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✴︎City Farming Wife✴︎オリーブハネムーン

10月に入りましたね。オリーブのビックイベント、収穫、搾油のシーズンです。今年は中旬を予定しています。我が家のオリーブオイルにまつわるストーリーのひとつとして、今日は私たちのオリーブ旅行記をご紹介します。
多品目農家なので年間を通してまとまったお休みを取るのは難しいのですが、2度ほど2人で海外旅行をしました。1度目は婚前旅行でカリフォルニア。2度目は新婚旅行でイタリアのトスカーナ。甘い甘いノロケ話にしたいところですが、オリーブに大半を占められた珍道旅行記です。

涙、涙のカリフォルニア

University of California, Davis (U.C.Davis)をご存知でしょうか?カリフォルニア大学の中でも日本でいう農大に近いのが、このデービス校です。ワイン醸造に関する研究・教育機関があることで有名です。近郊にナパがあることもあり、ぶどう栽培や醸造過程を学術的に学べるそうです。近年オリーブの研究も盛んで私達は2017年9月に行われた4日間の短期搾油マスターコースに参加しました。入籍半年前のこと。オリーブ短期留学が婚前旅行となりました。

講義は座学と周辺農家の視察で構成されていますが勿論全て英語です。参加者は欧州、南米など世界中から集まっていましたがアジア人は私達だけだったように記憶しています。終日英語オンリーの講義なんて大学時代の留学以来、15年ぶりでした。テキストを開いて既に頭がクラクラ…。中身は化学式、何かの成分のグラフ、機械設備の図など完璧に理系の内容なのです。知らない単語、専門用語のオンパレードでした。夫は嫁の英語レベルをよく理解していないまま、通訳として私を帯同…これが後々に揉めることに…。

嫁は自分の甘さに気付きます。しまった、オイルの搾り方なんて前知識も入れずに来てしまった…。搾油機の構造なんぞ知る由もないのに、刃の形状やら、何段階式がどうとか、遠心分離でどうのこうのとか…遠心分離って英語を理解するとこから始める始末です。確かに農は学問的には理系なんですよね…。更に困ったのはアルゼンチン出身でオーストラリア訛りの英語を話す講師だったこと。完全に自信喪失。私の脳みそのシャッターがガラガラ閉まる音がしました。たまに起きる笑いが何かも分からなかったり。まるで留学時代の最初に味わった屈辱が再現されたかのようでした。
それでもトピックによっては素人の私にも分かる時があってフムフムなんて頷いてると、隣の夫は理解していると勘違い。逆に専門用語は知っている夫が「今大事なこと言った気がする。なんだって?」と聞いてくる。講師の説明は5分くらいあったのに、私の通訳は1分程度の薄っぺらい内容ということが往々にしてあり…「ねぇ、要約しすぎでしょ?」後半には全てを通訳出来ていないことがバレバレでした。通訳失格…。それが悔しい私と知りたいことを知れない夫のフラストレーション。お恥ずかしい話ですが、堪らず私は泣き出してしまう、というほろ苦い思い出と共にある婚前旅行となったのでした。

最後に忘れずに言わなければならないのは、この旅行最大のイベントはプロポーズだったということです。
だから、めでたし、めでたし(笑)

写真上: 収穫期の違う実から絞ったオイルのブレンディング
写真下: 視察した農家の収穫用車輌と広大な畑

新婚旅行はホームセンター?

