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カーボンプライシングとはー温室効果ガスに価格がつく!?

2050年カーボンニュートラルに向けて世界各国で温室効果ガス削減の取り組みが進められる中、「カーボンプライシング」を導入する国が増えてきています。本記事では、近年注目されているカーボンプライシングの定義から各国の事例まで詳しく解説します。


◆カーボンプライシングとは

カーボンプライシングは、気候変動問題の原因である温室効果ガスの排出量に価格をつける政策手段です。温室効果ガスを排出する企業に対して金銭的負担を課すことで、排出量削減を促すことが期待されています。

世界で初めてのカーボンプライシングは1990年にフィンランドで導入された炭素税だと言われています。その後初の排出権取引制度となるEU-ETSが開始され、現在は40の国と20の地域で導入されるまでに拡大しました。

◆カーボンプライシングの種類

カーボンプライシングには「明示的カーボンプライシング」と「暗示的カーボンプライシング」の二種類があります。そのうち前者は排出量に対して直接的に価格がつけられることから、より効果的な手段として各国が積極的に導入に取り組んでいます。明示的カーボンプライシングの主な手段は①炭素税②排出権取引の2種類です。

◆1: 炭素税とは

炭素税は1トンあたりのCO2排出量に対して一定の税金を課す方式であり、排出量が多いほど支払う税金も高くなります。フィンランド、スウェーデン、フランスなどのEU諸国を中心に、カナダやシンガポールなど近年導入国が増えています。

炭素税は、あらかじめ価格が決まっているので、企業側がコストを予測しやすいというメリットがあります。炭素税についてはこちらの記事でさらに詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

◆2: 排出権取引制度(ETS)とは

一方、排出権取引制度は、政府が設定した全体の排出量の上限(キャップ)の範囲内で、企業が排出権を取引できる仕組みです。各企業には排出できる量が割り当てられ、その範囲を超えて排出する場合は、追加の排出権を市場で購入しなければなりません。逆に、割り当てられた排出量よりも少ない排出に抑えた企業は、余った排出権を他の企業に売ることで利益を上げることができます。

排出権取引では炭素税よりも企業の負担価格の変動は大きいですが、あらかじめ排出量が定められるため、国全体の温室効果ガス削減にはより効果が高いと言われています。EUや米国カリフォルニア州に加え、2021年には世界最大のCO2排出国である中国も排出権取引制度を導入しました。

◆日本における取り組み

日本では2012年に「地球温暖化対策税」として炭素税が導入されました。この税は化石燃料に課され、その収益は再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の普及、森林整備などに使われています。炭素税は、エネルギーの効率化や温室効果ガス排出削減を促進することを目的としています。

排出権取引制度も限定的ながら存在します。東京都と埼玉県では、地方自治体レベルで排出量取引制度が導入されており、企業が排出削減義務を果たすために排出権を取引することが可能です。全国規模では、2026年の排出権取引本格化に向けて東証カーボンクレジット市場が開設され、J-クレジットの取引が行われています。

◆カーボンプライシングのメリットとデメリット

カーボンプライシングの主なメリットは、温室効果ガスの排出削減を経済的に促進し、環境保護と経済成長の両立を実現する点です。企業が効率的に排出削減技術を導入することでCO2を排出する企業や個人の行動が変わり、地球温暖化対策に効果をもたらします。さらに、クリーンエネルギーを利用した製品や事業の付加価値が向上し、投資が活性化されることで、脱炭素化に向けた取り組みが一層進展することが期待されます。このように、カーボンプライシングは技術革新を促し、持続可能な経済の推進力となるのです。

一方でデメリットも存在します。カーボンプライシングによって企業のコストが増大し、その負担が消費者に転嫁される可能性があります。これにより、エネルギーコストの上昇や生活費の増加が懸念され、特に経済的に弱い立場の人々に影響が及ぶ恐れがあります。また、CO2排出コストの増加が企業の国際競争力を低下させ、規制が緩い国への生産拠点の移転や投資先の変更といった経済的な悪影響が生じるリスクもあります。このような課題に対処するため、経済成長と環境保護を両立させるための制度設計が求められています。

◆まとめ

カーボンプライシングは、地球温暖化対策として不可欠な手段であり、企業や個人の行動を変えるインセンティブとなります。日本においても、この制度の導入と拡充が進む中で、持続可能な社会の実現に向けた技術革新や投資が期待されます。政府、企業、市民が一体となって、経済成長と環境保護を両立させる新たな仕組みを築くことが、持続可能な社会を実現する鍵となるでしょう。

◆Green Carbonの取り組み

Green Carbon株式会社は、「生命の力で地球を救う」というビジョンのもと、国内外で自然由来のカーボンクレジット創出に取り組んでいます。
中でも、水田によるメタン排出削減効果のJ-クレジット化に注力しています。国内では、水田由来のJ-クレジット創出を目的とした「*稲作コンソーシアム」を発足させ、全国の生産農家と連携して地球環境の保全と脱炭素化に努めています。2024年8月現在、稲作コンソーシアムへの登録面積は40,000ha以上、約900社以上の企業・農業法人が参画しています。これにより、全国に独自の農家ネットワークを構築しています。

*稲作コンソーシアム:
Green Carbonが運営する、「水稲栽培による中干し期間の延長」 によるJ-クレジット申請をまとめて実施するためのコンソーシアムで、個人農家、農業法人、企業、金融機関、自治体、メディアなどが参画しています。

◆Green Carbon株式会社

代表者   :代表取締役 大北 潤
所在地   :東京都港区赤坂5-2-33IsaI AKASAKA607
設立    :2019年12月
事業内容  :カーボンクレジット創出販売事業農業関連事業、環境関連事業、その他、関連する事業及びESGコンサルティング事業