台本を公開しながら更新して完成させてみる~『ありの一決』という台本④~

 その時、騒々しくドアを開けて仙人が入ってくる。
 
マスター ごめんね、今日は貸し切りなんですよ。
仙人 すみません、ネストの方は(いらっしゃいますか)。
ジバさん 仙人?
仙人 あっ……はい!
 
 仙人はさっきまで話していたメンバーと釣り合っていない大きな声で返事をする。
 
仙人 ジバさん?
ムネオ あ。
ナベ 網目先輩? うわ!
トゲっち おお。
仙人 みんな久しぶり。元気?
ナベ 元気っすよ! いやお久しぶりです。
マスター ごめん。知らないお客さんかと思っちゃった。
仙人 いえ、こちらこそ失礼しました。ご無沙汰しています、覚えてらっしゃいますか?
マスター 今思い出した。
仙人 ならOKです。
ヒメ子 何か……もっと仙人になったね。
仙人 年取ったら皆こんなもんだよ。
ムネオ いや分かんねえよ。
トゲっち うん、なんかもう国が違う感じする。
仙人 そうか? 海外行くようになったからか?
マスター 当たった。
ジバさん ですね。
ヒメ子 今何の仕事してんの?
仙人 ○○。
ヒメ子 すご。大変そう。 
マスター 違ったか。
ジバさん 流石に予想外でしたね。
仙人 うん、大変。
トゲっち 俺は無理だなそう言う仕事は。
ナベ 何の話してるんですか?(ジバさんとマスターに)
ジバさん いや全然しょうもない話。
仙人 トゲっちがいたら助かるな。けど、けっこう根性いるから無理かもな。
トゲっち だよなー。
マスター あ、何がいい?
 
 マスターは思い出して仙人の注文を聞く。
 
仙人 ソーダ水お願いします。
マスター 普通のでもいい?
仙人 はい、大丈夫です。
マスター ごめんよ。来ること知ってたら……あ。少し待てる? もしかしたら残ってたかも。
 
 そう言ってマスターはまた部屋を出ていく。
 
ナベ せわしないっすねえ。
仙人 おれ待つって言ってないぞ。
ジバさん まあいつもあんな感じ。
ナベ そうなんすね。
ヒメ子 ナベもけっこうせかせかしてるけどね。
ナベ え。そうすか?
仙人 みんなもう候補地出した? 
ムネオ うん一通り。
トゲっち ヒメ子の持ってきたウイングフィールドが(いい)。
ムネオ ウインドフィールド。
トゲっち ごめんそれ。がいいんじゃねって感じ。仙人は?
仙人 おれはどこでもいいから特にないな。
ジバさん 全然ないの?
仙人 こういうの考える苦手だからな。むしろ考えないようにしてる。
ムネオ 仙人的にウインドフィールドってどうよ?
仙人 使いやすい。流石に企業が本腰入れてデザインしただけのことある。けど面白みは全くないな。
 
 ムネオは何とも言えない顔をしている。
 
ナベ 自分で聞いたんですよ。
ジバさん 相変わらずオブラートないね。
仙人 ジバさんはおれと同じタイプだけどな。
ジバさん 気を付けるようにはしてるから。
仙人 なるほど。
ヒメ子 気を付けてはいる、と。
ジバさん できてる自信はないです。
仙人 他は?
 
 トゲっちがスマホを見ながら答える。
 
トゲっち 二風谷、笠置、勝浦、ふもとっぱら。
ナベ ふもとっぱら? あ、刺さんが。
ムネオ ちょい待ち、お前が一番日和ってね?
ナベ こないだのふもとっぱらも刺さんですよね。
ムネオ そうだよ。せめて考えはしてこいよ。
トゲっち いやそう言うけど。だって仙人も、なあ。
仙人 まあトゲっちはなんだかんだ普通の生活をしたい人間だし、ふもっとぱらは向いてると思う。
ジバさん 何の分析。
ムネオ 仙人はいいんだよ。
ナベ そうですよ。パンピーはパンピーらしくアイデア出してください。
ヒメ子 帰っていい?(ジバさんに)
ジバさん まあまあ。
トゲっち とりあえずさ、一回多数決とろうぜ。
ムネオ だから会長がいないんだろうがよ。
ナベ 偶数じゃ割れたときどうするんですか。
仙人 おれが棄権したら奇数。候補出してない分荷物は誰より運ぶよ。
トゲっち いや仙人はいてくれ。
仙人 いいのか?
ムネオ てか前から思ってたけど、なんで葉切(はきり)が会長なの?
 
