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月刊「ファミーリア」ミニコンサート11月号

この記事は2021年6/1より無料記事となりました。

☆プログラム☆

陽はすでにガンジス川より (A.スカルラッティ)

主よ、憐れみを(教会のアリア) (A.ストラデッラ)

薔薇 (F.P.トスティ)

マレキアーレ (F.P.トスティ)

オペラ《魔笛》より「なんと美しい絵姿」 (W.A.モーツァルト)

オペラ《愛の妙薬》より「なんと美しく可愛い人」 (G.ドニゼッティ)

オペレッタ《微笑みの国》より「君こそ我が心のすべて」 (F.レハール)

★アンコール一曲

出演:渡邉公威(テノール) 黒木直子(ピアノ)
収録日:2020年10月24日(土) 収録会場:六本木シンフォニーサロン
収録時間:約46分

※ヘッドフォン、イヤフォン、スピーカー等でお聴き頂きますと、音質が向上致しますので、お試しください。

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♬プログラムノート♬

陽はすでにガンジス川より(A.スカルラッティ)
すでに太陽はガンジス川から
より明るく光り輝いている
そして泣いている夜明けのすべてのしずくを拭く

金色の光で
すべての植物を宝石のように飾り
そして空の星たちを
草原に描く

アレッサンドロ・スカルラッティ(1660-1725)作曲のオペラ《愛の誠》の中のアリア。アレッサンドロ・スカルラッティは、イタリア出身のバロック時代を代表する作曲家で、オペラにおけるナポリ楽派の始祖と考えられている。

主よ、憐れみを(教会のアリア) (A.ストラデッラ)
主よあわれんでください
もしわたしの祈りが届くのでしたら
私を罰しないで
あわれみをあたえてください
永遠の地獄で罰しないでください
大いなる神よ

作曲者のアレッサンドロ・ストラデッラ(1644-1682)は、イタリア・バロック音楽の作曲家で多くの作品を作ったが、なかなの破天荒な人生であった。
1667年、ボローニャからローマに移り、宗教曲を中心に作曲しながら、放縦な生活に走った。悪友とともにカトリック教会の金を使い込んだのが発覚、ローマを逃げ出す。かなり後になって、もう大丈夫だろうとローマに戻るが、不注意にも、今度は次々にさまざまな女性と関係を持ち、それがローマの権力者の不興を買う結果となり再度ローマを遁走、二度と戻ることはかなわなかった。
1677年にヴェネツィア共和国に行き、さる高貴なる人物により、その愛人の音楽教師に雇われる。おおかたの予想通りに、またしてもその女性と関係を結び、しかもそれが露見したため、またもや逃亡生活に入る。件のヴェネツィア貴族は、殺し屋一味を雇い入れ、ストラデッラを追跡して殺害するように命じたが、ストラデッラは辛くも魔の手から逃げおおせ、今度はジェノヴァでオペラやカンタータの作曲家として活躍をするが、今度も懲りずに女遊びを始めたところを、とうとう暗殺者に押さえ込まれ、そしてあっけなく刺し殺された。
彼の強烈な人生は、題材としてオペラにも使われ、オペラ《マルタ》を作曲したフロトーにより《アレッサンドロ・ストラデッラ》という題名でオペラに作曲された。

薔薇 (F.P.トスティ)
哀れな薔薇は再び閉じ込められる
あなたの小さなお祈りの本の中に
荒野の哀れな薔薇よ
長い季節で枯れてしまった

誰が君にその悲しげな花をあげたのか?
どんな優しい夢をあなたに思い起こさせるのか?
「あぁ!」君は答える「その恋は逃げてしまう!
光り輝く四月の夕方は逃げてしまう!

今 あなたは黙ったままそれを見つめ、不意に
君の瞳は涙でぼやける
今 それに口づけし、震えながら、きらめく
君の顔に、鮮やかな微笑みが!

誰が君にその悲しげな花をあげたのか?
どんな優しい夢をあなたに思い起こさせるのか?
「あぁ!」君は答える「その恋は逃げてしまう!
光り輝く四月の夕方は逃げてしまう!

マレキアーレ (F.P.トスティ)
月がのぼるとき このマレキアーレに
魚たちでさえも恋におちる
海の波もざわめいて
喜びのあまり色が変わる
月がのぼるとき このマレキアーレに

このマレキアーレでは とあるバルコニーに向けて
俺の情熱は 燃え上がるのだ
カーネーションが窓辺には香り
水がその下を流れ ささやいている
このマレキアーレでは とあるバルコニーに向け

星がとても輝かしいなんて言ってる奴は
お前の顔にある瞳の輝きを見たことがないのだろう
そのふたつの星のことは 俺だけが知っていて
そこから苦しみが この心へと刺さってくるのだ
誰だ星がとても輝かしいなんて言ってる奴は?

