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作品紹介_1 《Optical Toys 〜アルトサックス、マリンバ、ピアノのための〜》(2022-23)

動画情報

「国立音楽大学博士後期課程作品発表(ゲネプロ)」
2023年3月12日 @国立音楽大学講堂小ホール
作曲:山田奈直
アルトサックス:上原雅史
マリンバ:中野志保
ピアノ:井口みな美
記録:川上夏輝


初演情報

あらわれトリオ(中野志保、上原雅史、井口みな美)委嘱&初演
2022年11月18日 @トーキョー・コンサーツラボ

概要

それぞれ異なる【Optical Toys 光学玩具】の名前がついた、3つ小品から成る作品です。それぞれの玩具の仕組みや名前の由来、実際に映し出される映像から発想を得ました。

この作品をつくるために、2022年7月に京都にある「おもちゃ映画ミュージアム」を訪問しました。こちらでは、様々な光学玩具やマジックランタンなど、視覚に関する玩具がたくさん展示されていて、実際にさわって楽しむことができます。


それぞれの小品について、実際に玩具が動く様子の映像とともにより詳細なに紹介していきます。

I. Praxinoscope プラキシノスコープ

演奏動画の0:00から聴くことができます

プラキシノスコープはギリシア語の【praxi 動作】と【skopeo 見ること】を組み合わせた名前です。 円筒の内側に少しずつ変化する絵を並べて描き、円筒を回転させ、鏡で囲われた回転軸に反射して映る絵を見ます。すると、鏡に映る絵が次々に入れ替わり、あたかもなめらかに動いているかのように見える様子を楽しむ玩具の仕組みから着想を得ました。

以下の動画は、実際に回転しているプラキシノスコープの様子を映したものです。

音色の調和と非調和に着目しつつ、奇数拍子の浮遊感と循環するコード進行を利用して、回転し続ける音楽を目指しました。

譜面1 プラキシノスコープ
譜面2 プラキシノスコープ
プラキシノスコープ


II. Zoetrope ゾーイトロープ

演奏動画の3:53から聴くことができます

ゾーイトロープはギリシア語の【Zoe 生命】と【Trope 回転】を組み合わせた言葉です。 鏡に映した高速で回転する円盤に描かれた少しずつ変化する絵を、円盤のスリットから覗くことで、絵が動いているように見せる玩具の仕組みから着想を得ました。回転する円盤に視界が塞がれるため、視認できる像はかなり暗いです。

以下の動画は、実際に回転しているゾーイトロープの様子を映したものです。

低音の豊富な倍音が揺らぎ、楽器の音色が融合する音響を基盤に、玩具の回転の様子を意識したリズムや速度の変化を組み込み、生命力を感じる音楽を目指しました。

譜面2 ゾーイトロープ
ゾーイトロープ


III. kaleidoscope カレイドスコープ

演奏動画の7:25から聴くことができます

ギリシア語の【kalos 美しい】と【eidos 形】と【skopeo 見ること】を組み合わせた言葉(万華鏡)。その中でも、棒(ワンド)の中で色とりどりのオブジェクトが液体とともに流れる様子を、3枚の鏡で正三角形を作った筒に映すことで、無限に広がる映像を鑑賞するワンドスコープという玩具の仕組みから着想を得ました。

以下の動画は、実際に回転しているカレイドスコープの様子を映したものです。

曲の前半は、ワンドの中で上下するオブジェクトの安易な美しさから発想を得た、3つの楽器それぞれの少しコミカルに感じる音色を並べました。

譜面4 カレイドスコープ

曲の後半は、万華鏡の無限に広がる美しく規則的な映像から発想を得て、時折輝くような連符を並べました。

譜面5 カレイドスコープ

 「光学玩具シリーズ」は《Optical Toys》に続いて、《ソロピアノのためのフェナキストスコープ》(2023)があります。こちらも後ほど別の記事にて紹介します。



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