 ムネオはみんなに向けて投げかける。
 
ナベ え。
ムネオ 皆で投票したじゃん。
ナベ どうしたんすか急に。
ムネオ あれみんな本当に納得してんの?
ジバさん ムネオさっき言ってた昔のことってそれ?
ムネオ うん。
仙人 学生時代の話してたのか?
トゲっち 流れでな。
仙人 なるほど。
ナベ ムネさん、ちょっと落ち着いて。座りません?
ムネオ 落ち着いてるよ。酔ってるけど。
トゲっち なら無理すんなって。
ムネオ 悪い。座る。
 
 そう言ってムネオは持ってきた巨大なリュックを開きに行く。
 
ジバさん え、何、どういうこと。
ナベ ちょっと、大丈夫ですか。
トゲっち おい。
 
 トゲっちが立ち上がってムネオの元に行く。
 ムネオはリュックからアウトドア用の折り畳み椅子を出して座る。
 
ムネオ 仙人、こいつはどう?
 
 周りの4人は事態を呑み込めていない。
 
仙人 面白いな。キャスターついてんのか。
ムネオ 使えそう?
仙人 いいんじゃないか。子どもが遊ばないように気を付けたほうがいいな。
ムネオ 子ども向けのも今作ってる。
仙人 なるほど。今度見せてくれ。
ジバさん よく持ってきたなあ。
ナベ あれで運んだ方が早かったんじゃって思うんですよ。
ジバさん うん。
 
 トゲっちがムネオの元まで行って話しかける。
 
トゲっち とりあえず落ち着いた? マスターも遅いしちょっと水出すよ。
ムネオ すまん。
仙人 あ、ちなみに俺は会長に投票したぞ。
ナベ ちょっと網目先輩。
 
 ナベが立ち上がる。
 
ムネオ いいよナベ。皆ごめん、よくない。こういう時にデカい声通すの。自分でも嫌になる。
ヒメ子 思ってるのに何でするの?
全員 ……。
ヒメ子 そんだけ考えてるくせに何でするの?
ナベ ちょっと、マジで(ヒメ子さん)。
ヒメ子 またするでしょ。考えてもどうせ。
ムネオ ……ごめん、なんか。
ヒメ子 赤棟(あかむね)だけには絶対会長やらせたくくなかったから。
トゲっち おい。
ヒメ子 だからみんなに言ったから。
トゲっち おい(ミチコ)。
ヒメ子 赤棟に投票するなって。
ムネオ ……。
仙人 マジか。
ヒメ子 ね。
 
 ヒメ子はジバさんに向けて言う。ジバさんは微動だにしない。
 
ムネオ 何でそんなこと。
ヒメ子 え……。あたしもそう言ったけど?
ムネオ え。え?
ヒメ子 ごめん、仙人はややこしいから黙ってた。
仙人 全然。今さら。
ヒメ子 結果的にありがとう。
仙人 おう。
ヒメ子 穂希もごめん。色々良くしてくれたけど。
ジバさん ……。
ヒメ子 今日で皆にバイバイ言うか、どっちかだなーって思っててさ。流れだし言うかって思って。
ナベ いやでも……。
ヒメ子 ナベ、いつもありがとうね。
ナベ いや僕はそんな……何て言うか。
ヒメ子 一番助けてくれたと思ってるし。
ナベ いや……そういうことじゃ……。
ジバさん ヒメ子さ。
ヒメ子 何?
ジバさん ごめんやけど、自分もムネオ苦手やったけど。ヒメ子のやり方も苦手やった。だから……私は、会長には入れてない。
ヒメ子 あー……。
仙人 今日すげえな。
ナベ 網目先輩のせいは大きいです。
仙人 マジで?
ナベ はい。
仙人 ちなみにお前は?
ナベ はい?
仙人 誰に投票した?
ナベ 何なんすか。何でそんな感じなんすか。
仙人 え、何がよ?
ナベ 今の2人、そのままです。
仙人 つまり。
ナベ 会長と刺さん。
仙人 ああ。
ナベ ああてなんですか? 聞いといて。もうちょっと勘弁してください。
仙人 悪い悪い。
ナベ まあ、ヒメ子さんに言われるまでもなかったすけどね。
ヒメ子 ……やっぱり?
ナベ はい。後、ムネさん。
ムネオ あ……はい。
ナベ ムネさんはいっぱいムカつく所あるけど、シンプルにネストが良くなると思った人に入れただけなんで。
ムネオ あ。
ナベ 別に今まで通りと変わる気ないっす……あーキモくなってきた!
ムネオ ごめん。
 
