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【新規事業】メガベンチャーと創業スタートアップで事業を作り続けてきた人による成功する新規事業開発の話し

■ 自己紹介


はじめまして、スタートアップを経営している、ばったと申します。
(尊敬する先輩から「お前、顔ばったに似てんな」と言われて7年、僕のあらゆるソーシャル系のアカウントは「ばった」という名前で運用されています。誰がカマキリの餌や)

これまでメガベンチャーでの新規事業開発、自己資本での零細スタートアップ、資金調達を経た比較的余裕のあるスタートアップと様々な形で新規事業を作り続けてきました。
そのような経験から得た、「成功する新規事業の生み出し方」を僕なりの視点で書ければと思い、この記事を書きました。

通説だったり、書籍に書いてあるような内容と異なる部分もあると思いますし、全てが正しいわけじゃないかもしれません。
ただ、これまで多数の新規事業を作り、それなりの打率を残せてきた経験を盛り込んでいますので、そういう考え方もあるのかと楽しみつつ読んでいただけたら幸いに思います。

まずは、僕自身の新規事業作りの経験について軽く説明しておきます。

【メガベンチャーでの新規事業開発】
当時はまだメガベンチャーと呼ぶ規模じゃなかったと思いますが、7,8年前から2年ほど、急成長を続けるベンチャー企業で新規事業開発室にいました。
完全に新規で、日本にまだないビジネスモデルを戦略から具体的なプロダクト設計まで全て構築したり、謎にマグロの養殖事業を検討したりといろんな事業を調べては社長に提案という日々を送らせていただきました。(結構きつかったけど、めちゃくちゃ成長した気がすっぞ)

その後、既存事業のマーケティング責任者をしていた僕は、その事業のアセットを活かして新たなプロダクトを新規事業として生み出し、自ら事業責任者としてグロースまで一貫して行いました。
その事業はまだ正式リリースから2年程度ですが、すでに業界の中でもそれなりの知名度とシェアを獲得しています。
(あと、2年ほどですが中央大学商学部にて新規事業についての非常勤講師も行っていました。多摩キャンパスなつかしい。)

【自己資本での零細スタートアップ】
その後、7年お世話になったメガベンチャーを退職した僕は自己資本で零細スタートアップを立ち上げました。初めての起業(学生時代にまねごとはしてますが)になるので、いろいろカオスでしたが、とりあえずオフィス下の飲食店から登ってくる血気盛んなコバエと共生しつつ事業を磨き、伸ばす体験はなかなかスペシャルなものでした。(このあたりは別記事でもうちょっと詳細に書こうと思います。)

ここでは、ニッチだけどコンセプトの付与により熱烈に支持してくれるファンを得る新規事業を生み出し、最速でポテンシャルを見極めて販促フェーズに持ち込むことで創業から4ヵ月ちょっとでM&Aにより上場企業のグループ入りを果たしています。

【資金調達を経た比較的余裕のあるスタートアップ】
1社目の零細スタートアップがM&Aにより上場企業のグループ入りをしましたが、僕は変わらずその会社の経営をしつつ、同時に資金調達を行ってもう1つ会社と事業を立ち上げました。
ここでも、「コンセプト」を重視しつつ、さらにポテンシャルの大きな事業を育てようとしています。(もうちょっとでリリースなので、ゆくゆくこのプロダクトについてもいろいろと記事化していこうと思います。)

上記のようないろんなタイプの新規事業開発を経験していく中で、様々な立ち上げ方、伸ばし方があることを学びましたが、ここでは0からに近い形の新規事業開発について記載させてもらいます。



■ コンセプトを尖らせる


新規事業を作ると言っても、全く競合のいない完全に新規のサービスを作ることはほとんどないと思います。(今僕が2社目で立ち上げている事業はまさに完全新規のサービスですが、サービスの機能を拡張していけばどこかで既存事業とバッティングします)

では、すでに競合のいる業界において、どうやって勝つか?
いくつか方法があります。
①圧倒的な資金力で勝つ
②サービスのクオリティ、磨きこみで勝つ
③同じ業界で同じ提供価値(価値の方向性)だけど、コンセプトを付与することで価値をアドオンする

