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「クソ喰らえ、クローン病!」第21話~クソ喰らえ、クソ!

「クソ喰らえ、クローン病!」前話はこちらから

 第2話で既にクソについては書いてるが、いやいやまだまだ書き足りないね。ぜひとももっとクソについて書かせてほしいんだ。読者諸氏、たまにはクソについての文章を読んで、クソに思いを馳せるのも悪くないだろ。

 クソは固形が良くて下痢は良くないってのが普通だ。だけど今の俺の場合、固形はちょっと辛い。第17話で書いた通り、固形をブチ撒ける時は腹部の痛みが何だか不穏な感じになるし、排便後に肛門や痔瘻がかなり痛むんで、憂鬱な気分になるんだよ。特に痔瘻の痛みは、ピアノ線が緊張した感じで目が覚めるような鮮烈さがあるんだよ。煩わしい。
 でもこれは個人的な事情であって、クローン病患者においても固形が出るのが良い、健康的だっていうのは変わらない。腸の炎症が収まってきていて調子が良いことの証左であるし、下痢だと痔瘻の孔に汚れが入って症状が悪化するって可能性があるんだよ。固形を出すために踏んばらざるを得なくなり、肛門括約筋やら痔瘻が刺激され痛くなるっていうのはあるけど、悪化の可能性を考えると固形のがマシだ。だけどこの何とも言えない状況は、厭になっちゃうね。

 それで下痢と固形を不安定に行きかったりと体調がハッキリしない感じも面倒臭い。最近は固形の頻度が結構多いんだが、1回何かヤバそうなことがあった。医師の許可をもらってクローン病診断後に初めてコーラが飲めた夜、いつも通り腹が痛くなってクソをする訳だよ。かなり大量の固形クソが出たんで、やっぱ刺激が多くて肛門にかなり負担があった。問題はその後だよ。20分くらい後にまた腹痛が起きてクソせざるを得なくなる。固形クソがまたドボドボ出た。腹痛は収まるけど、20分後にまたクソがドボドボ出た。これの繰り返し。
 いや、これは今までにない状況でかなり不安にさせられた。固形である限り悪くはないんだろう。だが下痢みたいな頻度で出るのは明らかに異常な気がした。そして排便を何度も執拗に繰り返していると、腸内の汚穢全てが噴出されていくような気分になる。だが身体がまっさら綺麗になるとかいう感慨はないよ。どうせクソなんかすぐに溜まる、今の俺はそれが痛いほど分かってる。
 だがこの時は、もしかしたらコーラに対して大腸が拒否反応を示したのかもしれないって猜疑心に晒されるのが一番つらかった。排便自体は収まっていくけども、じれったい猜疑心は逆に膨張を遂げていく。そして翌朝にもまた固形クソが出る訳で、不安なんだよ。だが今回、神は俺を見放さなかった。拒否反応を確かめるべく、俺はもう1回250mlほどコーラを飲んで、排便祭りが起こるか否かを試した。いわば人体実験だな。結果を言おう、拒否反応なし。驚いたことにこの後2日近くクソ自体が出なくて、大腸にも明白な異常は起こらなかった。コーラに対して拒否反応は起こらない、安心したね。

 だけどさ、クソが出ないは出ないで不安になるんだよ。クローン病は1日に何回もクソが出る状況が当然になるから、こうなるとむしろ身体に別の異常が起こったんじゃないかって思わざるを得ない。ベッドに寝転がりながら淀んだ猜疑心に苛まれるんだ。度重なる炎症によって大腸が狭窄を引き起こす時がある。するとクソの通り道がなくなり、排便が止まる。こうなると腹痛の危険性が更に高まり、最後には激痛にブン殴られる。こうして病院に緊急搬送で、狭窄部の摘出手術とかそういうのも有り得る訳だよ。こういうこと考えてると気が気がじゃなくなる。
 そして初めてこんなことを祈ったよ、腹痛くなってくれって。実際に口に出してこの言葉も言ったりする、俺は意外と言霊っていう概念を信じてるんだ。そうしたらゆっくりと、本当にゆっくりと、あのもはや顔馴染みになった鮮烈な痛みが、肉の深奥から浮かびあがってくるんだ。"来た!"と俺は嬉しくなったね。そして腹痛が気持ちのいい頂点に達した時、トイレへ駆けこみクソをブチ撒けた。ここ最近ずっとクソするたびに憂鬱な気分になってた。でもこの時ばかりは気分が良かったよ。
 俺はクソをしてる、そして生きてる。

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【済藤鉄腸のすぐに使わざるを得ないルーマニア語講座その20】
Dumnezeule, vă rog să mă lasați să mă cac!
ドゥムネゼウレ、ヴァ・ログ・サ・マ・ラサツィ・サ・マ・カク!

(神よ、お願いですから私にクソをさせてください!)

☆ワンポイント・アドバイス☆
"Dumnezeule"は"神"を意味する単語"dumnezeu"の呼格形だ。呼格形っていうのはつまり誰かに呼びかける時に使う単語形態だね、日本語では名詞の後に"~よ"とつけるけど、ルーマニア語の場合は単語の形を変える訳だね。誰かに何かを頼みたい時は、前も書いた通り"vă rog să~"と言うよ。でこの"să"の後には動詞が来る訳だけど、この動詞は普通の現在形ではなくて条件形というのを置く必要がある。でも文法を説明するのは面倒臭いから今回はパスするよ、ニューエクスプレス読んでね。この文章は本編にも出た、狭窄の不安から絞り出した祈りだね。いやまあ、さすがに日本語で考えてたけど。


私の文章を読んでくださり感謝します。もし投げ銭でサポートしてくれたら有り難いです、現在闘病中であるクローン病の治療費に当てます。今回ばかりは切実です。声援とかも喜びます、生きる気力になると思います。これからも生きるの頑張ります。