 トゲっちがいつの間にか水をサーバーから出してきてムネオの前に置く。
 ヒメ子は机の上に上半身を突っ伏す。
 
ジバさん 大丈夫?
ヒメ子 疲れた。
ジバさん 水飲む?
ヒメ子 いらない。てかマスターいないし。
ジバさん 雨まだ酷いけどどうする?
ヒメ子 どうしよ……。
ジバさん まあ、人生って思ってない感じにしかならんよね。
ヒメ子 ……。
仙人 ヒメ子は?
ヒメ子 ……。
仙人 言う流れだぞ。
ヒメ子 うるさい。
仙人 家姫(いえひめ)も葉切と刺か?
ヒメ子 ……。
仙人 当たったな。
ヒメ子 違うから。
仙人 ん?
ナベ もういいでしょ。
ヒメ子 てかもう家姫じゃねーし。
仙人 あ、すまん。知らなくて。
ヒメ子 後、副会長に選んだのはタケ。
ジバさん ああ。
ヒメ子 賢ぶんな。自分の彼氏選ぶわけねーだろ。
仙人 おう。
ヒメ子 キレそう。
 
 トゲっちが何かを言おうとした瞬間にジバさんがヒメ子に声をかける。
 
ジバさん ヒメ子。
ヒメ子 全然傷つかねえじゃん。
 
 トゲっちは目線をヒメ子から自分のジョッキに落とす。
 
仙人 すまん。そういう性格で。
ナベ 網目さん、もう……!
ムネオ 俺、俺やばいなあ。
ナベ ムネさんは何ですか?
ムネオ 自分では気を付けてるつもりだったのに、全然。
ジバさん まあ気を付け続けるしかね。
ムネオ 分かってると思ってたのに。俺みたいなのが調子乗ったらダメって。
ジバさん まあ……。
 
 ムネオ椅子から立ち上がろうとするが、余計に足がもつれて元の椅子に腰から落ちる。
 
ナベ ムネさん!
ジバさん ちょっ!
トゲっち おい大丈夫か。
 
 そこにマスターが戻ってくる。
 
マスター あったよ! 「阿蘇くじゅう」!
 
 マスターは空気感の違いに戸惑う。
 
マスター え?
仙人 ありがとうございます。
 
 すたすたとマスターの所に行ってボトルを受け取る仙人。
 
ジバさん ムネオ、ちゃんと聞こえるか?
ムネオ ごめ(ん)。
仙人 マスター、店の外はタバコ大丈夫ですか?
マスター いや、いけるけど……雨だよ。
仙人 ありがとうございます。ちょっと吸ってきます。
 
 そう言うとボトルと一緒に腰が抜けたムネオをキャスターのついた椅子で運んでいく。
 
ジバさん 仙人ごめん、任せる。
仙人 おうけい。
マスター ムネくん?
 