①②は、時間かお金がたくさん必要です。時間が必要ということは結局お金もかかってきますから、いずれにしろ、ある程度のキャッシュが求められます。
そして、時間やお金をかければできてしまうということは、キャッシュリッチな競合が出てくればすぐにリプレイスされてしまう可能性があります。
そのような企業が出てくる場合、自社の事業を買収されるというパターンもあると思いますが、それはまだいい方で、圧倒的に敗れてから吸収されるようなこともままあります。

たとえば、キャッシュレス決済が大戦争していた5年ほど前、圧倒的資本力を持つpaypay以外のプレーヤーはそれぞれ様々な工夫をしたり、既存サービスとのシナジーを利かせたり、他社との提携を進めるなど勝つためにあれこれと策を講じていました。
しかし、傍からはどう見ても、機能面でも情緒面でも差別化の難しいマーケットにおいて、資本を超える武器はありませんでした。
「100億円キャッシュバックキャンペーン」を謳う宮川大輔さんのCMを見た瞬間、個人的にはもうこの時点で終戦なんだなと感じたのを覚えています。

ちなみに、この時はオリガミペイという先行企業がありましたが、資本力で全く敵わず、一時は企業価値400億円超えと言われていましたが、後に1株1円という衝撃の価格でメルカリに買収されました。

大きなマーケットになればなるほど、大資本が参入し、キャッシュ勝負になり小さい企業は淘汰される。ビジネスにおける自然の摂理に思います。

しかし、コンセプトの付与とそれに伴う付加価値のアドオンはお金ではなく工夫次第。多額の投資を前提としない事業立ち上げであれば、このパターンで勝つのが圧倒的に成功率が高いと考えます。

そのためには、コンセプトを尖らせる必要があります。
ではどのようにして尖ったコンセプトの種を生むのか。
正解なんてありませんが、僕が多用する手法のうち、もっとも活用しやすいものを共有します。


■ 掛け算で生み出す


尖ったコンセプトを生み出す方法はもちろんいくつもあります。
僕がよく考えるのは、掛け算です。

よく、マーケティングにおいてはWHO → WHAT → HOWの順で考え、精度を高めていきますが、新規事業作りにおいては、WHERE × WHAT × HOWという3軸が重要と考えます。
WHEREとはマーケットです。自動車、医療、広告といった市場。
一方でWHATはビジネスモデルです。マッチングなのかキュレーションなのかなど。
そしてHOWはその手法や特徴です。

ソフトバンクの孫さんの書籍などで掛け算により発明を起こすような話しはよく出てきますが、掛け算の軸をこの3軸にすることで、よりハマった思考ができると思います。
急速に伸び始めている会社や事業があれば、それをこの3軸に分解してみてください。
そして、どれでもいいので、軸の中身を変えてみると、新しいビジネスの種が生まれてきます。

例えば、今イケイケのスタートアップ、キャディさんの受発注プラットフォーム。
このビジネスは、製造業 × マッチングプラットフォーム × 見積もりの最適化
という3軸に分けられます。

実はこのモデルを製造業以外でやっている会社は複数あります。
例えば、web制作領域であれば、web幹事というサービスがありますし、BtoB全般という領域だとアイミツというサービスが存在します。
製造業は製品の図面から必要な部品を出し、そこから各加工会社が見積もりを出して利益の出る原価に調整しなければいけないという特殊性ゆえに、このビジネスモデルが圧倒的な支持を得ているように思います。

では物流は?ドライバーの位置や行き先、料金などから、どの荷物をどのようにして運ぶのが最適か、時間と金額を見積もり、利益を最大化する方法があるかもしれません。
医療でも同じような仕組みで価値提供ができないか?
無形商材でも、人材業界などは同じような考え方を適応させるとどんなビジネスを生めるだろうか?

