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旅とデザイン ー幸福のアラビア イエメン編ー

旅先で出会ったデザイン(建築・アート・音楽など全て)についてお話しさせていただいている「旅とデザイン」。今回はイエメン編です。
この記事を書いている2021年4月は、相変わらず旅行には出られない状況です。読んでいる間は、中東イエメンへと脳内トリップしていただければと思います。
イエメンを訪れたのは、かなり昔の事となってしまいました。この国も様々な問題を抱える国ではありますが、ここでは建築などを中心に見ていきます。

イエメン共和国について

首都はサナア。旧市街地は世界遺産登録され、絵本で見るアラビアンナイトな風景です。本当にアラビアの世界は美しい。建物は基本的に粘土と日干しレンガで作られています。日干しレンガの製造風景は、スペインや中東各国でも目にする光景ですね。旅の途中はいつも、この国に産まれたら何の職人になろうかな と妄想するのですが、私は日干し煉瓦職人か陶器の絵付け師に魅力を感じています。
残念なことに、旧市街の一部は空爆で破壊されて損壊を受けているので、私が見た風景と今は異なる状況になっていると思います。旅は行ける時に行っておいた方が良いのでしょうね。

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ジンジャークッキーの摩天楼?イエメンの建築

イエメンの建築の特徴は、日干し煉瓦の壁を白いフチで囲む可愛らしい様式です。1階や2階部分は基礎部分で窓は無いのですが、3階以上の壁面は、四角と半円の組み合わせられた窓がリズミカルに並び、その窓回りと建物のフチは白い漆喰で縁取されています。それ以外の壁面は日干し煉瓦の地肌のままの砂色。ベージュと白のコントラストでリズムが強調されてうっとりするほどです。
イエメンのほぼ中央の高原地帯にあるシバームの旧城壁都市は、その独特の景観から「砂漠の摩天楼」や「砂漠のマンハッタン」などとも呼ばれています。現在残っている建物の多くは16世紀に建てられたものとされていますが、周辺地域と違い石油が出なかったので、近年の開発から免れているんですね。国は経済発展を望んでいると思いますが、この景観はずっと守られて行って欲しいと願います。

幸福なアラビア

イエメンの国土は7割が山岳地帯です。インド洋からの湿気を伴った風がこの山々にぶつかって雨をもたらしました。その気候風土によって、さまざまな農作物や緑を育む豊かな大地を育み、高級香料とされた乳香を多く産出してきたのです。乳香は、キリストが生まれた時に3人の賢者が捧げたものの1つですね。その乳香で利益を上げ、インドからアフリカへと続く海のシルクロードの富を独占していました。そのため、紀元前の旅人はこの国を「幸福なアラビア」と呼んでいたそうです。あの美しい日干し煉瓦の摩天楼を見ただけで、その栄華も納得です。

聖書とイエメン

首都サナアは「世界で最も古い街」として聖書にも出てくる「ノアの方舟」。そのノアの息子によって作られた町としても有名です。そのため別名を「マディーナット・サーム(セムの街)」ともいうそうです。
また、旧約聖書に出てくるシバの女王の伝説もこの地が舞台です。シバは、イエメンのマーリブ地域の古代名です。旧約聖書にはあまり馴染みがないのですが「シバの女王」の部分をかいつまんでいくと、


「シバの女王はソロモンの知恵の噂を伝え聞くと、多くの随員を伴って、香料、大量の金、宝石などの贈り物をラクダで運び、難問を以って彼を試そうとエルサレムを訪問した。女王はソロモンに数々の質問を浴びせるが、ソロモンに答えられないことは何も無かった。また、その宮殿、食卓の料理、居並ぶ臣下、神殿の燔祭などの様子を目の当たりにした女王は感嘆し、ソロモンが仕える神を称え、金200キカル(1キカルは約34.2kgなので6.84t)と非常に多くの香料や宝石を贈った。ソロモンも女王に対して贈り物をしたほか、彼女の望むものを与えた。こうして女王一行は故国に帰還した。」

という内容です。ソロモン王は、今のヨルダン辺りの王様ですね。ヨルダンとイエメン。私の大好物です。
壮大な物語なので、もちろん映画や舞台、音楽になっています。ハリウッド風になると、ちょっと娯楽性が高くなりすぎるのですが、また映画化されると嬉しいなと思っています。

時として、紛争などの状況によってはイエメンへ入ることが難しいこともあります。私が訪れた時も、邦人が事件に巻き込まれたと現地の方から心配するお声がけをいただきました。イエメンに平和が訪れ、いつでも誰でも、この美しい国に安心して行ける日が来ることを祈ります。

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