ふと、思いついて、ボロ・アパートに帰る前に高田が社長をしている事務機販売店に寄ってみることにした。 また感じた。誰かに監視されている。 でも、辺りを見回しても不審な車も人影もなかった。やはり、一番怪しいのはぼくだ。 高田が経営している事務機販売店はあまりパッとしなかった。会社のネオンが一部欠けていてついていなかった。長い間そのままになっているようだった。 デジャヴを感じた。 そうだ、ぼくが最初に就職し虐めにあい辞めたK事務機の雰囲気に似ている。社長が贈賄で逮捕され
N市の資産家殺人事件はテレビのニュースやワイドショーでも、全国的な話題になった。冬には雪に埋もれ、人口は六万にも満たないN市が全国的話題になるなんて珍しいことだ。 ぼくは布団の中からテレビを見ていた。 「祖父は私にとってたった一人の肉親です。ぼくに何時も厳しく、優しい人でした……」と、三十半ばの背が高くがっしりしたイケメンの男が記者達に囲まれて話をしていた。 「こ、こいつだ!!」 ぼくは思わず叫んび布団の上で起きた。 車の中の人影を見ただけだが、ぼくはこの男だと思った
初めからの予定通りE海岸に向かった。平日の真夜中過ぎだ、先行車も後に続く車も、対向車も殆ど無かった。それでも、猛スピードぼくを追い越していく車もあったけれど、のんびりと車を走らせた。 運転は上手くない。免許を取るときには苦労した。 「死に急ぐことは無い」と、思った。 国道4☓☓号はなだらかな坂を登って行った。峠はトンネルだった。 トンネルを抜けると道は下りの急勾配になった。もう、アクセルを踏む必要は無かった。逆にエンジンブレーキでは効かなかった。アクセルを離しただ
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扇風機は生暖かく湿った空気をかき回しているだけだった。 ぼくが住む名ばかりのマンションの骨董品的クーラーは騒音と電気代ばかりで全然涼しくなかった。それで、扇風機を使っていたけれど、この暑さと湿気には全く効き目が無かった。 体の穴という穴から汗が吹きだしていた。 眠れそうになかった。枕元の携帯を取って時間を見た。あと数分で日付が変わるところだった。 コンビニで何か冷たいものでも買って、E海岸へドライブに行こうと思った。ぼくには明日の朝、出かけなければならない職場も学校も無