1つのモデルに対して1軸を変えてみただけでも、種になりえそうなアイディアが多数出てきます。
もちろんそれだけで成功するアイディアが生まれるわけではありません。
生まれた種を様々な角度から見定め、筋が良さそうであれば検証し、実際にサービスに落とし込むための思考を繰り返し重ねる必要があります。

しかし、軸を持った上で様々なビジネスを見たり、思考をしているだけで尖ったコンセプトにつながる種自体はいくつも見つかるはずです。
ぜひWHERE × WHAT × HOWという3軸を常に頭の中のフレームワークとして持ち、アンテナを張ってみてください。

次は種を温める方法についてです。


■ Tam, Sam, Somなんて考えるな。大事なのは「熱烈に支持してくれるN1」


新規事業に限らず、事業について検討をするなら、市場規模の調査やTam, Samへの分解などは必ずやりますよね。
しかし、「携帯市場に参入する」みたいな大きな業界に巨人が入っていく場合じゃなく、スモールでスタートする事業を作る場合、初期段階でのTam, Samはそこまで重要じゃありません。というか、それは後で何とでもなります。
こんなことを言うと、Tam,Samを考えないでビジネスやるなんて分かってない!って怒られちゃいそうですが、多くの成功するビジネスは、最初マーケットなんて考えずに作られているのが現実です。(Facebookとか、有名な例ですよね)


それよりも圧倒的に重要なのが、「これこれこれ!まさにこれが欲しかった!」という熱烈でこっちがちょっと心配になるような1人のファン。
逆に言うと、1人のめちゃくちゃ困ってる人が見つかれば、そこにはビジネスチャンスが眠っている場合が多い。(すでに既存サービスが解決方法を持っているのにその人が知らないだけのパターンはあるので要注意)

熱烈ファンはなぜそんなに重要なのか?
・既存のサービスに何か違和感を感じており、初期のユーザーになってくれる
・「これが欲しい」という具体的なイメージを持っているので、改善要望をどんどん出してくれる
・熱烈なので、SNS等でガンガン拡散してくれる
・周辺領域でも既存サービスへの違和感等を感じている場合が多く、サービスを拡張させていくときのヒントをくれる(≒次の新規事業の熱烈ファンになってくれる)

これだけでも、いかに熱烈ファンを獲得できるかが重要かが分かると思います。

よく、万人が賛同するサービスは成功しないと言いますが、実際は、どれだけ多くの人が賛同しても、1人も熱烈に支持しないのであれば成功しない、というのが実態なのではと考えています。

■ 人力でいい、大事なのは「速攻でポテンシャルを見極める(SPM)」


さて、N1からビジネスチャンスが見えてきたら、次はそのポテンシャルを見極めるフェーズです。
重要なのは、ただポテンシャルを調べることではありません。速攻で見極めることです。
そのために何をすべきか。それは「完成させない」ことに尽きます。
一番よくある失敗が、ビジネスチャンスが見えたから、実際にプロダクトを作ってみよう!というパターン。プロトタイプでいいから、ベータ版だけ、などと言いつつ、結構数カ月から下手したら1年くらいかけて、まだ上手くいきそうかも分からないものを作り始めている。

何年もかけてプロダクトを作ってから、そこにポテンシャルはないと判明した時、関わった人達の数年が全て水の泡となる。会社だけでなく、関わる個人個人にとっても悲劇です。

とはいえ、適当なものをささっと作って使ってもらっても「これじゃないんだよな」と言われて終わりです。

じゃあどうすればいいのか?
答えは「人力」です。
ちょうどこの前まで放送されていた「トリリオンゲーム」というドラマで、まさに主人公がこの手法を取っていました。(ちょっとやりすぎですが)


このドラマの場合は、相談すると最適な商品をAIがレコメンドしてくれる「AIショップ」と銘打ってECサイトを作りましたが、実際には人がその相談内容を聞き、手動で商品を選定するという方法で、相談 → レコメンドという流れにニーズがあるのかを検証していました。
これが軌道に乗ってから、本当にAI化していくわけですが、実際にAIを最初から作ろうとしていたら、データも足りない、開発費も足りないでほぼ実現不可能だったでしょう。

一方、簡易的なレコメンドを作っていたら、レコメンドの精度が低く、ユーザーが付かなかったと思います。
結局、ほとんどのサービスやプロダクトは「人力」で思いっきり時間と専門性を駆使すればできることを、コストと能力のハードルを最小にした上で実現してあげるものにすぎません。
ずっと人力では費用対が合いませんし、そもそもスケールしないですが、検証という意味では圧倒的に人力がコスパが良いのです。

