかを考えて行動する「ギブ(与える)」の姿勢であることが大切だと思うんです。

ちょっと話がズレるかもしれませんが、最近植物の研究をして(笑)植物って放っておいても繁栄するじゃないですか。そのような、放っておいても繁栄するような仕組みを作れないかなと思って、その答えを植物に求めたんですが。その中で、3本並んでいる木の両端に覆いを被せたら、その覆いを被せた木は成長が止まると思いきや、真ん中の木が光合成をするたびにエネルギーを分け与え、隣の木も育つということを知りました。

当然、植物は「困っている他人に分け与えよう」という”気持ち”などはないのですが、生まれたエネルギーは外に渡すという当たり前の利他があるそうです。この関係性は、社会の作り方としても非常に参考になるなと。ギブの精神で望んでいかないと関係性も続いていかないし、繁栄もないんだなと、植物の営みから学びました。

家入:
もちろん利他的であることが理想だけど、他人に「利他でありなさい」と押し付けることはできないというのが難しいなと思います。長期的に見ると「結果的に利他になっている」ようなデザインをすることが望ましいのかもしれませんね。


大切なのは、途切れながらも続けていくこと

後藤:
地域の担い手になると「やめ時」が分からなくてやめられないという問題が発生しそうな気がしていて。「一度始めたら後には引けない」と思ってしまうと、なかなか新しいことに挑戦しづらくなってしまいますよね。

地域で挑戦する人を応援しつつも、必要に応じて途中でやめることができる環境を整えることが多くの人の挑戦を後押しできると思うんです。

家入:
多くの挑戦が生まれている地域の事例として香川県の三豊市の例があります。三豊市は元々は何もないエリアでしたが今では若い人がたくさん集まっていて、CAMPFIREのクラウドファンディングのサービスを使ってコーヒースタンドを開店するなど新しいことにチャレンジしている人が多いんですよ。

三豊市の特徴は空き家が多くて立ち上げコストや生活コスト、事業の維持コストが安いこと。そのため初期投資を少なく、ローリスクで新しいことに挑戦することができるんです。
誰でも常に覚悟を持ち続けることは難しいものだから、重圧を感じずに軽やかな姿勢でスタートできる環境を整えてあげることで、新しい担い手の挑戦を応援できるんだと思います。

坂井:
確かに何か地域活動を始めるときはある程度の覚悟は必要かもしれませんが、それはもっと緩やかであっていいですよね。
活動の途中で休憩を取ることも大切です。完璧に継続することにこだわるのではなく、途切れ途切れでも良いからやめずに活動することが、結果的に持続可能な活動に繋がっているんだと思います。

家入:
僕から最後にひとこと。個人的な話になりますが、35歳の時に「誰もが声を上げられる世界をつくる」という言葉を人生のミッションを掲げました。このミッションが生まれた背景として、僕自身中学生の時に不登校を経験し、かつ家庭環境も経済的に苦しい中で、10代の頃は常に「居場所のなさ」を感じていて。だからこそ、大人になった今、同じような気持ちを抱えた方々へ、かつての自分のような方々へのサービスを作っていきたいという強い気持ちが生まれたんですね。

この会場にいる皆さん一人一人も、これまで生きてきた中で、たくさんの「憤り」や「傷つき」があったと思います。そういった感情をただ抱えたまま生きていくと、負や後悔の感情しか残らない。起きたことに意味を見いだせないまま人生が過ぎていってしまうと思います。
 
でもそんな「憤り」や「傷つき」という感情を、ポジティブな活動に繋げていくことができれば、負や後悔の過去に意味や意義が生まれる。それが、自分だからやる意義がある人生のミッションになりえると思います。

なので、皆さんも過去の「憤り」や「傷つき」を振り返ってみてください。その上で、社会や地域、業界に対してどんな一歩が踏み出せるか、考えられる人が増えるといいな、と思っています。

まとめ:これからの地域の”担い手”とは

「これからの地域の”担い手”」というテーマについて、首都圏から地域に移住した家入さんの経験から、地域への関わり方や地域内での関係性作りについて話題が広がり、最後は”担い手”に求められることや、”担い手”であり続けるためには?について議論が深まりました。

難しいテーマではありましたが、登壇者の4名から、地域の”担い手”である方や目指す方を含む、地域に関わるすべての方をポジティブな気持ちに導く、エールを送っていただいたように感じました。

また、ディスカッション後には、希望者によるLT発表会、現地参加者同士の交流会も開催。先ほどのディスカッションの内容を肴に、つながりを深めました。

この記事の内容について興味を持っていただけた方は、アプリをダウンロードし、ぜひGroovの中ものぞいてみてください。次回のイベント参加もお待ちしております。

▼Groovアプリのダウンロードはこちら
iOS版:https://apps.apple.com/jp/app/groov-%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2/id6476492975
Android版:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.derta.groov


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?