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農林業センサス2020に見る日本の農業構造が迎えた変化とは

11月27日に公表された「2020年農林業センサス結果の概要(概数値)」のデータによって、日本の基幹的農業従事者が過去5年間で大幅に増加したことが話題になりました。今回は、そのデータを各種報道とは違った視点で分析して、日本の農業構造が迎えている変化を見ていきます。

前回の記事はこちらから

法人化と集約化が進む農業

前回の記事で、基幹的農業従事者数の大幅な減少(2015年比で39.6万人減)を取り上げましたが、改めて言及するとこの基幹的農業従事者というのは個人経営の農家並びにその家族しかカウントされません。

ここにカウントされない、いわゆる農業法人の数値を見てみましょう。

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この表は、農業に従事する人数ではなく経営体を数えたものです。個人経営体は概ね家族経営の農業者で、団体経営体がいわゆる農業法人などですが、数字を見ると団体経営体とそのうちの法人経営体の数は増加していることが分かります。法人経営体の場合は、2010年から2020年の10年間で何と30%近く増えています。

もう一つ特徴的なのが、次の2つのデータです。

1経営体あたりの経営耕作面積(都府県のみ)

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農産物の販売金額規模別の農業経営体数増減率

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それぞれグラフの右側の方が増加傾向にあり、左側が減少傾向にあることが見て取れます。経営している農地面積が10~20ha以上の経営体が増えていると言うことは、それだけ農地の集約化が進んでいることを示し、農産物販売規模が3,000万円~5,000万円以上の経営体が増えているということは、それだけ経営規模の大きい農業が行われつつあることを示しています。

そして、グラフの左側にあたる農地面積が小さい、農産物販売規模が小さい経営体が大きく減少していることから、大幅な減少を見せている基幹的農業従事者の動向もまたこのデータに表れています。

確報版で更に詳細が明らかになるか

今回の農林業センサスは概数値のため、主要な指標データしか公表されていません。特に、今回取り上げた法人経営の部分で重要な指標となる、雇用労働者の実数が分かりません。

2015年の調査時点では、2010年比で常勤の雇用労働者は6.6万人増加していました。ここ10年ほどで設立が相次いでいる様々な形態の農業法人における雇用実態などが明らかになってくれば、日本の農業がどのような構造転換の中にあるのかが、より具体的に見えてくると期待しています。

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