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「眠り」について考えること

私は「眠ること」が昔からとても下手くそだ。
子供の頃、親から「もう遅いから寝なさい」と言われることは恐怖だった。
暗い階段を昇って、ひんやりとした自室のベッドに潜り込むと、眠気は一気にどこかへ行ってしまって、私は目を見開いたままいつまでも暗闇をみつめていた。
一人で眠ることを強制されたのは、四歳の頃からだった。もし、小学校入学まで親が一緒に眠ってくれたら、あるいは私が寝付くまでそばにいてくれたら、今よりもう少しだけ眠ることが上手だったかもしれないのになあ、と大人になってからは思う。


10代後半から20代は深刻な不眠と付き合うことになった。もちろん波はあったけれど、ひどい時は「今日は眠れるかもしれない」「今日も眠れないかもしれない」という気持ちをぐるぐる抱えたまま毎日を生きていたように思う。
夜勤をしていた頃は少し楽だった。家に帰って昼間の喧騒を聴きながらだと、自然に眠りにつくことが出来たから。
(でもその前日に眠れないと地獄)
眠剤に頼っていた時期もあったけれど、大抵の薬が耐性がついて効かなくなるし、量が増えるのが怖くて、やめたり、また飲み始めたりを繰り返していた。


布団に入ったら数秒で眠れるよーって言う人が心底羨ましかった。
自分の部屋のベッドで上手く眠れない私は、旅先とか知らない場所ではほとんど眠れない。
多くの人にとって休息である眠りに、なぜこんなに苦しめられなくちゃいけないんだろう、とよく思った。

結婚して数年間は、不思議とよく眠れた。
今までなかった、「眠る時の空間に自分以外の誰かがいる」というシチュエーションが良かったのかもしれない。
でもジワジワとうまく眠れない日が増えてきて、
「なんとかしなくてはならない」と思うようになった。


先日、通っている通信制大学のスクーリングを受けてきた。睡眠心理学の授業だ。
「眠り」とは何かと言ったことからはじまり、夢についての話、眠れないことが心と体に及ぼす影響等、非常に面白かったし、改めて、私が普段心がけている「眠れるためにしていること」を見直す機会となったので良かった。

さて、私が普段、眠りのために心がけていることはこんなことである。
①毎日同じ時間に寝起きをする。
②朝はお日様の光をよく浴びる。
③日中眠くても昼寝をしない。
④日が落ちてからはカフェインを摂らない。
⑤眠る直前にスマホを見ない。
こうやって羅列してみると、何普通のことを書いているんだ、と自分でも思うけど、これを毎日実践するのって割と難しい。特に⑤なんて全然出来てない。眠る前にスマホを見るのって、貴重な自由時間といった感じで楽しいんですよね…。

私はこれに加えて、漢方を飲んでいるのだけれど、半信半疑で飲み始めたのに、実によく効いてくれてとても助かっている。
若い頃、眠剤を飲む前に、漢方を飲んでいればよかったなあと思うくらい、自分には合っていると思う。
睡眠心理学の授業では、私が眠りについて実践していることが概ね正しかったことを知ることができたし、新たにそこに付け加えることも出来て、とても有意義な時間だったと思う。
特に、高齢者の眠りについて知ることが出来たのはとても良かった。
ざっくりと説明するのなら、年齢と共に眠りの質が落ちるのは当然のこと。高齢になったら、夜眠れなくても気にしてはならない、夜更かしをしてもいい。眠くなったら短時間寝ればいいし、昼寝も一時間未満であれば、認知症を防ぐ傾向にある(逆に一時間以上昼寝をすると認知症になる確率がぐんと上がるそう)と、まあだいたいこんな感じだった。
眠れないのが普通になる。ということになぜか私はとってもホッとした。
そうか、高齢になったらなんで眠れないのって思わなくていいんだな。
未来の私が、眠りの悩みから解放されているのかもと思うと嬉しくなったのだ。


眠れない時の私は、常に何かを「考えて」いるように思う。だいたい、嫌なこと、体が強張ってしまうような何かだ。
そんなこと、眠る時に考えなくていいじゃない、と思うけど、そういう私に生まれついてしまったんだからしようがない。
私にできることは、眠る時に何も考えなくて済むように、リラックスした状態を保つ努力をするだけだ。
それでも眠れない日はやってくる。
これからはそんな日が来ても、「大丈夫だよ」と自分に言ってあげられるように出来たらいいなあと思う。




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