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男4人が話す、2010年代の音楽について(オレの5枚編)


お疲れさまです、くさのです

前編では4人について話してます。おまえら誰やねん?って思う人は、ぜひこちらから先に読んでみてください。

で、今回の記事は、本題の5枚×4人で20枚分の話です。

前編でも話しましたが、この日4人で3時間20分話してます、3時間20分です。前編の話は30分ほどです。残り2時間50分の熱量を、あれこれ削ぎ落としつつ、ギューッと合わせました。

あと、ここで話題に上がったアルバムや曲に関しては、ほぼすべてリンク先を貼りました(主にSpotifyです)

ちなみに言いますが、ほぼほぼ有名作に固まったと言えます、海外8割で、日本2割くらいの比率です。僕個人で日本の5枚を選びましたが、それは(ry

変にインディぶったり、メジャーぶったりもせず、各々が見ている視野と評価軸で選んでいます。当然、ここにあげるには・・・と頭を悩ませたものもありますね、その一端は記事終盤でドヴァ・・・と並んでみます。この辺の話も、今後4人で話す時のタネになりそうです。

今回の記事、文字数でいうと1万字をゆうに超えてます。
スマホでの閲覧はまったくもってオススメしません・・・!それでもスマホで読む方は、気合と時間を十分に用意してください

ではお楽しみください。

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僕らが選ぶ5枚、そして20枚

草野 では早速本題にいきましょう。「2010年代は、個人的にどうでしたか?」という話をしましょう。ようやく終わりましたね・・・(笑)つぎは「2010年代、ぼくが思う5枚」を話してほしいです。これはみんなそれぞれに尺度が有ると思うし、その説明も加えながらやってくれると嬉しいです。じゃあノイ村くんからよろしくです

ノイ村の5枚

ノイ村 僕からですねー。5枚を選んだんですけど、まずは殿堂入りを選ばせてください。

ゴリ マジで?殿堂入りなんてあるの(笑)

草野 さて、カニエ・ウェストのどのアルバムですかね?(笑)

ノイ村 えーーー・・・・カニエ・ウェスト『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』ですね(笑)これは殿堂入りとは言いつつも、このアルバムどっちかっていうと『00年代の総括』という意味が強くないですか?

ゴリ ああーー!!

草野 それはそうだね、00年代の集大成的な感じね。

ノイ村ベスト
殿堂入り Kanye West『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』
・ Kanye West『Yeezus』
・ Beyonce『Lemonade』
・ tofubeats『Fantasy Club』
・ Taylor Swift『1989』
・ Skrillex『Bangarang』


ノイ村 2010年代のベストか?というと、その後に色んなアルバム出ているのを考えると、ちょっと違うでしょ?と思ったので、今回は外しました。1位からいうと、カニエ・ウェストの『Yeezus』ですね

草野 いやカニエ・ウェストで一緒やん!?

全員 (笑)

草野 まぁ、でも、そんなオレは『Yeezus』は次点で選びました。去年出した『Everything is God』と迷ったんだけども、こっちかなと思ったので。

ノイ村 2010年代のムードを、2013年に出たアルバムなのにここまで仕上げてきたのはすごいと思います。

草野 音作りに関しても、音一つ一つへの配慮もそうだし、プロデューシングやミキシングまですごく意識されたアルバムだと思う。音の立体感を強く感じるアルバムなんだよね、この作品って

ノイ村 そうですね。なんだかんだ、このアルバムのミニマルな感じになっていくんですよね。そういったプロダクションの意識というのは、2010年代終わりにとても注目されたことだと思いますが、そういった部分も含めて、時代の先をいっていた作品だと思いますよね。次に選んだのは、Beyonce『Lemonade』ですね

ゴリ それはオレの次点だね!

まっつ やっぱりかぶるものは被りますね(笑)

草野 「Formation」だよね

ノイ村 「Formation」ですね(笑)

全員 (笑)

ゴリ いやいやいや(笑)

草野 「Formationのためのアルバムじゃないか?」って素で言われたら、「う・・・うん・・・」みたいになっちゃうじゃない?(笑)だから僕は選べなかったんだよね。もちろんそれだけじゃないアルバムでもあるし、いい曲も多い、でも個人的には5枚のなかには選べなかった。ごめんなさい!

ノイ村 はは(笑)3枚目のtofubeats『Fantasy Club』ですね。

まっつ わかるーー!!(笑)

草野 はいはいはいはい

ゴリ オレも選んでるわ!

ノイ村 ぼくがトップバッターで良かったかもしれないですね、4人の平均的なところを捉えてるし(笑)次に4枚目です。Taylor Swift『1989』です

草野 そっちかー『Red』じゃないんだね

ノイ村 メディアの評価を見てると、『Red』が多いですよね。

まっつ 僕もそっちかなと思いました。

ノイ村 いまの彼女の動きをみていると、『1989』以降が基準になっているように見えるので、こっちを選びましたね。最後に、これはちょっと意外なチョイスかもしれないですが、Skrillexの『Bangarang』ですね。『Bangarang』はEDMシーンの基準を作ったと思います。

草野 おおー・・・めっちゃ分かる、そりゃ選ぶよねって感じ。

ゴリ うん、オレでも分かるわ。

ノイ村 基準みたいなのをあげるなら、「シーンの基準になった作品」という見方ですね。ポップス全体に与えた影響としては『1989』は一つの基準を作ったと思います。tofubeats『Fantasy Club』を選んだのは、当時2017年のムードを一つにまとめていたり、「ポスト・トゥルース」の時代をここまで鮮やかに示した作品も、海外を見てもほとんど無いと思ったからですね。

ゴリ そう。それは、ほんとそう

草野 ほんとそうって(笑)1番手ということもあり、批判1つも無しです。

ゴリ これは批判が出ないですよ

<補足>

この後、ノイ村くんはこのときの4人対談に影響をうけ、記事をいくつか公開しました。2017年の"Calvin Harrisサマソニ事件"事件について、そして今回自分が選んだ5枚について、詳しく語ったディスクガイド的な記事です。こちらもどうぞ


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ゴリの5枚

ゴリのベスト
・tofubeats『Fantasy Club』
・D'Angelo『Black Messiah』
・中村佳穂『AINOU』
・折坂悠太『平成』
・Official髭男dism『Traveller』