 マスターは座面の低さで見えにくかったムネオに気づく。
 
仙人 大丈夫です。
トゲっち 俺も行きます。
マスター え……ええ⁈
 
 3人は入り口のドアを開けて(ムネオは運ばれて)外に出ていく。
 
ジバさん 大丈夫、やと思います。
マスター いやいやいや。そんなこと言っても。え? ちょっと?
ジバさん 仙人見てるから。ホンマにやばかったら救急車呼んでますよ。
マスター 救急車⁈ ちょっと何が(あったの)。
ナベ マスター大丈夫です。そんなにやばくないですあの人、たぶん。
ジバさん ね。
 
 マスターは事態が呑み込めずおろおろしている。
 誰もそのまま喋りださず、マスターは事情を聞くにも聞けない。
 ヒメ子はスマホを出して触っている。
 
ナベ 全然赤くなかったですね。
ジバさん&ヒメ子 ……。
マスター ムネくん?
ナベ はい。
マスター 本当に、大丈夫なんだよね?
ジバさん&ナベ はい。
マスター ……わかった。 
 
 やはり誰も何も喋りださない。
 マスターが3人の様子を見つつ呟く。
 
マスター 店主失格だね。客にお店任して。
ジバさん いや。どうこうしてても結果変わってないですよ、たぶん。
マスター でも。
ヒメ子 すいません、ジンジャーエールってあります?
マスター あ。あるよ。ちょっとだけ待ってね。
ジバさん あ、私もいいですか? ナベも飲みよ。
ナベ いや僕は……そうっすね。すみません、お願いします。
マスター はい。
 
 マスターはキッチン側に向かう。
 
ジバさん ヒメ子。
ヒメ子 何。
ジバさ 思ったんやけど、ヒメ子の作戦も結局そうじゃない?
ヒメ子 ……。
ジバさん 私が何かしたくらいで結果変わってないもん。
ヒメ子 トゲっち副会長になった。
ジバさん それは、だって別に何も仕組んでなかったやん。
ヒメ子 まあ。
ジバさん 何で急に言いだしたん。
ヒメ子 ……。
ジバさん まあいいか。ナベは会長からは何も連絡貰ってない?
ナベ 僕?
ジバさん うん。一番よく喋ってるでしょ。
ナベ え。
ヒメ子 やっぱ潤とナベ付き合ってたの?(ジバさんに向かって)
 
 マスターの手が止まる。3人の会話に集中して耳を傾ける。
 
ナベ ちょっと、なんでジバさんに聞くんですか。
ヒメ子 じゃあ実際どうなの?
ナベ いや、まあ、完全にクロですよ。
ヒメ子 クロ?
ナベ 付き合ってます!
ヒメ子 最初からそう言えって。
ジバさん まあまあ。わざわざ隠しとったわけやし。
ヒメ子 それがそもそも良く分からない。
ジバさん まあ別に誰も聞かなかったし。てか、それはどうでも良くて。
ナベ どうでもって。
ジバさん ウソウソ、そこまで酷くない。ちゃんとスッキリした。
ナベ ……まあ、黙っててすみません。会長も誰にも言わないし、じゃあ僕もって。
ジバさん 一人こっち住みじゃないのに知られても、やしね。
ナベ まあ、そうですよね。
 
 マスターがジンジャーエールを運んでくる。
 
マスター ごめんね。どうぞ。
ナベ すみません。
ジバさん ありがとうございます。
ヒメ子 どうも。
ジバさん 実際ここ最近はどう? 前よりは私にも連絡してくれるようになったしさ。
ナベ ……わかんないんすよ。
ジバさん 分からない?
ナベ はい。元気とは思うんです。でもネストの話は明らか避けてて。僕も、あんま触れない方がいいかなって。てか、聞けないです。
ジバさん そうなんね。
ヒメ子 潤とはけっこう喋ってるの?
ナベ そうっすね、ゲームとかよくします。
ヒメ子 住んでるの?
ナベ あ……。
ジバさん ああ。くっそー独り身やと気づかんなあ。
ナベ はい。
ヒメ子 それで引っ越ししたの?
ナベ ……微妙っすね。いや元々は本当に僕が仕事変わっただけなんですよ。けど、その話したら、一緒に住む? って話になって。まあ、僕も何か嬉しかったんです。その、単純に自分のことだけじゃなくて、あ、こっち戻ってきてくれるんだって。
ジバさん なるほどなあ。いやトゲっちがさ、会長見たって一時期言ってたのよ。しかもスーツ、まあ私は出張じゃない? って答えてたんやけど。
ナベ ちょうどこっち来て就活してた頃だと思います。
ジバさん あーね。
ナベ けど、ネストの話はやっぱゼロなんです。一緒にいても。自分も会長がどう思ってるかは昔から分かってたから、まあ向こうから話し出すまではいいかって思って。けど、やっぱり、やっぱり気持ち悪いんですよ。2人とも関わってることなのに一緒に住んでて全くその話が出ないって。
ヒメ子 なんかね、むずいよね。何でも聞けばいいもんじゃないし。
ナベ はい。
ジバさん 察してほしいこともあるし、けど人間やし。
ヒメ子 子どもなんて聞いても言ってくれないし。
ナベ 凄いっすねえ。
ヒメ子 まあその代わりに大声で泣いたり、笑顔でゲボ吐くし、後……。
 
