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グランマの心に残る旅 南仏編

 娘が結婚する前は、毎年2人でフランスに出かけていました。私のおぼつかない英語を、若い娘のカンの良さがカバーして、2人は名コンビでした。

 フランスに行き始めて間もない頃、大胆にも南仏に行ってみようということになりました。ニース空港からバスに乗り、運転手さんにホテルに近い停留所のメモを見せ、着いたら教えてと頼むほどのドキドキ旅行でした。けれど、好奇心旺盛というか恐れを知らない私たちは、暗くなりかけたニースの街を予約していたホテルを探してウロウロ。娘が奇跡的にホテルを発見。けれど窓やドアも締まりにくい粗末な宿で、ここに3泊するのかとがっかりしたのを覚えています。20年以上も前のことで、ホテルはガイドブックで探しFAXで予約。返事のFAXがなかなか届かず不安になったり、時差の関係で深夜に起こされたり、先方からの電話に出た家族が大慌てになったりと、ホテルの予約だけでも、今では考えられないハプニングが多々ありました。ましてや、インターネットで部屋の様子を知る由もない頃でした。

 翌日はバスに乗りシミエ地区にあるマティス美術館へ。私たちが好きなマティスの美術館は、住宅街の中に建つピンク色の外壁が可愛い小さな美術館でした。デッサンや絵画、ロザリオ礼拝堂の模型等様々な作品がある中、私たちが最も注目したのは切り絵。線の豊かさ、鮮やかな青に魅了されました。

 美術館からすぐ近くのシミエ教会の墓地にマティスのお墓はあります。マティスは第2次世界大戦の空襲を避けるため、後にヴァンスへ移りますが、それまで過ごしたニースの街を見下ろす丘に、花に囲まれ眠っています。2人はしばし、静かにマティスに思いをはせました。

 帰路シャガール美術館にも立ち寄りました。一通り鑑賞した後、庭にあるカフェで一休み。心地よい風に吹かれ、娘は友人あてにハガキを書いていました。季節は、まさにヴァカンスシーズン。ゆったり過ごしたこのひとときは、今も心に残るシーンです。

 翌日は、カンヌへ。

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