ゴリ 順位は決めてないけども、これは1位だろうということで先に。tofubeatsの『Fantasy Club』2010年代を語る上でこの作品をはずすわけにはいかないだろうということもあります。

ノイ村 そうですよね。

ゴリ 次に選ぶのは、D'Angeloの『Black Messiah』です。あとはすべて日本人です。中村佳穂の『AINOU』折坂悠太の『平成』、最後はちょっと意外かもしれないけど、Official髭男dismの『Traveller』

草野 ヒゲダンをチョイスするあ たりに、ゴリさんのポップス大好き気質がにじみ出てますよね(笑)

ゴリ ちょっとずつ説明すると、ディアンジェロの作品のあとに、この作品やJ Dillaのビートにみんな注目して、このビート感を解明しよう!というムードになったと感じたし、2010年代はビートの10年だったとも感じたのよ。

草野 間違いないね。

ゴリ それは再注目の部分もあったけども、間違いなく注目されたり、流行ったと思うのよ。この後にMoonchildのようなバンドが出てきてきたわけのも含めて、このアルバムは先駆けとなったんだなと思うし、発売されなかったら、この流れは生まれなかっただろうと思う。

ノイ村 なるほどです

ゴリ 中村さんについては、ずっと見ていたというのが大きい。大阪のインディでこんだけできるひとがいるのか!という驚きと、何度も生でこの才能を見れたということが混ざってるね。この10年でいろんな場所でいろんなライブを見てきたけども、こんなにすごい人はいないよ。

草野 この方の場合、作品というよりは、ライブパフォーマンスで選びたいよね!

ゴリ そうそうそう(笑)まあ『AINOU』は一番彼女らしさがあるんだよ。自由に即興的につくりあげた部分もあれば、ビートをしっかり作り込んだ部分もあると。レミ街のかたが関わってるんだっけ?

草野 レミ街の荒木さんがライブでサポートメンバーとして参加していて、楽曲製作にも関わってるという。

ゴリ そうね。今後すごいものを作ってくれそう、という期待を込めて、ここであげました。

ゴリ 折坂さんは、まずこのスタイルがいま出てきたことの衝撃ね。

草野 歌っているのか、ラップのフロウをしているのか、語っているのか、ちょっとわかんなくなっちゃうやつね

ゴリ この方ね、こういっちゃなんだけども、地味ではあるのよ(笑)草野さんの言ったことがピンとこない方も多いだろうしね。やっていることは古典的で、浪曲にも通じるものがあるスタイルで、それがいまの音楽の質感になって、2020年を迎える手前でこういう形で出てきたことが本当にすごいんですよ。

ゴリ 最後にofficial髭男dism『Traveler』は、フェミニズムな価値観に非常に寄せてきたアルバムだと思うんです。藤原さんが書かれる歌詞に結構繊細な部分があって、「誰も傷つかない」ということがメジャーなポップスの前提にあるなら、彼らの言葉や音楽が広く受けているのを見ると、オレの中で2010年代におけるJ-POP最高の1枚だと思うの。

草野 ・・・言ったねぇ!

ゴリ でも、草野さんがたまに話している「J-POP解体論」みたいなのも、とても頷けるんだよね(笑)

草野 そもそも音楽の言葉じゃなくて、ビジネスワードとして生まれたのが「J-POP」という言葉だったわけですよ。最初の10年である1990年代はまだ通用していたけども、00年代を通過後にロックが、2010年代にはヒップホップが、それぞれの支持層を持ち、一つのシーンとなって目に見えるようになった。

ゴリ はいはい。

草野 加えて、J-POPという枠からはアイドルがドンドン抜きん出た存在になって、アイドル単体でフェスも組めるようになった。そこまでいった時に、果たして「J-POP」とは、どこの誰らを差すのか分からなくなってしまったわけで、もはや意味ってあるんですか?って話ね。初めて僕を知る人もいると思うので、なんのこっちゃと思うので説明しておきます!

ゴリ そうそう、それそれ(笑)あえてJ-POPをやろうとしているように感じさせてくれたわけでさ、すごい1枚だと思ったよ。

草野 いやもうさ、ほんと、音楽を通じた大衆幻想とか国民総洗脳じみたものは、もうやめよう?(笑)もはや個人個人の繋がりを一つずつ積み重ねる時代なんだって・・・・

ノイ村 どうしたどうした急に

ゴリ その話はものすごい議論になるからやめよう?

草野 いつかしますよ、今後いつかは・・・(笑)

ゴリ 最後にtofubeatsの『Fantasy Club』です。ノイ村くんが話してくれたこととかぶるけども、ポスト・トゥルースの時代に、分からなくなってしまった時代のなかで、「分からないよね」とはっきりと歌うことで、みんなに考えてもらおうとしているアルバムなわけで、評価すべきアルバムだと思ったんです。わかりやすい二項対立ばかりが表面化してきたなかで、わりとグレーな部分があることを表明した素晴らしいアルバムだと思ってる。僕の中では2010年代の1位のアルバムだと思います。

ノイ村 「なにがリアル なにがリアルじゃないか」ってね

ゴリ そうそうそう(笑)

草野 「何かあるようで何も無いな」ってね。オレ、ゴリさんは関西インディーのゴリッゴリなものを選ぶかと思ってました。

まっつ そうそう!

ゴリ 確かに「いま聴くべき関西インディー」っていうのは作ったけども、今回じゃないもんね。

草野 まぁ、いつか今度行われるであろうときに、やれればいいかなと思います。じゃあまっつ、お願いします。

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まっつの5枚

まっつ はい、えーと、もう僕は個人的な5枚を選んできました。

草野 ああ・・・なるほど、UVERworldかな?(まっつはUVERworldのファンクラブに入っている)

まっつ ちょっと待ってください、先取りほんとによくない!

ゴリ ははは(笑)

まっつ さっきも言ったんですけど、この10年でメディアとか、あるいはアーキテクチャとかシステムとかによって聴く量がどんどん増えていったので、その聴く量が増えていった中で、「たぶんそれ以前の自分だったらあまり引っかからなかっただろうな」とか「ピンとこなかっただろうな」と思うものも好きになっていったんですよね。そういうなかで、すごい思い出深かった5枚っていうのを選んできました。

草野 待って待って、これはUVERworldは出ないんじゃね?UVERworld出ない流れじゃない?

