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地下鉄のジジ 変なおじさん観察記〜Zizie dans le métro

同志Aからのお題:ジョーカー


仕事帰りの地下鉄。座らずにドアの近くで立っていたら、降りる1つ前の駅で、リュックを背負った高齢男性が乗り込んできた。やや小柄で、もじゃもじゃヘア。

電車内は混み合いつつあったものの、まだ少しは余裕がある状態だった。しかし、おじさんは直進し、前の人と距離を、無駄にぐぐぐと詰めてくる。はっきりと聞き取れないが、怒気をはらんだ声で何やらつぶやいている。その上、マスクを着用しているとはいえ、やや大きな咳に時節柄はらはらする。

私の位置は、おじさんから見て左斜め隣。電車が揺れて、少しでも触れようものなら、ブチ切れること必至だ。吊り革をぎゅっと握りしめた。

きょうの車両選び、ババを引いたか
…などと思いつつ、息を殺しながら横目でジジを観察する。

加速する電車の中、ジョーカーおじさんのぷんぷんは止まらない。なにゆえ機嫌が悪いのか。
ギャンブルで大負けした?
刺身定食がカピカピに乾いてた?
親露派の「住民投票」は茶番だと怒りに震えてる?

降りる駅は彼も同じだった。「次は」とアナウンスがあると、おじさんはくるりと方向転換。今度はドアの前に立つ人にぐぐぐと詰めていき、扉が開くやいなや、左隣の人に故意に肩をぶつけ、勢いよくホームに飛び出していった。

改札階に向かうエスカレーターでは右側を駆け上りながら、ここでも左側に立つ人々にわざと肩をぶつけていく。しかも3秒に1回のハイペース。あっけに取られた私は、攻撃的な後ろ姿をホームから見上げるしかなかった。

変なおじさん、そんなに力んでどこへ行く。


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