夫婦での2回目の海外旅行は新婚旅行でした。オリーブ農家であり、イタリア語学校が出会いのきっかけであった私達が迷わず選んだ行き先はイタリア、トスカーナ。

旅のメインはオリーブ農家でのアグリツーリズモ。今回選んだのは比較的大規模な生産者が経営している所で、広大なオリーブ畑を見渡すホテルに滞在。オーガニックにも拘る農場で土壌を良くしたり虫対策のために畑にアヒルや動物を放って飼育するような、環境豊かな場所でした。カリフォルニアの教訓を活かし、ここでは日本人の通訳ガイドを手配。栽培から搾油までみっちり聞きたいことが聞けましたので、涙も喧嘩もなし(笑)イタリアの方達は日本でオリーブ栽培をしていると聞くと、かなり親身になって悩みを聞いてくれたりアドバイスをしてくれました。カリフォルニアは大規模でビジネスライクなオリーブ生産なのに対して、イタリアは比較的小規模で家族経営、伝統的な手法に頼っている印象。1人農家の我が家はイタリアスタイルから学ぶことも多かったです。

あとは観光したの?いいえ、ホームセンターとオリーブの苗会社訪問です…。


〜繰り返しますが、新婚旅行です〜


ホームセンターには日本では絶対に売ってないオリーブ関連の農機具、イタリア野菜の種などが豊富。夫の興奮ぶりは例えるならセリエAのスター選手と会えたサッカー少年のよう?ショッピングに行けず不満一杯の嫁かと思えば、イタリアの日常を垣間見て意外と楽しんじゃってました。

それから訪れたのはオリーブの苗木屋さん。規模感と品質の高さが日本の業者とは段違いだそうで、是非輸入したいということで訪問。イケメンイタ男社長に案内してもらったのですが、彼は英語が話せない…大学生の娘さんと私で英語・イタリア語・日本語で通訳。カリフォルニアのトラウマを乗り越え何とか知りたい情報を得てきました。新婚旅行で仕事みたいなことしてますが、現地の人たちと交流し、こうやって役に立てると不思議と嬉しいもので…(^_^; 夫婦二人三脚ってやつ?完全にオリーブ、いや夫のペースにハマった嫁なのでした。

もちろん、その他はお買い物に、観光、数々のグルメ、マルシェ、サイクリングなど。存分に新婚旅行を満喫しましたよ!

嫁の知らないオリーブの世界


素人なりにもU.C.Davisでの講義やイタリアでの視察などを通じて私は奥深いオリーブの世界を知ることとなりました。

《オリーブは世界に何品種あると思いますか?》
139の品種が世界で栽培されているオリーブのうち85%を占めるそうです。残り15%を考えると数百種あるとの説も。

《黒のオリーブと緑のオリーブ、違い分かりますか?》
最初は緑で成熟すると紫から黒へと変わっていきます。私は完全に品種の違いだと思っていました。どの熟度で収穫し、オイルにするか。これが味や品質、オイルの生産量に大きく影響します。この見極めが生産者の腕の見せ所とも言えます。

《オリーブオイルにもソムリエがいる?》
そう、オリーブオイルはワインと似ているとお考え頂くと分かりやすいんです。オリーブオイルにもソムリエと呼ばれる方達や鑑定士の資格があり、味と香りをフルーツやナッツなどに例えて解説し、適した食べ合わせなどを提案されたりしています。一点異なる大きなポイントは、ワインは一般的に熟成させた方が味が良くなりビンテージとして扱われるのに対し、オリーブオイルは絞った瞬間から劣化していくということ。そのシーズンに搾ったオイルが手に入ったら是非フレッシュなうちに加熱しないで味わって下さいね!

オリーブシーズンに向けて


あと10日ばかりで収穫です。今年はどんな味のオイルがどれ位生産できるでしょうか?期待と不安、そして祈りが入り混じり緊張する期間です。台風が来ないことを願うばかり。珍道旅行としてお話ししましたが、日本ではまだ限られた情報しかないため、正に自分の足で赴き、自分の目で見て、ぽんこつ通訳の耳を通して(笑)本場の情報を学びながら今に至っています。この時期、世界中の生産者が思い思いの味や香りを表現するために拘り抜いて作るオイル。いま食卓にあるボトルにもきっとストーリーがあることを是非一瞬だけでも想像しながら味わって頂けたらと思います。そして順調に販売に至った暁には我が家のオイルも是非お試しください!

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