ノイ村 うるさい(笑)

ゴリ うるせえ(笑)じゃあ5枚、どうぞ!

まっつベスト
・Kanye West『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』。
・Los Campesinos!の『Hello Sadness』。
・amazarashiの『世界収束二一一六』。
・Base Ball Bearの『二十九歳』
・UVERworldの『UNSER』


草野 ・・・えーーっと?5枚目が・・・

まっつ UVERworldの『UNSER』です。それが5枚目ですよ!(笑)

ノイ村 数あるUVERの中でも『UNSER』。最新ですよね?

まっつ 去年の末に出たアルバムですね。

草野 なるほど、数あるUVERの中でなぜそのアルバムかってのはあるね。

まっつ まあそれよりもちょっと、それ以前の四枚の話もしたいので……聴いた時系列として一番最初に刺さったのがLos Campesinos!なんです。2012年かな、2012か2011だったんですけど。それがまさしくMUSICAのレヴューに載ってたんですよ。

ゴリ へえー。

まっつ で、2010年代の前半ってMUSICAのディスクレヴューの洋楽でも割とインディーロックだとか、あるいはローファイなものっていうのがすごい盛り上がってるような時期で……Bombay Bicycle Clubとか。

草野 Cloud Nothingsとか。

まっつ Girlsとかもいるし。音がペナペナなローファイで、なんなら宅録でみたいなのがMUSICAのレヴューでも結構盛り上がってて。それも結構Youtubeで聴いてみたんです。当時はUVERworldとかONE OK ROCKとかの邦楽ロックばっかり聴いてたような人間なので、ドンシャリな音、奥行きとかなくてみんな前面に出てる!みたいな音ばっか聴いてたんで、そのペナペナ感ってのにどうしてもついていけなかったんです。なんかきっかけ、というか何がピンと来たのかっていうのがいまいち自分でもそこまで説明できないんですけど。

草野 説明して~(笑)

まっつ 「Hello Sadness」っていうタイトル曲と「By Your Hand」って1曲目に入っている曲がミュージックビデオであったので、それ聴いた時に、映像だけ見てるとそれまで聴いてきたペナペナ系のバンドとあんまり映像の作りとか質感とか全然変わんないけど、ほかのバンドにはないキラキラ感とかはそれまで聴いたことない感じで。これだったら好きになれるなって、直感的に思ったんですよ。

まっつ これまで自分がガッツリ聴いてた洋楽って、たぶん父から教えて貰ったLed ZeppelinとがQueenとかの70年代ハードロックだったんですけど、自分が今まで聴いたことのない音楽の扉で、かつ好きなものが洋楽で開いたってことがすごく嬉しかったんですね。あとはもうSlipknotとかホントゴリゴリ重ためのバンドしかなかったので。

ゴリ うんうんうんうん。

まっつ つぎは、Base Ball Bear『二十九歳』。前作の『新呼吸』からそんな感じだったんですけど、割とストーリー仕立てというか、明確なコンセプトを立ててアルバムを作るようにこの頃はなっていて。『二十九歳』っての本当に一本の映画という風になってるんです。

草野 「ファンファーレがきこえる」とか。

まっつ そうそうそうです。「ファンファーレがきこえる」も一周聴いたあとにもう一回聴くと陰りが見えるんですよ。「そっち行っちゃダメだ!」みたいな感じがすごくある。で、だんだん「ああ、そっちの方向に進んでしまうんだ」って。なんか闇堕ちと救済が同時に来るような

ゴリ なるほどね(笑)

草野 実際そういうアルバムなんだよ、『二十九歳』って。

まっつ なんか『ミッドサマー』みたいなアルバムなんですよ映画で言うと。

ゴリ やべえ、『ミッドサマー』(笑)

ノイ村 あれは僕、ハッピーエンドだと思ってるんで。

まっつ 僕もハッピーエンドだとは思ってるんですけど(笑)しかもこの頃アルバムのプロモーションの一環ってわけでもないでしょうけど、小出さんが考察記事とか素人のブログでもどんどんどんどん引っ張ってフックアップしてるような時期だったし、僕も実際、前身のアメーバブログで一番最初はブログ書いてたんですけど、そこにレビュー載っけたら拾ってくれたりとかもしたので。SNSの動きっていうのも含めてすごい思い出深い。アルバムのストーリー性とSNSの動き、それこそアーキテクチャとの関わりっていう面でわりと思い出深いアルバムだなっていうのがありますね、これは。

草野 なるほどっす。ありがとうございます。

まっつ 次はKanye West『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』、たぶん2014年の終わりとか2015年ぐらいに初めてちゃんと聴いたのかな?って感じなんですけど。

草野 あ、リアルタイムじゃねえのか、これ聴いたころ。

まっつ じゃないです。それこそTwitterや音楽だいすきクラブとかでクラークさんが話題にしてたようなところがあって。ちゃんとアルバム通して聴いてみよって聴いてみたら……あのー聴いてみて、前半5曲が僕はすごい好きなんですよ。

ゴリ うん。

まっつ めっちゃなんか無双状態だー!って感じがするじゃないですか。前半5曲がとにかくカッコいいなと思って。これもアーキテクチャとの関わりで言うと、WhoSampledってアプリが実はあるんですよね。サンプリング元とかを曲とか選択すると……

草野 すぐ出てくるんだよね。

まっつ それで見てみて、例えば「Power」って曲を調べてみると「え、こんな1曲の中にサンプリングしてるもんなんだ」っていうのがすごい新鮮な驚きだったんですよ。同じ1曲のフレーズをループさせるっていう固定概念があったんですけど、それを見事にぶっ壊してくれたのがそのアルバムで。

ノイ村 Kanyeのサンプリングはほぼコラージュですからね。

まっつ 色んなものが継ぎはぎでできてて「これ超かっけー!」ってなったのがKanyeだったんですよ。その驚きも含めて印象深いかなって感じがしますね。次はamazarashiいきましょうかね。amazarashiの『世界収束二一一六』はとにかくもう「タクシードライバー」って1曲目が超好きなんですよ。

草野 最高だね。

ゴリ うん。

まっつ 別にどこのメディアで明言してるってわけでもないですけど、それ以前のアルバムやそれ以後のアルバムと比べても、割と韻がかっちりしてるなって印象がすごいあったんですよ。脚韻っていうか、ちゃんと同じ音で小節の最後を揃えるってことを色んな曲で合わせてる感じがすごいしたんです。amazarashiがやってきたフォーマットに、それまでなかったものを試そうとしてる感じっていうのはなんとなくあって。

