現状、台湾有事は絶対に無い。たぶんだけど。

 世の中、いい加減なことを騙る人は多い。肩書きだけはご立派でも、その発言はデタラメ、というお方も。
 事実として、世の中にはエセ学者やエセ専門家がごまんといることは、原発事故とか新型コロナウイルスのワクチンとかでも明らかなはずだ。

 ただしそれ、最近になって始まったことでは無い。筆者は他の国の事は分からないが、日本では昔からそうだった。
 先の大戦頃なんか、まさしくそう。あれは文明国の戦争では無く、分別も常識も無いキチ○イ沙汰であり、国中みんなが戦争に狂った時代であり、本職の軍人ですら戦争を理解していなかった結果だった。


 それで、今回の話の台湾有事だ。
 現在、「2025年までに(あるいは2030年までに)中華人民共和国が台湾に侵攻する」とか何とかおっしゃる方はいるわけだ。
 および、それが米中の戦争になる、その時には中華人民共和国は日本も攻撃する、と主張なさるお方が。


 しかし、現状、それは絶対に無い。もっとも、あくまで筆者的な意見に過ぎないけどね。

 筆者の意見は、根本的にはクラウゼウィッツの戦争論だ。その記述は色々だが、「戦争は政治の延長である」がそのひとつである、古典的兵学書のひとつ。

 すなわち、戦争とは、ある日突然始まるものでは無い。および、ただしそれは大きな要因のひとつではあるのだが、軍事的な状況からのみ始まるものでも無い。
 そして、そもそも戦争とは、自国にとってよりよい戦後の平和をもたらすための、コストパフォーマンスが非常に劣悪で、なし得るならば他に代替したい手段に過ぎない、ということでもある。

 七面倒くさい話なので簡単に済ますが、つまり戦争開始も非常に複雑なのだ、ということだ。軍事力があるから戦争になるとか、領土問題があるから戦争になるとか、そんな単純なものでは無い。


 では改めて、果たして中華人民共和国は台湾に侵攻するか?

 これを判断するには、改めて米中関係・日中関係・中台関係の、その政治状況では無く経済の方を、確認してみると良い。
 それだけで断定できるはずだ。現状、中華人民共和国は、絶対に台湾とは戦争しない。

 および、例えばウクライナ戦争に対する中華人民共和国の態度を見ても分かるはずだ。
 中華人民共和国が、米ロの間で小狡く立ち回ろうとしていること、明らかだろう。
 それはすなわち、中華人民共和国にはアメリカと全面対決する気など皆無ということ。そうである以上、台湾との戦争など、するわけがない。


 話はとりあえず以上だが、ただしそれもあくまで『現状では』だ。
 国際情勢も、激変する時には激変する。今はそうでも、来年には変わるかもしれない。下手すると来月にも。

 現状、そのような事態があり得るか?というと、あるとすれば、おそらく中華人民共和国の軍拡によるパワーバランスの変化によって、だけだろう。
 現在、中華人民共和国がせっせと軍拡に乗り出している以上、平和を守るためにはそれに対抗し、パワーバランスを保っていく必要がある。

 それはすなわち新たな形態の冷戦であり、これは日本も当事者のひとつなのであり、応分の負担はしていく必要がある、ということだ。

 そもそも戦争は、その本質からして、賢く立ち回る限り、常に回避出来る。そしてその『賢い立ち回り』には、必要な時には軍拡に励むことも含まれる。
 以前も記したことだし、これまた長い話になるのでここは結論だけ記しておくが、それは歴史からの教訓でもある。



 今回の話は以上だが、以下は蛇足。

 まず指摘しなければならないのは、歴史的には、中華人民共和国の台湾侵攻は、今になって初めて危惧されたことでは無い、ということだ。
 その昔、アメリカと旧ソ連が冷たい戦争を戦っていた時代から、そのような事態は想定されていた。


 そしてそれは、中華人民共和国が台湾に侵攻する事態だけではない。
 台湾が中華人民共和国に侵攻する事態も想定されていた。少なくとも台湾自身は、今は昔の話だが、かつてはそうしたい意思があった。


 それはどういうことか?
 というと、これについては、そもそも『台湾』は通称で、正式な国名は『中華民国』なのだ、というところから話を始めなければならない。

 歴史的には、1912年の辛亥革命で清帝国は滅亡し、代わって中華民国が成立する。その頃の中国史はものすごく複雑なので説明は省くが、とにかく第二次世界大戦後、その中華民国と中国共産党の内戦が勃発する。それに中国共産党が勝利し、今の中華人民共和国として現在に至る。そして中華民国は台湾に逃れ、これが現在の『台湾』となる。

 そのような経緯からして、中華人民共和国には中国統一のため台湾に侵攻したい理由があった。
 それは台湾も同様で、同じく中国統一のため、大陸に侵攻したい理由があった。少なくとも蒋介石は最後までそれを呼号していた。

 ものすごく大雑把だが、歴史的には大体以上の経緯だ。
 なので中華人民共和国は、現在に至るも台湾(中華民国)を国家として認めておらず、中華人民共和国領である台湾を不当に占拠している勢力と見なしている。ただしそれは、政治は棚に上げて仲良く金儲けには励む、小狡い関係でもある。
 そしてそれは台湾(中華民国)も同様で、中華人民共和国を国家とは認めておらず、中華民国領を不当に占拠している勢力と見なしている。が、それでも仲良く金儲けには励むという関係。
(ちなみにだが、現在の台湾の独立派は、中華人民共和国からの独立ではなく、中華民国からの独立を主張している)。


 とにかく歴史的にはそういうことなので、もし将来、中華人民共和国対台湾の戦争が始まった場合、くどくて申し訳ないが歴史的見地からは、それは内戦の再開ということになる。

 しかし実態としては独立国同士の戦争なわけで、それをどう判断するかは、たぶん、これまた七面倒くさい話になる。筆者的には、そういう面倒は止めて、仲良く金儲けに励んで欲しい。しょせん人の世は金(マネー)が全てだ。

 もっとも、先に述べた通り、さし当たり戦争にはなるまいというのが筆者の読みだ。


 そしてこの話は、この人の世に平和は実現できるという、ひとつの例証でも有ると思う。
 人の世には色々と七面倒くさい対立はあるわけだが、それを小狡く棚に上げて、悪党同士、仲良く腹黒く金儲けにいそしむことは可能なのだ、というひとつの例証。
 ただしそれは、いわゆる『右手で握手しながら左手で殴り合う』状態で、冷たい戦争がさらに弛緩した状態に他ならないのだが、所詮、この世に真の平和など存在しない。

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