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薬剤師が「評価の低い病院」を選んで受診する理由

「レビュー」や「クチコミ」が人びとの選択を牛耳るようになって久しいわけですが、病院も当然その流れに逆らうことはできません。

いやむしろ「健康」という大きな問題に直結するからこそ、よりレビューの暴力からは逃れられない存在であるといえます。

しかし患者が「レビューやクチコミを参照して病院を選ぶ」ことについては、大きな落とし穴があります。

それは「レビューやクチコミには病院の “本当の価値” が反映されていない」ためです。

今回は薬剤師(というより、私)が、あえて低評価の病院を受診するケースを紹介するとともに、病院に対する新しい価値基準を皆さんに提供することに挑戦してみます。

最後までよろしくお願いします。


病院のレビューを実際に見てみると


前提となる「レビューやクチコミの現状」を知るために、実際のものを見てみることとします。
以下は「〈適当な名字〉+小児科」で検索したクリニックのクチコミです。

皆さんも適当に検索してもらうと分かりますが、病院のレビューは星1のものが非常に多いです。
そしてそのほとんど全てが「病院の応対の悪さ」、ありていに言えば「ムカついたから」に集約されています。

ドクターの対応が冷たい。
受付の態度が悪い。
電話がぶっきらぼうだ。
予約が取れない or 受付を断られた。

前述の通り、病院とは自分や家族の「健康」に直結するサービスを提供していますので、必然的に「自分や子どもがこんなに辛いのに、よくそんな態度ができるよね」という怒りが沸き上がりやすい構造にあります。
(ちなみに薬局は高評価が付きやすい構造にありますが、これはまた別の機会に。)

今回、これらのレビュー自体についての是非は問いません。
私が強調したいのは「応対の品質は病院本来の価値ではない」ということです。


病院の価値は「アウトプットの質」だ


では病院本来の価値とは何でしょうか?
私はこれを「アウトプットの質」だと考えています。

病院に何のためにかかるのかを考えればこれは自明で、病院にかかる理由は全ての患者において、
病気の名前、あるいは病気でないことを確定させ、適切な治療を施してもらうこと
にあります。

であれば病院の価値はここがより的確であること、言い換えれば「正確な診断」と「治療の内容」にあるはずです。


薬剤師をやっていると、様々な医療機関の処方せんが集まってきます。
また患者に対して説明をする中で、ドクターとの会話についてもある程度はうかがい知ることができます。

するとドクターごとに処方の傾向、つまりは薬物治療のポリシーが見えてきます。

それが適切だと思う場合もあれば、適切でないと思う場合もあります。

医療業界には疾患ごとに「ガイドライン」というものがあり、「推奨される治療方法」が定められています。
これはつまり全国から集められた膨大なデータから「どうやらこれが一番効果的だぞ」と思われる治療法を集めたものです。
概ね5年ぐらいの周期で更新されています。


しっかりと最新のガイドラインに基づいて、副作用の少ない薬を処方するドクターもいれば、
もうガイドラインに名前も挙がらないような、副作用が起きやすい20年前の薬を処方し続けるドクターもいます。


そしてそれは(当然ですが)病院のレビュー点数とは全く相関しません
「スタッフは親切だけど治療は古すぎる」ということがいくらでもあります。
無論、その逆も。


「評価が低い病院」のメリット


とはいえ薬剤師でない人が、処方された薬を見てその良し悪しを判断するのは難しいでしょう。

どうせ分からないのであれば、対応の良い病院に行った方が良いですよね。

ただ「評価の低い病院」には大きなメリットが一つあります。
それは「混雑していない」ことです。

Googleレビューが2.1点の病院には、みんな行きたがりません。
一方で、その病院のアウトプットが悪いとは限らないわけです。
これを利用しない手はないでしょう。

例えば花粉症や、スギやダニのアレルギーを治療中の方。
どこで診察してもらっても、結果にほぼ差がありません
空いている病院で処方してもらうことを考えてみてください。

例えば感染症が蔓延している状況で、子どもの保湿剤を貰いたい方。
混雑している小児科に行くべきではありません。
インフルエンザ、コロナウイルス、アデノウイルスが充満している待合室で1時間も待つよりは、受付が無愛想な空いている病院で貰う方が何倍も安全です。

これが薬剤師である私が提案する「新しい病院の選び方」です。


まとめ


まとめますと「低評価の病院にあえて行く、というカードも持っておこう」ということになります。

今回はやや挑戦的な記事になってしまいました。

でもこれは、日々仕事をする中でいつも思っていたことなんです。

39℃の熱が出ている子を、待合で1時間待たせてしまった」と自分を責めるお母さんを見て、
(それならあの不人気な病院に連れて行った方が良いよなあ)
と思うこと、多々ありました。

私も親なので、お母さんの気持ちも痛いほどよく分かるんです。
子どもをなるべく良い病院に連れて行ってあげたい。
その気持ちはみんな共通です。

皆さんの病院の選択肢が増えますように。


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それでは、また。

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