ゴリ うん。

まっつ すごい面白い取り組みをしてると同時にやっぱこの曲のメッセージとかエグいな~超いいな~とか思いながら聴いてたっていうのがありますね。それまでKanyeとか聴いてて、少しずつヒップホップの耳に慣らした上で聴くと、「なんか韻かっちりしてるな」って思ったっていうか。その通過した耳で気づいたことっていうのが、結構『世界収束二一一六』にあったなっていう感じなんです

草野 はい。なるほどです。

まっつ で、次で最後ですね(笑)

草野 もう笑うわ(笑)お前も笑ってるじゃねぇか!(笑)

まっつ これまでの彼らの四枚とか、その他にも僕がラジオなり音楽雑誌なりストリーミングサービスなりで、それなりに色々な音楽を聴いた上で『UNSER』聴くとやっと腹落ちするっていうか。

草野 ・・・え?理解するのにステップが必要ってこと!?それってわかんねえじゃん!?初見殺しじゃん(笑)

ゴリ (笑)

まっつ 僕、UVERworldのファンクラブに入ってるんで、ファンクラブに入ってる人とも話をすることがちょいちょいあるんですけど、『UNSER』ってやっぱそれ以前のアルバムと比べても、割と賛否がパキっと分かれるんですよ。

草野 そうなの?

まっつ 僕の周りだけかもしれないですけどね。で、僕もやっぱりこれまでのアルバムと明確に音作りの方から違うなって感じがしていて。それまでのアルバムにはなかったものとして、それまでメンバーだけで作詞作曲からアレンジまでひと通りやっちゃうようなことが多かったんですけど、今回のアルバムで初めて外部の人を入れてるんですよ、アレンジに。

ゴリ うんうん。

まっつ 何曲かでそういう北米のアレンジャーの方が編曲に入って、割とサウンドが刷新されてるなって感じもしました。K-POPって、言ってしまえば北米のEDMとかを韓国でウケるように翻案したものじゃないですか。そういう翻案のプロがガッツリ組むと、こんなにUVERworldの音楽も変わるんだなと思って。『UNSER』では、AKUYA∞自身がインタヴューでちょいちょい言ってるんですけど、Post MaloneとかThe Chainsmokersの音作りってのを参考にしましたっていう話をしてるんです。

草野 へぇーー!そうなのか。

まっつ 「今、自分の耳がそうなのに、相変わらずなロックサウンドやってちゃ、意味ないだろと思ってそうした」っていう話もしていて。だから明確にサウンドのモードが変わったんだってことを告げているんですよ。洋楽のメインストリームの音楽っていうのを通過した耳でないと、たぶん乗っかれない人がわりとガッツリいるな・・・っていうのをファン同士のやり取りからもすごく感じてたんですよ。

ゴリ とりあえずわかったのは、まっつくんが洋楽を聴き始めて新しい味がわかったところでUVERworldを聴くとやっぱりそのその良さっていうものも分かるし、本人たちも自覚してやってるのかね?

まっつ たぶん明確だと思いますね。

ノイ村 今の話だと、現代の音作りを完全に意識して作り上げているってことですよね。

まっつ そうですね。「これまでのいわゆるロックバンド然とした曲に関してはもうストレート過ぎて、それがシングルになったりするんですけど、あまりに今までの僕ららし過ぎて。タイアップだったから出したけどシングルにしたくなかったんですよね」みたいな話もしたりしていて。

草野 ほへーー!そうなのか!

まっつ それほどまでに、モードがバンドミュージックってところから離れてるんだな、っていうのは感じますね。僕自身としても「あ、これはわりとはっきり賛否両論別れるし、なんかアルバムにもオチがねえな」とか思いながら聴いてたんですけど。ヒップホップはじめEDMもストリーミングサービスで聴いてきたからこそ、彼らに良くも悪くもちゃんと食らいつくことができたっていうのが嬉しいんですよね。

ゴリ なるほど。

ノイ村 そういう感情でのベストってことですよね。音楽シーンにとってと言うよりかは、まっつさんにとっての2010年代。

まっつ そうですね。

ゴリ でも、僕は思うんだけど、まっつ君がたぶん今までそういう道のりを経ないとわからなかったっていうアルバムじゃないんかな?UVERworldは。

まっつ そうですね。これはたぶん今までの「邦楽ロック大好き!」みたいな耳だけで聴いてたら「なんじゃこりゃ」ってなってたと思います。

草野 そうだね。CDをそのまま外にブン!って投げて「お前はもう嫌い!」で終わり(笑)

まっつ そうです。同時に編曲だけしか外部の人は関わってなくて、作詞作曲はメンバーだけだったりもするんで、UVERworldっぽさもちゃんと成立してる。けど編曲でがらっと色を変えるってバランス感覚も含めて、食らい付くことができて良かったなと感じますね。

草野 リスナーがただ音源聴くのに「食らいつく」って表現する?しねえよ(笑)

ゴリ (笑)

ノイ村 ちょうど今まっつさんの話聞いて、ONE OK ROCKの新譜のことを思い出して。結構あれもファンの方からすると「遠くに行っちゃった」みたいな反応があって。

ゴリ そうね。

ノイ村 それもたぶん「食らいつく」っていうのに近いと思うんですけど。

草野 うん、試されてる。大変化作ってことよね。『OK Computer』から『Kid A』ぐらいのアレでしょ?

ゴリ 例えにRadioheadを出すのもちょっとな(笑)

ノイ村 きょうび『OK Computer』は古い(笑)

ゴリ 90年代から00年代(笑)

草野 わかったわかった、Arcade Fireの『The Suburbs』から『Reflektor』!これくらいでしょ?

ゴリ ちょっと若くなったけど(笑)

草野 まだちょっとアレかなー。グラミー賞を取ったけどまだちょっとインディ寄りすぎるな。

ノイ村 ぶっちゃけたぶんインディ寄りっすよ(笑)

草野 そうだよね。Arcade Fireだもんな。じゃあTaylor Swiftの『reputation』と『1989』!