目覚めてくれよ カルーリ ここの空気はさわやかだ
こんなに長いこと待ったことが今まであっただろうか?
この声に伴奏させようと
今夜はギターを持ってきたぜ
目覚めてくれよ カルーリ ここの空気はさわやかだ

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マレキアーロの家の外壁にある「マレキアーレ」冒頭の譜面のレリーフ

オペラ《魔笛》より「なんと美しい絵姿」 (W.A.モーツァルト)
この絵は魅惑的で美しい
まだ誰も見たことがないくらい
私は感じる、この神々しい姿に
私の心の新しいときめきを感じる

私はこれを何とも呼ぶことはできない
しかし私の心は火のように燃えている
この感情が恋なのであろうか
そうだ、これこそが恋だ

ああ、もし彼女に会うことができるのなら
ああ、彼女が私の前に立っているのなら
私はなるだろう、温かく、純粋に

私はどうなるだろう?
私は彼女にうっとりするだろう
この熱い胸に抱きしめて
そしてそのとき彼女は永遠に私のものとなる


モーツァルト(1756-1791)の最後のオペラ。
モーツァルトと同じフリーメイソンで友人のシカネーダーの依頼で作られた作品のため、フリーメイソン色の濃いオペラともなっている。
その反面、メルヘンチックな内容であるため「子供向けのオペラ」として上演されることもある。

オペラ《愛の妙薬》より「なんて美しく可愛い人」 (G.ドニゼッティ)
なんて美しく、なんて可愛い人だ!
見れば見るほど、好きになってしまう
でも彼女の心にほんの少しの愛を吹き込むことですら、容易なものじゃない

彼女は本を読めるし、勉強もできるし、頭もいい・・
彼女がわからないことなんか何もない・・
それに比べて俺はときたら、馬鹿で
出来ること言ったら、ただ、ため息をつくことだけ

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《愛の妙薬》の舞台となったスペイン・バスク地方の民族衣装

オペレッタ《微笑みの国》より「君こそ我が心のすべて」 (F.レハール)
※私の心はすべて君のものだ
君がいない所には、私もいることはできない
もし太陽の光が花にキスをしなければ、花がしおれてしまうようなものだ
私の最も美しい歌は君のものだ、なぜならその歌はただ愛だけによって花咲いたものだから
私にもう1度言ってくれ、私の唯一の愛する人よ、私にもう1度言ってくれ
私はあなたを愛していると!

いつどこへ行っても、私は君を近くに感じる
私は君の息を飲んで、君の足元にひざまずいて祈りたい
君に、君だけに

君の輝く髪はなんて素敵なんだ!
君の輝くようなまなざしは美しい憧れの夢だ
君の声を聞くと、それは音楽のようだ

※繰り返し

今年生誕150周年を迎える、オペレッタ《メリー・ウィドー》(陽気な未亡人)でも有名なフランツ・レハール(1870-1948)は、20世紀前半を代表するオペレッタ作曲家であり、ウィンナーオペレッタ最後の大作曲家と言っても過言ではない。
レハールの晩年、ドイツ、オーストリアはナチス政権下であったが、レハールの妻はユダヤ人であったものの、特例として何のお咎めも無かった。
それはアドルフ・ヒトラーが《メリー・ウィドー》の大ファンだったからであったそうで、彼の妻は、ユダヤ人でありながらドイツ国内で普通に暮らせる数少ない特例を得た。
それとは逆に《微笑みの国》の台本作家フリッツ・レーナ=ベーダは、ユダヤ人であったため、レハールに頼って難を逃れようとしたが、彼を庇おうとしたレハールはナチスから彼の妻のことを持ち出され、この件について口出しすることを禁じられた。結果、レーナ=ベーダは強制収容所に送られることとなる。
このことで、レハールは戦後、親ナチスのレッテルを張られることとなってしまう。
美しい音楽の裏には、歴史に翻弄された事実もある。このようなことを繰り返してはいけない。

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フランツ・レハール

【アンコール】Ich liebe dich~きみを愛す(L.ベートーヴェン)
私は君を愛している、そう君が私を愛するように
夜も朝も
君と私が私たちの心配事を共にしない日は一度もなかった

易しく耐えるために君と私の心配事は分かち合った
君は私の悲しみを慰め
私は君の嘆きに泣いた

君に神の祝福がありますように
私の命の喜びである君に
神が私のために君を守り
私たち二人をお守りくださいますように

今年生誕250周年を迎える、ベートーヴェン(1770-1827)の「Ich liebe dich(きみを愛す)」は1795年に作曲された。
K.F.ヘルローゼーの「優しき愛(Zärtliche Liebe)」の詩によるものだが、ベートーヴェン自身が曲名をつけていないことから、曲の冒頭の歌詞の「Ich liebe dich」が曲名として使われている。

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バックナンバーはこちはからご覧頂けます。
創刊号(7月号)
8月号~カンツォーネ特集
9月号~イタリアオペラを巡る旅
10月号~夢のように


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