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境界線の上で踊るティラミス

 こんにちは、星ノ舞です。
 なんだかお久しぶりにnoteを書くような気がして、少し緊張していますが、今回も最後までお付き合いください😊

 申し訳ないのですが、愚痴を零させてほしいのです。
 ここ最近は、日常生活がばたばたそわそわしています。気持ちがぐんっ!と浮上してなんでもできる気がしたり、やっぱり自分なんかにはできないかもと重力に負けそうになったり、なんだか安定しない日が多いのです。
 私は何か行動を起こすときに自分の身よりも「相手が見てどう思うのか、何をしてあげたら相手の正解に近づけるのか。嫌われたくない」と相手中心で考えてしまう癖があります。いわゆる八方美人というやつです。この性格が災いして人を傷付けてしまったことは何度もあります。
 私の友人曰く、
「星ノ舞は自分と他人の境界線を引くのがあまり上手ではないよね」 
とのこと。自分の中のモヤモヤを上手く言語化してくれた友人には本当に感謝しかないです。

 どこまでが自己主張で、どこからが我儘になるのか。
 どこまでが事実説明で、どこからが言い訳になるのか。

20数年生きていても未だに分からず、境界線の狭間を揺蕩っているような、そんな奇妙な毎日を送っています。境界線を引くってとても難しいです。  
 以上のことをぐるぐる考えていて身体が重い日が続き、「これはよくないなぁ」と気分転換がしたくなりました。なので、読みたかった本を鞄に忍ばせて電車に乗ります。


 今回は足立区 千住東のカフェ「SLOW JET COFFEE」さんで、一息つこうと思います。
 私は北千住駅の千住警察署方面から徒歩10分ほど歩いて辿り着きましたが、東武伊勢崎線 牛田駅や京成本線京成関屋駅からも歩いて10分ほどで辿りつけるみたいです。また、平日と休日でメニューが少し違うみたいなので以下のお店のURLで確認してから行くのが良いと思います。


SLOW JET COFFEEさん

 先に席を取ってからカウンターで注文をする方式です。私は自家製ティラミス(¥660)とアイスコーヒー(¥490)を選びました。

自家製ティラミスとアイスコーヒー

 アイスコーヒーは苦みが強めですが、すっきりとした味わいでした。一見無骨に見えるけれど、味わえば味わうほど深みにはまるような大人の味だと感じました。
 自家製ティラミスはとても面白い食感です。ティラミスと言えばお洒落で隙があるようでない、どこかけだるげな大人の女性のイメージというか。実体がつかめず気付いたら消えてしまう食感を想像していました。ですが、ここのティラミスはなめらかなマスカルポーネの層をかいくぐるとコーヒーの染み込んだザクザク?しっかりめな生地があらわれます。
 一見マスカルポーネで柔らかい印象を与えつつも、実は自分の芯がしっかり確立されているティラミスなのかもしれません。ギャップ萌えというやつですかね。

 一息ついたところで、本の世界へ足を踏み入れます。
 今回読んだのは結城真一郎さんの『難問の多い料理店』(集英社、2024年)です。
 あらすじは以下に引用させていただきます。
※あらすじから下は感想になります。ネタバレはしないよう配慮しているつもりですが、不安な方はブラウザバックしていただいても大丈夫ですよ~😊

ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生の僕は、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。彼は虚空のような暗い瞳で、「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、嘘みたいな儲け話を提案し、あろうことか僕はそれに乗ってしまった。そして気付いた。
どうやらこの店は「ある手法」で探偵業も担っているらしいと。
空室に届き続ける置き配、火災現場に突入した謎の人物、なぜか指のない轢死体….…。
オーナーはどんな難問も華麗に解いてしまう。
そして、配達員にこう伝えるのだ。
——「もし口外したら、命はない」

結城真一郎『難問の多い料理店』本の帯より
『 難問の多い料理店』

 六本木や笹塚、五反田、王子、三田など東京の都心から下町まで様々な場所が出てきて、案外自分も東京の地名に詳しくなってきているのかもしれないなぁと嬉しくなりました。東京の幻想的な部分と虚しさや冷たさ、スピード感を表現するのが上手だなと感じました。淡々と記述しているように見えて、どこか生々しい印象を受けます。東京の街並みが目に浮かんでは消えるようでした。
 東京出身の私ですが、個人的に夜の都心の湿ったようなギラギラと油をまとったような空気感は心がヒリヒリとします。ドライなように見えて、ジメジメと渦巻いている何か。色々な人の色々な感情が絡みついているようで、未だに慣れません。時間の感覚が早いのか遅いのか、少し分からなくなる、東京はそんな場所だなと思います。
 
 複数人のビーバーイーツ配達員たちが各章の主人公となり、オーナーシェフの出す「宿題」をこなして依頼された事件の調査を行う…。そして宿題の結果を元にオーナーシェフが謎解きをする。配達員たちそれぞれの人生が1章ごとに色濃く出ていて、多様な人間性を感じられました。結末も、納得できたり、腑に落ちなかったり、「えっ!!!」と思わず声が出てしまうような困惑するものだったり、本当に様々です。
 また、各章のタイトルも依頼者の決めた「合言葉+汁物」が組み合わさっていて食欲をそそります。購入の決め手でもあったので、タイトルって大事だなぁと思います。
 ちなみに私は幼いころ、味噌汁が苦手でした。しかしこの年齢になると〆は味噌汁がいいな、と身体が味噌汁を求めるようになりました。大人になったということでいいのかな。

 さらっと読めますが、読み終わって各章に抱いた私の気持ちを俯瞰してみると、「あれ?オーナーシェフというか、この本に嵌められてた気がする…?」と少々の恐ろしさを感じます。ネタバレに注意して1つ考えたのは、人というのは盲目的で自分勝手、「こうであってほしい」と理想を大きくも小さくも抱いている生き物なのだなということです。実際、腑に落ちなかった章があるということは私も「こうだったら面白かったのに」と理想を描いていたからかもと思いました。まだまだ未熟です…。
 また、読み終わってふと表紙のデザインに目を向けると読んだ人にしか分からないような仕掛けがあり、鳥肌が立ちました。
 是非是非、気になった方は読んでみてください。
 
 やられたなぁと悔しいような、すっきりしたような気持ちで店を出ました。ランチの時間に私は行きましたが、朝早くからやっているみたいなので、モーニング目的に行くのも良いなと思います。

休日のランチメニュー

 『難問の多い料理店』の章タイトルにならって今回の記事のタイトルは、
「境界線の上で踊るティラミス」
と名付けたいと思います。
 境界線の上でタップダンスできるぐらいの余裕をいつか持てるといいなぁ(タップダンス全くできないのですが、なんかかっこいいなと思って…)。

 今回も長々とお付き合いいただきありがとうございます😊
ではまた!

星ノ舞

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