ノイ村 性質が違うんだよな・・・(笑)

ゴリ ほんと性質はもう違うわ(笑)で、しかもそうではないし(笑)

草野 性質が違うんだよなっていうのがね、また「え?何がどう違うんですかね?」って振り切るとまた面白いと思うんだけど、それはまた違う回で……あ、 最後に僕ですか。

ゴリ どうぞ!

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草野の5枚

草野 13枚選んだんですよ、8枚は海外、5枚は日本で選んだんです。で、海外5枚、日本5枚のベストと、次点で海外3枚を選んだんだけども・・・ここでは海外5枚を先に言いますね。

ノイ村 はい

草野のベスト
・Skrillex『Scary Monsters and Nice Sprites EP』
・Frank Ocean『Channel Orange』
・Bon Iver『22,A Million』
・Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』
・James Blake『The Color In Anything』


草野 リリース順にいきます。まずは、Skrillexの『Scary Monsters and Nice Sprites EP』ですね。2010年の作品で、グラミー賞を受賞したやつ。

ノイ村 おお、草野さんはそっちなんですね。

草野 そうね。まず僕の個人的な経験として、2010年代前半はEDMが凄かった!というのがこびりついてるんだよね。EDMをブレイクさせたのは、David Guetta、Calvin Harris、そして彼、加えてDiploといった存在が大きいと思うけども、その中でも、SkrillexはEDMがロックフェスばりにどデカイ会場で、いわゆるダブステップやブロステップで踊るという流れを作ったし、ベースをとにかくデカく鳴らして人を踊らせるという部分を作ったのは、EDMの、特に彼の功績だと言ってもいいと思う。あ、『Bangarang』も好きだよもちろん

ノイ村 『Bangarang』のほうがビートが多岐に渡ってるんですよね。

草野 そうそう確かに。『Scary Monsters and Nice Sprites』はあのワブルベースやサブベースの鳴らし方よね。ドラムロールのビルド&ドロップも踏まえると、2010年代のポップスにどんだけデカイ影響を与えたか・・・。その後に、Swedish House MafiaとかAviciiとかもいたけども、彼を説明すれば、EDMについては半分ちかく語れるような部分があるだろうしね。大げさに言ってしまうとね、本当は売れてる方々一人ひとりぜんぜん違うよ?

まっつ なるほどね。

草野 2番目に、彼を誰も選ばなかったのが僕は謎なんだけど、Frank Oceanです。僕が選んだのは『Channel Orange』ですね

ゴリ そっちかぁーー!(笑)

草野 00年代に生まれた、ベッドルーム系のオルタナティブR&Bのリーダーといえば、彼とStarboyさんで、彼がそういった触れ込みで大ブレイクを果たした作品でもあるし、彼ら2人のフォロワーが本当に多かったという意味もあります。

ノイ村 Starboyさんって(笑)The Weekndですよね

草野 ははは(笑)まぁFrank Oceanの『Channel Orange』がベッドルーム系やアンビエント系なR&Bなのか?というと厳密にはそうは言えない部分があると思うしね。だってこの作品、ベッドルームじゃなくてスタジオで作ってるわけだし?

ノイ村 厳密さにいうと『Nostalgia/ultra』でしょうね。

草野 そうそう。でも評価をもっと詳らかにすると、あのサウンドスケープだけじゃなくて、彼の歌声やソングライティングにプロダクションも含めて、影響度も人気も計り知れない部分が大きいと思うので、こっちのアルバムをあげます。ゴリさんはビートの時代だ!ってさっき言っていて、僕もそのとおりだと思うんだけども、そういうなかで、人の歌声やボーカルスタイルでまだまだここまで人を惹きつけられることを証明した人物だと思うんだよ。

ゴリ そうだよね。

草野 3人なら御存知だろうと思うけども、元々シルキーな歌声の彼が、かなり思いっきりエフェクターを自分の声にかけて、変調した歌声と素の歌声を織り交ぜながら、ポップスとして大きな評価を受けたわけですよ。その前にカニエ・ウェストがやってるじゃん!っていうのはたしかにそうなんだけども、カニエの場合は自分の声にコンプレックスがあって、その声を面白く響かせられないか?と考えたうえで使ったという意味合いが強い、言っちゃえば飛び道具だよね。

まっつ はいはい

草野 でもフランクの場合、あえてそれをメインウェポンにしてきた、そして声が変調するということだけで、多くの人を惹き付けることを証明したわけよ。このスタイルは、ほぼ同タイミングで同じようなボーカルスタイルをとったBon iverのJustin VeronやJames Blakeにも大きな影響を与えるわけでさ。後々にはPrizmizerというエフェクターが生まれるようになったわけでさ。

ノイ村 そのとおりですね。

草野 で、この流れならもちろん次に選ぶのはBon Iverです。セルフタイトルのアルバムもいいんだけども、ここでは『22,A Million』を選びます

まっつ 最高だね

草野 そう、本当に最高。それまでの作品だったら、ポストロック系サウンド+シンガー・ソングライターみたいな括りを持ち出されて、それ以前にも何人か近しいシンガーがいたかもしれないよね、例えばビョークだったり、Radioheadみたいなところ。でもこの作品だと、カニエ・ウェストととのコラボがきっかけになったのかわからないけども、ビートアプローチに力を入れて、かなりゴツゴツしたビートを自分のサウンドに入れたんだよね。


草野 厳密にはヒップホップ的なビートアプローチでもなんでもないんだけども、それが彼のサウンドに大きな変化を与えて、そういったなかでも彼はきれいなファルセットと、デジタルクワイアを披露するんだよね。

ノイ村 飛躍がとんでもなかったんですよね。

草野 ほんとそうね。加えて選びたい理由がもう一つあって、Bon Iverのライブに2度行ったことがあるんだけども。2度ともアルバムのサウンドに忠実に、加えて少しアップデートされたサウンドとなって披露してくれたんだよ。

ゴリ あの音を忠実に披露したんだ?

