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50. 認知症に恐れおののくわたしを、少し救ってくれた本

こんにちは。Greenです。留学ネタも尽きたような(いや、まだある)、忘れたような(忘れかけているのは本当)そんな今日この頃。とてもすてきな本を読んだので覚えておきたくてnoteに記します。

『脳科学者の母が、認知症になる』

by 脳科学者・恩蔵絢子さん

です。

わたしの祖母はふたりとも亡くなっているけれど、どちらも亡くなる前は認知症にかかっていた。わたしは一緒に暮らしておらず、介護の大変さもそこまで体感しなかったけれど、母からは色々聞いていて、認知症への恐れがどんどんふくらんでしまった。

そして衝撃だった『アリスのままで』という映画。これは学者で50代くらいの女性が、若年性アルツハイマーになってしまう話だ。この衝撃がずっと後を引く。もう一度見たいのだけど、怖くて見返せないほどだ。

というわけで、絶対に認知症になりたくない、誰か早く治療薬を…を思っていた。わたしのような人、他にもいるのではないだろうか?

というわけで冒頭の本である。

この本は40代の脳科学者である著者のお母様が65歳にして認知症になってしまう話。それを脳科学者の視点と、近しい家族という視点から観察し、脳に関してわかっていることと含めて「記憶が失われてしまうとその人は”その人”でなくなってしまうのか?」ということについて書いたものだ。

読み終わった後、というか読みながら、じわじわじわじわ感動した。認知症の本を読んでまさかこのような気持ちになるとは思わなかった。

このお母様の優しい性格や、脳科学者である著者のすごく人間味ある側面、お父様の温厚な雰囲気、とても仲良しの3人家族だったのだと思うし、そしてそれは現在も続いている。もちろん日々大変なことはあるけれど、それでもすてきな瞬間もあるということ、絶望しかないわけではないということ。

一番ぐっときたのは、P164

認知症と診断されて二年半が経って、失われたものばかりに注目するのではなく、残っているものにこそ注目すべきだということに気が付き始めた。母に残っているものは何か? 

『脳科学者の母が、認知症になる』 脳科学者・恩蔵絢子 P.164

仕事で失敗してしまった著者が、家に帰りお母様の顔を見たらほっとして泣きついてしまう。お母様が「誰かに何か言われたの?」「誰かいじわるするの?」など心配して、そしてなぐさめてくれた、というエピソード。

例えば料理をするとかそういう認知的機能は衰えたとしても、感情的機能というのはそのままあって、その感情が「その人らしさ」につながっている、ということ。

だから、運転ができない、計算ができない、それらのことで自信を無くしたり不安から攻撃的になってしまったりするかもしれないけど、その認知の部分を責めずに精神が安定できていれば、感情部分は引き続きその人らしくいれるのらしいのだ(もちろん後期、末期は無理かもしれないけれど)。

これはとても心強い話ではないか。

これからわたしの母や夫の母が認知症になるかもしれない。それは怖いことだけれど、この本を読む前と後で、わたしの考え方は大きく変わったように思う。うまく対処できると言い切れる自信はもちろんまだないけれど、少なくともその人の感情には、その人らしさが残っているのだ。消えるわけではない、それはとても大きな救いだ。

そしていつか、私も認知症になるかもしれない。早ければ若年性アルツハイマーになってしまうかもしれない。できればそれは避けたいのだけれど、認知症に関するさまざまな研究や、この本のような発見がもっとされて、認知症に関する概念がアップデートされていくことに期待する。めっちゃしてる。

というわけで、とてもおすすめの本です。

それでは、また♪


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