 ヒメ子は鼻をつまむ。
 
ジバさん 面白いなあ。
ヒメ子 最初だけはな。
ジバさん はい。
ナベ そっかあ。そりゃそうっすよねえ。急に話変わるんですけど、匂いには敏感な方なんすよ僕。
ヒメ子 急に何?
ナベ あ、いやその赤ちゃんとは違うんですけど、わりと誰か体調悪い日とか、そういうの若干わかるんです。若干ですよ。
ジバさん いきなり何情報よ。
ヒメ子 またどうでもいいことを。
ジバさん アラサーになってから知ってどないすんねんな。
 
 ナベはマスターの方を少し見る。
 いつの間にかマスターはキッチンの奥の方に引っ込んでいる。
 それを見てから2人にだけ聞こえるように小声で喋る。
 
ナベ だからその、ヒメ子さん今日……。
ヒメ子 ……お前マジ?
ジバさん え。ええ!
ナベ やめましょう! ここまで! いや、でもね。だからそういうのでわかるコミュニケーションみたいなのもあるのか……いや、ちょい待ってください、僕何言ってるんでしょう。やばいっすね、わけわからんくなってきた。すみません!
ジバさん 落ち着き。
ナベ はい。
 
 ナベはジンジャーエールを多めに飲む。
 
ナベ まあ、一番よくわかるのは、そりゃ普段から一緒に住んでる人ですよ。
ジバさん 続けるんかい!
ナベ すみません!
 
 ヒメ子は軽く鼻で笑う。
 
ナベ ヒメ子さんすみません。
ヒメ子 悔しいけど笑ってしまった。
ジバさん 笑えた?
ヒメ子 うん。ナベさ、それでもあんただけ先来たってことは、聞きたかったの? アタシらに。
ナベ あ……。はい……実は、そうです。いや途中までは僕も来てくれるかなって思ってたんですけど、やっぱ来ないし。
ヒメ子 よくわからん話題ばっか出てくるしな。
ナベ まあ、何ていうかどこで言い出せばいいのかは分からなかったです。
ヒメ子 ちゃんと人頼れるようになってるじゃん。
ナベ いや……全然。結局こんななるまで黙ってたわけですし。
ジバさん ごめんな、私もけっこうノリで盛り上がってしまうから。ちゃんと喋りたいこともあるよな。
ナベ あ、いやそれは自分もなんで、すみません。
 
 ドアが開いて仙人、ムネオが戻ってくる。ムネオは歩いて、椅子を畳んで運んでくる。
 
仙人 自分で自分に入れたのはお前ぐらいだろうな。
ムネオ もうそれぐらいで勘弁してくれよ。
仙人 いやいや今日は折られよう。ほら普段もお前は筋肉は傷ついてもっと強くなるとか言ってたじゃん。ヒメ子、こいつ自分に(入れてたぞ)。
ムネオ それとこれとは違うって。
仙人 言い訳不要! 
マスター ムネくん、もう大丈夫なの?
ムネオ はい。本当すみませんでした。気をつけます。
マスター いやいや、全然いいんだよ。酔っ払い上等。モノ壊したりとかしてないんだし。
ムネオ はい。
仙人 マスターすみません。
マスター こっちこそごめん、任せちゃって。
 
 ごちゃごちゃやっている後ろでトゲっち、会長の順に店に入ってくる。
 会長は傘の水を丁寧にドアの外に払ってから傘入れに立てかける。
 
ナベ あ……。
ジバさん おお。
ヒメ子 ……。
マスター いらっしゃい。よく来たね。
会長 皆さん……お久しぶりです。

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