夫婦で価値観が一致する瞬間
「でも、混みそうだよねえ・・・」
それは、どちらからともなく。
「じゃあ日曜日は辞めて、木曜日に行こうか!」
「うん!そうしよう!」
私と妻の価値観が一致する瞬間。
それは「人混みを避けたい」である。
妻は昔から、人混みが大の苦手だ。
地方で生まれ育ち、小学校は学年に9人しか生徒がいなかったと聞く。
そんな山奥育ちの彼女が、首都圏出身の私と結婚してしまったものだから、それはもう大変だ。
年末に帰郷すると、「あわわ、あわわ」と小さな声を漏らしながら、私の裾を掴んでヨタヨタと東京駅を歩く。
かくいう私はというと、長年の田舎暮らしですっかりキバを抜かれてしまった。
雪の日、無理やり乗り込んだ電車の窓に、顔を半分つぶされながら通学したことも、
たくさんの人が歩いてくる中を、的確にかわしながら歩く熟練のテクニックも、
隣の人から肘鉄を喰らいながら、もみくちゃになったアジカンのライブも、
今となっては「別の人間の記憶なのではないか?」と思うぐらいだ。
関東にいた頃、私にとって人混みは当たり前で、そもそも「回避する」という発想を持ったことすらない。
成人するまで、人混みのない生活なんて送ったことがない。
しかし現在私たちは、それとは無縁の世界を生きている。
公共交通機関を利用することなんて年に5日もないし、
仮に電車に乗ったとしても、乗客は10人いれば多いぐらいだ。
平日に行く地元の遊園地では、列に5分以上並んだ記憶もほとんどない。
極めて快適。
もう首都圏には住めないな、とさえ感じている。
さて、そんな私たちにいま「試練」が訪れている。
子どもが生まれたことがキッカケだ。
5才の長男と、2才の長女。
多感なスポンジである彼らの好奇心を満たすのに、人混みを避けられるハズがない。
夫婦同士なら勝手にすれば良いが、子どもたちの行動を親の都合で縛り付けてはならない。
お祭に行きたい!
新幹線に乗りたい!
USJやディズニーランドも楽しそう!
もう夢見る大人じゃいられないのだ。
彼らの「楽しい」「嬉しい」「美味しい」を守るため、私たち夫婦は今日も、人混みに立ち向かう。
※ 本記事は、珈琲次郎さんの企画に参加させて頂いております。
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