日本は何故アメリカと戦争したのか?(4)軍令部総長・永野修身も「日本はアメリカと戦争できる」と述べていた

 第四回の内容は、軍令部総長・永野修身の、昭和16年9月6日の御前会議での発言。要するに日本海軍も、日本はアメリカと戦争できる、勝利の見込みは有ると考えていた、という話。
 ただし日本海軍の場合、個々人は本心からそう考えていたのか、疑問の余地がある。なのだが、とにもかくにも御前会議でそう述べている以上、それが嘘偽りない海軍軍令部としての判断だった、ということになる。

 とにかくその永野修身の発言の一部↓(『杉山メモ』より)。

作戦ノ見透シニ関シマシテハ彼ガ最初ヨリ長期作戦ニ出ヅル算ハ極メテ多イト認メラレマスノデ帝国ト致シマシテハ長期作戦ニ応ズル覚悟ト準備トガ必要デアリマス若シ彼ニシテ速戦速決ヲ企図シ其ノ海軍兵力主力ヲ挙ゲテ進出シ来リ速戦ヲ我ニ求ムルコトアラバ是レ我ガ希望スル処デ御座イマス欧洲戦争ノ継続中ナル今日英国ガ極東二派遣シ得ル海軍兵力ハ相当ノ制限ヲ受クベク従テ英米ノ聯合海軍モ之ヲ我予定決戦海面ニ邀撃スル場合飛行機ノ活用等ヲ加味考量致シマスルニ勝利ノ算ハ我ニ多シト確信致シマス但シ帝国ガ此ノ決戦ニ於テ勝利ヲ占メ得タル場合ニ於キマシテモ之ヲ以テ戦争ヲ終結ニ導キ得ルコト能ハザルベク恐ラクハ爾後彼ハ其ノ犯サレザルノ地位、工業力及物資力ノ優位ヲ恃ンデ長期戦ニ転移スルモノト予想セラレマス
帝国ト致シマシテハ進攻作戦ヲ以テ敵ヲ屈シ其ノ戦意ヲ放擲セシムルノ手段ヲ有シマセズ且国内資源之シキ為長期戦甚ダ欲セザル処デハアリマスガ長期戦ニ入リタル場合克ク之ニ堪へ得ル第一要件、開戦初頭速ニ敵軍事上要所及資源地ヲ占領シ作戦上堅固ナル態勢ヲ整フルト共ニ其ノ勢力圏内ヨリ必要資材ヲ獲得スルニアリ此ノ第一段作戦ニシテ適当ニ完成サレマスナラバ仮令米ノ軍備が予定通進ミマシテモ帝国ハ南西太平洋二於ケル戦略要点ヲ既ニ確保シ犯サレザル態勢ヲ保持シ長期作戦ノ基礎ヲ確立スルコトガ出来マス共ノ以後ハ有形無形各種要素ヲ含ム国家総力ノ如何及世界情勢推移ノ如何因リテ決セラルル処大デアルト存ジマス

 ちなみにだが、要するにそれは、アメリカ艦隊の撃滅は望めないし、撃滅する必要も無い、ということでもある。しかし、連合艦隊司令長官の山本五十六は違った。山本五十六は、戦争遂行には最初にアメリカ艦隊を撃滅する必要があると考え、だから真珠湾攻撃を主張した。そして意思統一は成されないまま、不透明な決定が下され、真珠湾攻撃が実行されることになる。実はここも『議論の出来ない日本人』だった。


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