草野 ほぼ原曲に忠実で、しかもバンド6人で披露したんだよね。いやぁ、ライブの彼らはとんでもなかった。「これが世界レベルか・・・」とか本当に思ったよ、勝ち目ねぇわ!ってね。ボーカルエフェクターもその場で自分がスイッチングして変えていくし、バンドメンバーはほぼみんなポストロック系バンドで腕を磨いていた方々だから、演奏はむちゃくちゃ上手い。もう一度言うけども、とんでもなかった(笑)

まっつ いやぁーーそれは凄そうだ・・・

草野 で、この流れとはまた違うものを選ぶんだけども、Kendrick Lamarの『To Pimp A Butterfly』を選びます

ゴリ まぁね、そうだよね

草野 この4人で、カニエ・ウェストを選んだだけで、ヒップホップがほとんど選ばれないのが不思議でさ、だれもチャンス・ザ・ラッパーを選ばないのか?っていうね(笑)

まっつ ぼくはOdd Future周辺をあげようか迷ったんですよ

ノイ村 ぼくはBeyonceを選んだ時に迷いましたね

草野 ああ、なるほどなるほどわかるよわかる・・・。で、Kendrick Lamarの『To Pimp A Butterfly』を選んだ理由としては・・・1曲でも抜けたらすごくバランスが悪くなるように感じることなんだよね。アルバムなどのレビューで、オレ自身がいちばん疑いたくなる枕詞「このアルバムに捨て曲なし!」っていう表現なんだけどもさ

ゴリ ああ、あるね

草野 「いや嘘でしょ?駄曲くらいあるでしょ?」って思うし、実際あんまりおもしろくない曲ってあると思うんだけども。でも、このアルバムに関しては、「1曲でも抜けたらしっくりこなくなる」ように感じるんだよね。インタルードもそうだし、先行カットされた「i」にしたって、シングルとアルバムではヴァージョンが違ってて、冒頭部に扇動っぽい語りが入ってるんだけども、無駄に思えないのよね。

ゴリ うんうん

草野 BML運動にも関わったアルバムだと思うし、ロバクラやサンダーキャットらのジャズメンバーが関わったりして、まさに2010年代のアメリカ・ブラックミュージックを凝縮したようなアルバムだと思う。ド定番だと思うんだよ、正直。でも、ド定番がなぜド定番だと言われるか?その熱量ってなにか?という部分に気づくと、これを外すわけにはいかないと思うしね。2010年代で1枚を選べと言われたら、オレならこれを選ぶかなと。

草野 あとちょっと横道にソレる話だけども、EDMとジャズを同時に楽しもうとしていたこの2010年代の洋楽シーンってとんでもないなって思うのよ(笑)

まっつ それなーー!

草野 さっきゴリさんやまっつが言ってたことの復唱になるけども、ビートの時代とはよく言ったもので、かたや4つ打ちビートとワブルベースに歪んだシンセサイザーのEDM、かたやJ Dillaに影響をうけたジャズメンたちの「ヨレるビート」感覚とスーパーなジャズサウンドが、洋楽リスナーからするとどっちも大きなトピックとしてあったわけで。このどっちも楽しめる状況だったというのは、非常に幸福だったと思うし、いい意味でわけわからん時代だったわけじゃない?

ゴリ そーーーう!ほんとそう思う。こんだけいろんなビートやグルーヴを楽しめるってのはないよね、ビートの時代だと思う。

ノイ村 なんの変哲もなく、みんなフラット聴いてますからね(笑)

草野 例えば、これが80年代とか90年代だったらありえたかというと

ゴリ ありえないだろうね。難しかったんじゃないかなと

草野 どっちかに偏ってしまうと思うんだよね。洋楽メディアの不況だ!とかCD売上が全く無くて外タレが呼べない!とか悲しいニュースが前面に出ていたけども、物凄くわかりやすいトピックがずーーーっと数年に渡って影響力を持ち続けて独占していくということがなかったし、色々な音楽が聴けるというアーキテクチャーの問題もあったから、変な偏見をもつことなく次々聴ける時代だったし、勉強がしやすい状況だったのかなと。そんなことを何となく思うのよ。これであまりツカみが良くないなら仕方ないけども、無論どちらも物凄く良い音楽だしね。

ノイ村 ロバクラのライブ、良いですもんね。

草野 サマソニに来てた時、オレとノイくんで見にいったもんね。マリンステージなのにめちゃくちゃ人が少なくて・・・そのあとワーワーと外野から文句言われたけども!(笑)

ゴリ それ言ったら、オレも大阪でD'Angelo見た時も、物凄く少なかったんだよな・・・

草野 ちょっと遅れそうになって急いで行ったんだけども、もうすっごい人少なくて、アリーナ最前部分の日陰になってる部分だけで、見に来た人がみんな入っちゃうくらいでさ・・・まぁ前日にビーチステージがキャンセルになってたし、そっちがあったら、もっと状況が変わっていたかもしれないけど。グラミー賞を取ったり、演奏もバッチバチにうまいジャズの方々が、そういう状況でも2年に1回レベルで東京や大阪でライブしてくれるというのは本当に素晴らしいし、そういうリスナーを増やしたという意味で、やっぱり柳樂光隆さんはすごいお方なんだなと思うし、ありがたいし、感謝ですよほんと

ゴリ ほんとそうだね

ノイ村 もしもいらっしゃらなかったら、こういう風にならなかったかもしれないしね。

草野 で、次にいきたいところなんだけども、ここまでイギリスの人を挙げないのもおかしいなと気がついたので、流れに乗って、James Blakeを選ぶ。1stではなく、3rdアルバムの『The Color In Anything』

ゴリ あ、そっちなの?!

草野 ファーストじゃないんだよね。さっきまで名前をあげていた、Bon IverのJustin Vernonや、Frank Oceanとのコラボ曲が入っていて、プロデューサーにリック・ルービンが入っているのよ。そういう方々と一緒に作業をしたおかげか、それまでのアルバムとは違って、音が物凄く整理されていて、何を聴かせたいかがわかりやすいし、その意味で一番ポップな感じがするんだよね。変に陰鬱なムードが出てないのもミソかなと(笑)

まっつ ふーん、なるほどです

ノイ村 個人的にもそれが一番好きです。

草野 そういう部分が出てきたおかげか、彼の歌声だけじゃなく、音の置き方とか、メロディラインの素晴らしさがよりダイレクトに伝わるようになったように感じるのよ。ファーストは特にだけども、とてもゴチャゴチャしていて、それが好かれる要因にもなっていたとは思うんだけども、ダブステップやエレクトロニカのサウンドでシンガー・ソングライター然とした音楽をやっているという評価がされてきた彼が、ちゃんとした実になって凄いアルバムを作ったアルバムだと思う。

草野 だから、次作になった『Assume Form』であんなことになってしまったのか・・・

ゴリ ははは(笑)草野さん的にはからっきしなんだ?

