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安心しろ、日本に徴兵制の復活はない。

イギリスが徴兵制度を復活させたがっている。

この動きも受けて「日本も徴兵制復活の動きがあるのでは?」という疑念の世論があるが、私から言わせればほぼ杞憂である。
 なぜ、日本で徴兵制の復活ができないのか。別に”若者の人権が”とか言う優しい話ではない。結論から言えば誰も得しないからだ。
 その私の言う「誰も」とは、自衛隊、日本の産業界、米国、中国を指している。順を追って説明しよう。

徴兵制のメリットとは

 とはいえ、日本に徴兵制を導入してもメリットがない訳ではない。これも説明しよう。

 徴兵制のメリットその1 若い男子の健康状態が良くなる

若い男子が、閉所でひたすら身体を鍛えるのだから当たり前である。前に言った、「ホワイトカラーの増加しすぎで日本は少子高齢化を迎え、滅ぶかも」という懸念も改善されるかもしれない。
 若く、健康な働き手が増えるのは国にとっての大いなるメリットである。これはきちんと明示しておきたい

徴兵制のメリットその2 人手不足の国防の人材が補充される

 自衛隊は万年人材不足である。いくら待遇をあげても、婚活で女を工面してやると言っても志願者がいない。
 その人材不足をなんとかする為に若い人材を供給するのは国防に取ってメリットである。これも明治しておきたい。

その上で、日本は徴兵制の導入は無理だろう。「誰も得しない」という内実を考えていこう。

 徴兵制のデメリットその1 イジメによる精神障害者の増加

 恐らく決定的なのがコレだろう。そもそも徴兵、ブートキャンプとは、訓練教官の負担をかけるモノである。そして、長期に渡って閉所に人間を詰め込むと必ずイジメが発生する。
 あの悪名(?)高い、海兵隊のブートキャンプによる徹底した肉体訓練とシゴきも、複数人の訓練教官で起床から睡眠時間までを徹底管理する体制で初めて成り立つものである。

ひたすら罵倒してるだけのように見えて、新兵の健康管理を徹底してシゴキあげている芸当なのだ。
(ちなみに、海兵隊の訓練教官として有名だった、ハートマン軍曹こと、ロナルド・リー・アーメイは、「ハートマン軍曹は教官失格、デブに精神障害の兆候が見られた時点で除隊させるべきだった。撃たれたのは自業自得」とコメントしている)

考えてみて欲しいのだが、今の自衛官の志願者はおおよそ、同じ知能、同じ学歴、同じ経験をした均質な人材を補充している新兵なのである。
 これが、「多様な人種、多様な知能、多様な学歴」をバックグラウンドとする、知能に大幅なブレがある集団を閉所に閉じ込めると何が起こるだろう。
 答えは簡単で、頭の極端にいい人間か、頭の極端に悪い人間が徹底してイジメに合う。柄の悪い肉体労働の現場で「エリート大卒です」と公言するようなもの。真っ先にいじめのターゲットに合う。

弊所に人をシゴきあげる軍という施設において、イジメは管理者が最も気を付けるべきことだ。それは米軍においても同様である

残念なことに、今の自衛官の訓練教官がこういう、「多様性をまとめあげ、新兵をシゴキあげる」という困難なことを経験しているか、というと疑問である。恐らく訓練過程で新人の精神病誘発が多発するだろう。そして、恐らくその精神病を患った人の中には、「頭が極端に良いがゆえにコミュニケーションが苦手」で、もし別の道があったら、日本の科学に貢献してくれたかもしれない人も入っている。
 これは明確に国益の損失である。(俺も酷い目にあったわ・・・)

徴兵制のデメリットその2 米国と中国に取って不利益である

 中国に取って日本の徴兵制が不利益なのはわかる。日本は尖閣の領土問題を抱え、センシティブな台湾問題で敵対的だからだ。これは分かる。

 では、米国にとっても不利益とはどういうことだろうか。これも簡単な話で「自衛隊に歴史修正主義的イデオロギー靖国ファシズムイデオロギーが蔓延しているから」である。
 
この防衛大の教授の言う通り、防衛大は右翼系論客を自衛隊に招いてしまっている

そして、国家神道の中心施設、靖国神社の宮司は自衛官の幹部がなり、自衛隊の有望な再就職先となっている

こんなの、軍人の一部だけじゃん、と思うかもしれないが、さる安倍政権の時、当時のオバマ政権は明確にこの「靖国ファシズム」警戒していたのだ。

ファイナンシャル紙「(安倍晋三の政策は、日本の経済成長と軍拡を伴う代償に)ワシントンにとって、極めて不快な、歴史修正的ナショナリズムを伴うことになる」

"安倍政権に極めて厳しい見方を示している英紙フィナンシャル・タイムズのアジア担当部長デービッド・ピリング氏は、元ホワイト・ハウス高官の話として、ケリー米国務長官が日本のことを「予測不能で、危険」とみなしていると伝えた。"

当時のオバマ政権の安倍氏の認識はこんな感じだった。ファイナンシャル紙より
中国に突っ込んでいく安倍氏と、不安そうにセコンドから見つめるオバマ氏とケリー国務長官

もう一度、日本が「予測不可能で危険」となっては、それは米国の国益を損なうことになる。2020年代にそんなこと起こる?と思うかもしれない。しかし、我々は、安倍政権で一度やらかしているのである。米国が日本の徴兵制。特に「靖国ナショナリズムが広まること」に危機感を覚えるのは当然である。
 その思想を広める限り、米国は必ずしも日本の、特に歴史修正主義の味方ではない。
 自衛官がそのイデオロギーを広めるなら、米国は敵になるだろう。

つまり、徴兵制は中国のみならず、同盟国、米国の利益にかなわない可能性が高いのである。

 徴兵制のデメリットその3 産業界が若い人材を取られる。

 また、徴兵制とは期間がかかるものであるので、産業界は若い人材を取られてしまう。恐らく、新人教育はとてもセンシティブなもので、どの企業も気を使っている。
 その新人を軍に取られてしまってはたまらない。恐らく人材不足はさらに加速するだろう。

結論 恐らく今後30年、50年は日本において兵役の復活はない

 上記の通り、若い男子がマッチョになる以外にメリットがないのに、ひたすら四方にデメリットを発し続ける制度になるだろう。
 復活があるとすれば、日本がもっと多くの移民を受け入れ、アメリカの移民、アメリカの民主主義を受け入れた上で、アメリカの真の同盟国となってからであろう。
 恐らく、それは30年後とか50年後とかの話で、今の徴兵制復活はほぼあり得ない、というのが私の見解である。


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