ここまで来て、検証が終われば、あとはグロースフェーズです。
ただし、百里を行く者は九十を半ばとす。新規事業も企画・検証が完了したら成功が見えるように感じられますが、実際にはここまでが半分。(というか1/4くらい)
いかに効率的に、そして再現性をもったグロースにつなげられるかが非常に重要です。
そしてグロースフェーズはサービスの磨き込みフェーズでもあります。
プロダクトであれば、PSF(プロブレム・ソリューション・フィット)が完了し、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)を目指す段階に来たばかりなので、育てながらまだまだ改良を続けなければなりません。
このフェーズについては、かなり長くなりそうなのでまた別記事で詳細に書かせていただければと思います。


■ 事業開発はスピードとの勝負


最後に、事業開発は、あらゆる観点からスピードとの勝負になります。
まず、良いアイディアなら競合がどんどん真似してくる。僕が作った1社目のスタートアップでも、競合にアイディアやマーケティング手法をガンガン真似されました。

例えば、ウェビナーの内容がほぼ同一で、開催日がうちの前日、、、そんな露骨に丸パクリしてくる?というレベルですが、違法ではないし、勝つか負けるかの世界なので当たり前です。(逆にそんなリスペクトしてくださってありがとうございます)
むしろ、パクるなんて卑怯だから、あれやったら伸びる気がするけどやめておこう、なんて考えるのは甘ちゃん。自分たちのお客さんにプラスになるのであれば積極的に取り入れていくべきだと思います。

とはいえ、競合の動きは気になるもの。結構経営者や事業責任者によってもここへの心構えは人それぞれだと思いますが、個人的には昔読んだ、世界一のプロゲーマーの梅原大吾さんが本で述べられていた「ライバルに技をパクられるのではと心配しない。新しい技を生み出すというスキルを磨いて、ライバルがパクるより早く自分が進化し続けられれば負けないから」(全然原文ママじゃない)という心境はまさにビジネスの世界でも近いなと思います。

もちろんパクられないに越したことはないのですが、それを気にして力を出し切れないより、とにかく自分たちの実行力・スピードで押し切りユーザーにとってベストなものを届ける方が結果的に大きな成果を上げられると考えています。

また、資金面でも少額予算であればあるほどスピード勝負です。
最速で走り抜けながら、頭は冷静に考えて知恵と工夫を絞り出すのがスタートアップであり新規事業。

僕が大好きな風立ちぬでも、創造的人生の持ち時間は10年だとカプローニさんが言ってました。誰やねん。
本気で走り抜け、とんでもない成果を出すためには、ある程度短い時間で一気に駆け抜ける必要があるのかもしれません。
新規事業も、そのような少し狂った熱を持った人こそ、成功に近いような気がします。


■ 最後に


この記事は以上になります。
新規事業を作る上では、アイディアに確信ができてきた後のグロースフェーズも非常に重要であり、その部分無しで成功はありえないですが、今回は前段のアイディアの具現化までにフォーカスさせていただきました。

グロースフェーズもまた記事として書かせていただきます。

新規事業と聞くとキラキラしていて面白い感じがしますが、実際は泥臭いこと、Hard Thingsなことの連続。
それでもワクワクして、このサービスが日本を、世界を変えるかもしれないと夢見ながら取り組めるのも新規事業。
もっともっと日本が元気になるために、そこに取り組む人や成功する人が増えることは必須条件だと思っているので、これからも新規事業を中心に、マーケティングなど僕が取り組んできて育ててもらってきたものについて発信していけたらと思います。

卒業論文でも5,000文字程度しか書かず、教授の恩情で卒業させていただいた僕ですが、この記事は7,000文字になりました。
そこそこ書いたな~という印象と同時に、大学4年の自分のやばさを再認識。メキシコの各州の地図貼り付けまくってページ数稼いでる場合じゃないのよ。

というわけでまた次の記事も読んでいただけると幸いです。

また、新規事業の壁打ちやご相談などがあれば、ぜひお気軽にご連絡ください!
kento.sata@bushing.jp
twitterもやっているので、1人でもフォローしてくれる人がいたら嬉しいです!
https://twitter.com/kent_sata

それでは、長文駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

ばった

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