草野 個人的なマインドの変化もあるだろうけども、ぜんぜん刺さらなかったし、4作も同じ質感でこられたら流石にね・・・。まぁそれはそれでね。

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総評みたいな4人の雑談


草野 まとめるような話に少しづつ移るけども、やっぱり思うのは、ロックバンドがいなかったね・・・という点でしょうか。まぁ日本と海外が混ざった部分はあるし、UVERWORLDというこの10年間でずっと日本で勝ち続けたバンドがいるのは分かるけどもね!(笑)

まっつ 僕のは、あくまで個人的な思い入れが強い5枚を選んだわけですけども(笑)そのとおりですね、はい。

ゴリ 海外という部分ではねー

ノイ村 候補としてあげるなかには何枚かはあがるんですよね。でも、そこでベスト5を選ぼうとすると、作品のパワーが足りなく感じるんですよ。

ゴリ Mitskiやコートニー・バーネットは入れてもいいかなとは思ってたけどもね

草野 前編ではこの4人がどんな人物かを話したけども、いうてRockin'onで表紙をとるようなロックバンドを好きになってきた4人が、こんだけピンと来てねぇわけですよ。まずArctic Monkeysがあがらないんだもん。

ノイ村 『AM』ですよね。候補にはあがりますよね

草野 僕も候補にはいれた、でもなぁ・・・ってね

ゴリ うーーーーーーん・・・・・違うんだよな

草野 ロックバンドだけで選ぼうとするなら、もちろん入るでしょうね。Museも入るだろうし、Radioheadも入るだろうし・・・でもこうして全部を含めると、バッチリ入りこんでいくって流れにはならないわけでさ。

ノイ村 せっかくなので名前を挙げてみましょうか。ぼくはParamoreとBring Me The Horizonはあがりますね。あとはTwenty One Pilotsとか

ゴリ Paramoreで選ぶならどっちのほう?

ノイ村 僕が選ぶならセルフタイトルの方ですね。現代の中でも、ロックバンドとしてサバイブしているのは彼らでしょうね、ヘイリーのキャラが良いというのもあると思いますが。BMTHも、こういう音楽シーンのなかでタフに戦い続けてきたバンドとしてあげるべきじゃないかと思います。じゃあ、彼らの作品のパワーがBeyonceの『Lemonade』に勝てるの?同じくらいにヤバイのか?と言われると、さすがになぁ・・・とは

まっつ Alabama Shakesの『Sound & Colors』が入らないのかーってのは思いました。

草野 ああー!確かに。彼らの3枚目があったら、もしかしたらそっちを選んだかもしれないですね。あのアルバムは曲、ボーカル、マスタリングなどの音響が素晴らしかっただけに。

まっつ Brittany Howardのソロがなぁ・・・って思ってしまったね

草野 Tame Impalaはどうだろう

ゴリ いいね。

まっつ いいですね。

草野 この感じだと、4人でロックバンドで5枚を選ぶと全員がTama Impalaを選びそうね(笑)『Currents』かな?

3人 『Currents』だね

草野 愛されてますねぇ・・・!

ノイ村 ピッチフォーク育ちとしては、The War On Drugsもあげたいですね。

草野 もちろんアルバムは『Lost in the Dream』や『A Deeper Understanding』だよね

まっつ The 1975はどうです?イギリスのバンドとして、彼らがトップランナーだったと言ってもいいでしょうし。サードは次点としてぼくは選んでました。

草野 ・・・いま言われるまで、本当にすっっっっっぽりと頭から抜けてた。サマソニでちょっと泣けるくらい良かったのに、ごめんなさい、そうですね、本当に謝罪いたします。・・・嫌な予感がするんだけども、もしも次回でロックバンドをやるとしたら、これ戦争にならない?

ノイ村 取り合いになりますね(笑)

草野 この感じだと、The 1975とTame Impalaでダダ被りして、あとの3つでどう違いを出すか・・・みたいなね

ゴリ それはさ、これまでなんとなくあった「大人の判断」で何とかできるんじゃないの?(笑)「これはあの人が選びそうだし、オレはいいか」みたいな

草野 そういう判断ってさ、選ぶチョイスが沢山あればできるんだよ。ここまでの話しの流れで考えようよ、あんまりないって話しだったじゃん!?(笑)

全員 (笑)

ノイ村 まぁそうですよね(笑)

まっつ The 1975とTama Impalaは殿堂入りにしておくとか?

草野 それならまぁ・・・確かにかぶらないように選ぶってのもできるけども、2010年代のロックアルバムの5枚って言われてるなかじゃね。Jack Whiteのソロとかなら、きっとみんな被らないし、内容も良いし、4人全員一応聴いてる・・・聴いてるよね?個人的には日本でオレだけが知ってるんじゃないの?ってくらいまったく話題になってなかったんだけども・・・

ノイ村 いやRockin'Onの中でも何度も出てきてますし、さすがにそれは言いすぎですよ(笑)

草野 それなら、Lowの『Double Nagative』とか

3人 ああぁ・・・

草野 意外とすぐに見つかってしまうという(笑)これも聴いてる人がぜんぜん見つからないやつ、まぁチャートアクションが良いやつではないけどもね

ノイ村 ピッチフォーク信者しか知らないのでは?

草野 実は、オレはそこまでピッチフォーク信者でもなく、あまり読まない派なのよ。リリースされて3ヶ月後くらいにピッチフォークをぱーっと見た時、このアルバムが8.9とかで紹介されてて「まーーーーじで!!?」って驚いたくらいだよ(笑)しかもそれまでの20年近いキャリアで作ってきたアルバムへの得点は、そこまで高いものじゃないっていうね

※Low 『Double Nagative』(実際は8.7)
https://pitchfork.com/reviews/albums/low-double-negative/


まっつ え、そうなんですか!?

