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結婚、出産、昇進…おめでたいことにもグリーフはある

先日、わたしのツィッターにストレス指数のお話が流れてきました。ストレス点数ストレスランキングなどとも言われますが、この指数はわたしも、グリーフのお話をする際によく使います

ストレス指数というのは、どのような出来事が人にとってより高いストレス要因になるかを順位表で表したものです。今回は神戸市の精神保健福祉センターさんのサイトが分かり易かったので、こちらのデータをお借りします。トップ5以下、気になるストレス要員の順位は以下の通りです

1位 配偶者(夫・妻)や恋人の死
2位 親族の死
3位 親しい友人の死
4位 家族の病気、怪我
5位 離婚

23位 転職
40位 新しい家族が増える(誕生、養子縁組、親との同居など) 
41位 結婚
45位 自分の昇進・昇格

このランキングの中でよく用いられるのが「配偶者や恋人の死」の項目です。米国でも配偶者の死はトップのストレス要因です。配偶者の死は遺された配偶者にとって非常に大きなショックであり、ストレスであり。特に中高年以降の男性にとっては自殺のリスクを高めるものだと言われます

一方でこの表には、転職、出産、結婚、昇進なども載っており。これらがストレス要因となり得ることが示されています

こうした本来であれば「おめでたい」とされることでもストレス要因となり得る。ここが実はグリーフとそのケアでも非常に注意しておかなければいけないポイントです

ではなぜこうした「おめでたい」ことが、グリーフケアでもポイントになるなのでしょうか

わたしはグリーフケアを死別以外にも幅広く捉えており、あらゆる喪失がグリーフに繋がると考えています。その最たるものが大切な人、伴侶や恋人との死別です。一方、喪失というのは実は日々いろんなところで起きており、わたし達は体験をしています。そこで

喪失=自分の中から何かを無くすこと、失うこと

ととらえると、実はわたし達の生活は常に喪失やグリーフと隣合わせです

例えば転職はそれまでの安定した仕事や生活を失うことでもあります。仮にブラックな環境から抜け出すような場合でも、それは安心と同時に、その環境にいた間に失ったことを改めて後悔することになるかもしれません

また昇進も同じです。わたしも経験をしましたが、昇進というのはそれまでの頑張りが評価され、職位もお給料も上がる(場合によっては下がりますが…)という嬉しい出来事です。一方でいままで以上の責任を負い。業績が求められ。新たに部下を持ち。彼らの教育や管理もしなければならないなど、自分の負担が増える出来事です。当然プレッシャーも増えますね

そして結婚や出産。これは本当におめでたい(はず)のことですが、結婚の最大の喪失は「独身である状態」を失うことです。独身だったら出来たことの多くが制約されるようになる。これは本当に大きな変化ですね。また出産も育児などを通じて、自分の時間や出来ることが制限される。それ以上の喜びを感じられれば良いのですが多くの場合、そう簡単には感じられないようです

このように人生におけるおめでたい、そしてポジティブとされる出来事も、裏を返すとなんらかの喪失を伴うことが分かります。残念ながら人生において何かを得ることは、一方で、何かを失うことに繋がっているのです

ただここまでのレベルではないものの、実はわたし達は日々何かを確実に失っています。毎日歳を取っていますし。毎日死に向かっている。ちょっとしたライフイベントもそうです。ただそれを喪失と感じないのは、毎日それらが当たり前のように起きているかもしれません。それ故にインパクトのある出来事はより自覚出来る喪失となり。ストレス要因となり得るわけです

このように喪失、そしてグリーフを広くとらえると、仮におめでたいとされることでもケアの対象となることが分かります

わたしはむしろおめでたいことに隠れているグリーフこそアブナイと思っています

ですので、こうしたおめでたい経験や出来事を通じて落ち込んだり。気が沈んだり、時として鬱々とすることがあっても、それはいたって自然なことだと感じて欲しいです。無理に元気になろうとせず、誰かの励ましや慰めにイラっとするのだってぜんぜんアリです

それで調子を崩すことすら、おかしなことではまったくありません

ひとが何にストレスを感じ。喪失だと思うかは、その人だけのものです。そのことに良し悪しなどありません。そのことは覚えておいて損は無いと思います

なお自分がいまどのようなストレスを感じているかは、簡単にチェックが出来ます。上記の神戸市精神保健福祉センターさんのサイトでも出来ますので、みなさんも試してみてはいかがでしょうか。ちなみにわたしはお金(Money)のストレスが大きいという判定でした

確かにな・・・


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