草野 不思議なもんですよ。ぼくらの傾向を、一つずつ言っていくと

「ヒップホップやR&Bを聴いていた」
「EDMも含めると、トラックメイカー&ラッパーorシンガースタイルのものが好まれた」
「バンドはそこまで選ばれなかった、もっと言うと非バンド形態のポップスを好んで聴いていた」
「ぶっちゃけ、アメリカがみんな好き、イギリスはあまり好まれなかった」

かな。

ノイ村 さっきも言いましたけども、作品のパワーが、そういった作品に集まっていたと思いますね。

草野 うんうん。ここからは僕が今回選んだ指標を話したいんだけども。この10年は、ヒップホップがロックを超えて、一番聞かれる音楽ジャンルになった、と言われる10年になったわけで、これはニュースにもなって非常に驚かれた。すごくざっくりとした話しだけども、ポップスと言われるものは、それまでは「バンド編成」+「シンガー」という構図だったわけだよね、これはほぼすべてのポップスに当てはまることなんだけども

ゴリ そうね

草野 それが、1980年代にヒップホップが生まれたことで、「DJ・トラックメイカー」+「ラッパーorシンガー」という構図が生まれた、別に分けたいわけでもないけども、ざっくりとした二項がここであがってくるよね。そんで、30年近くかかって、「DJ・トラックメイカー」が生みだした音楽が、「バンド編成」で生み出す音楽よりも、支持を受けるようになった、という風に言えるわけだ。

まっつ ああ、なるほどです。

草野 で、実際のところ、ソロで活動されている方は、多くの作曲家や作詞家とともに音楽を作るようになる。シンガーであれ、ラッパーであれね

ノイ村 いわゆるコ・ライトでの作曲ですね。作詞作曲クレジットがとんでもないくらいに長くなるという(笑)

草野 そうそう。ソロだから一人で活動しているわけではなく、実際にはむちゃくちゃ多くのクリエイターが参加するわけだ。対して、バンドはどうかというと、メンバー4人や3人や5人に加えて、プロデューサーなどのスタッフ陣がちょっと口に出すだけ、というのは変わらなかったわけで。ソングライター+演奏家としてのミュージシャン、という構図がだいたいのロックバンドの構図だった。ハッキリ言うけどさ、マンパワーが全然違うように思えるよね。

まっつ バンドそれぞれで全然違うので、一概に全部そうとは言えない部分はありますけども、まぁ確かに。

草野 それでもなお、バンド4人と周りのスタッフに比べると、ソロミュージシャンと作曲家10人とかじゃさ、どう考えても後者のほうがマンパワーが高いよ。そもそも関与している人間の数が違うわけじゃん?(笑)

まっつ それは(笑)

ゴリ ソロなんだけども人数はこっちのほうが多い!ってね(笑)

草野 むかしからソロミュージシャンの音源制作に関わるとスタジオ・ミュージシャンを物凄くたくさん呼んだりするわけで、制作に関わる人数に違いがあるというのはあったにせよ、この10年でかなり極端に人数に違いが出てきたとは思う。そのへんも、ノイ村くんが言う「作品のパワー」にもつながる話しなのかなとは思う。むちゃくちゃ極端な例をあげるけども、DJ khaledの『Grateful』ってアルバムは知ってる?2枚組のアルバムでさ

ノイ村 ああ、あれは(笑)確かに全然違いますよね。曲作ってるとは思えないですけどね

草野 あれを見た時、もうたまげたよね。こんなんオールスターじゃん!!みたいな(笑)名前をあげだしたらキリがないからリンクで済ますけども、50人近い方々が集まってくるという

https://en.wikipedia.org/wiki/Grateful_(DJ_Khaled_album)
https://www.allmusic.com/album/grateful-mw0003050999/credits

まっつ 「ディージェイキャーリード!」って叫んでるだけのおっさんなのかな?とか思っちゃいますけどね(笑)

草野 ある程度ビート叩いて、コラボしてくれそうな方々に送って、「さぁ、あとはみんなよろしく頼むぜ!」っていうスタイルなんだよね。「このゆびとーまれ!!」って言って集まってくるJustin Bieber、Quavo、Chance the Rapper、Lil Wayneもそうだし、この「I'm The One」っていう曲だけでも8人くらい作曲に関わってるわけよ。聴く側のこっちとしても「はぁ!!?!!!??」って声上げるじゃん?

まっつ お子さんが生まれたから、その記念みたいなこともあって豪華なんでしたっけ?

ノイ村 そう。ジャケットもお子さんだし

草野 その勢いでこんだけのメンバーを揃えるのも凄すぎるし、ちゃんと曲に封じ込めて、アルバムに仕上げてくるわけでさ。ジョークかよって思えるけども、笑えてくるほど陽気なムードがこんだけのメンバーで生まれてると思うと、考えざるを得ないよね。

ゴリ メンバーだけ集めて、勝手にやってくれ!っていうだけだと美味しいところだけ持っていく人みたいに思えるけどね(笑)たしかにそれはそうかも

ノイ村 逆に、そういう流れがロックバンドのシーンで起きるか?というと、絶対起きないわけですしね。

草野 できないよね。でも見方を変えると、一人のトラックメイカーや一人のシンガーがいろいろな人とコラボして曲を作っていくという流れを見つつ、バンドでどういう風に曲を作るのか?という部分も鑑みると、その風景はあまり変わらないのでは?という風にも考えられるんだよね

ノイ村 規模感の問題ですしね。

草野 そうそう。規模感と関わり方がちょっと違うという部分なんだろうと思う。でも落ち着いて考えてみると、トラックメイカーやシンガーが何十人もの人と試行錯誤して作った音楽を、じゃあライブで披露しましょう!となったときには、「ギタリストやドラマーやベーシストが必要だ!」とされるわけじゃん。それを傍目から見たら、「バンド編成+シンガー」の音楽に映るわけさ。こうしてみると音楽演奏の手法と制作の違い、みたいにも捉えられるわけだけども。実際のところ、とんでもないパラダイム・シフトが起こったんだなというのは、頭に入れておくべきじゃないのかなと思う。

ノイ村 そうですね。ここまで海外の話ですけど、今回みんな日本の話が出なかったじゃないですか。いまの話し聞いてて、ソロアクトでいうと三浦大知の『球体』が挙がらなかったなとふっと思いました。

草野  日本については、また今度やりましょう。・・・まぁこんなところで良いですかね?もっと広い話をしたいけども・・・

ノイ村 了解です、次回以降でしょうね。

ゴリ 僕も話したいことが2・3個あるし、またやりましょう。

草野 今回はここでお開きで・・・ありがとうございました!



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