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少女トラベルミステリ

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「星子ひとり旅シリーズ&幽霊事件シリーズの研究本を出そう」から始まった『少女トラベルミステリ』──『少女』『トラベル』『ミステリ』の視点で少女向けミステリ、少女探偵、女性向けトラ…
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『清里幽靈事件』『滑雪場幽霊事件』購入レポート

前回、壮絶な長さの記事を書きましたが、この時点では「海外版の本の情報、画像については確認できた」状況でした。(この記事の執筆後に台湾版コミックス情報を反映させています) 今回は台湾版のコミックスを両方入手したのでそのレポートです。 前回はこちら。 この時に見ていたページはオンライン古書店のページとオークションサイトのページでした。本の画像を見ることができるので実在していることは解ります。最初はそれで充分だと思っていたのですが、どうしても解らないことが多く残ります。 まず

星子ひとり旅シリーズ、幽霊事件シリーズ関連作品

星子ひとり旅シリーズも幽霊事件シリーズも、どちらも人気作品なので関連作品があれこれ出ています。今回はそのご紹介の記事です。 ただし公式で出ている作品は時間も経っていることもあり、新品で入手することは星子シリーズFC刊行の同人誌以外は全ての作品で不可能になっています。未入手の刊行物もあるので、そちらについては情報をお寄せくださると嬉しいです。もちろんここで扱っていない作品についての関連作品情報についても歓迎です。 あと、当時は販促用にイラストを印刷したテレホンカードなどをプレ

トラベルミステリにおける幽霊事件シリーズの独自性について

前回予告した通り、少し時間は経ちましたが幽霊事件シリーズについて語る回です。 電書で今もがっつり読むことのできる星子ひとり旅シリーズと違い、作者の風見潤先生が生死不明という状況もあり、入手はとても難しいですが、序盤の方の巻ならある程度入手しやすいので、リストのリンクも貼っておきます。(後の方の巻となるとちょっとアレなレベルのプレミアがついています) 一作目『清里幽霊事件』が出た1988年07月には、星子ひとり旅シリーズは十作目『ワンペアは殺しの花言葉』まで刊行されていて、

【比較】流星子と水谷麻衣子の違い

幽霊事件シリーズは先発の星子ひとり旅シリーズとかなり差別化した形で企画が作られているようです。 こちらでもある程度取り扱いましたが、特にはっきりと出るのが主人公の造形です。かなり意識して「かぶる部分を極小にした」ように見えます。こうして並べてみると結構がっつり違います。 スポーツ好き少女 vs 文学少女 流星子は合気道部に所属していて、本人のアクションシーンもあります。逆に水谷麻衣子はミステリ好きで推理小説研究会の会誌で自分も文章を書いたりしています。スポーツはスキー以

トラベルミステリにおける星子ひとり旅シリーズの独自性について

『少女トラベルミステリ』は、それまで少女向け作品では存在しなかったロングセラーのトラベルミステリシリーズ、山浦弘靖『星子ひとり旅シリーズ』と風見潤『幽霊事件シリーズ』を扱っています。 星子ひとり旅シリーズが大人気になった後に幽霊事件シリーズが始まっているので、まずは星子ひとり旅シリーズのことを書かねばなりません。古いシリーズなので「実は読んだことがないんだよね」という方も多いかもしれませんので、解らない人はあらすじも引用してあるこちらのリストをチェックしてもらえると嬉しいで

山村美紗作品がトラベルミステリに与えた影響問題

現在、ミステリにおける山村美紗作品の影響を語る人はほとんどいません。十代、二十代でミステリが好きな方は一冊も読んだことがないかもしれないし、名前すら聞いたことがないかもしれません。本屋ではもう既に新刊は並んでおらず、読みたい人は古本か電子書籍しか入手の方法がありません。 そしてワタシを含む中高年には2時間ドラマ隆盛の時期に席巻しまくった印象が強く、読んでないのに知っている人がたくさんいました。2時間ドラマにおける山村美紗先生の影響は計り知れず、京都の各所に山村美紗作品の殺人

少女に気軽な一人旅が届くまで問題7

今回は1952(昭和27)年、日本が独立国に戻る前の話から進めます。日本の経済が復興してきて、既に占領中にもある程度旅行を楽しむ余裕も出てきています。 一人旅を楽しめる余裕が出る前に、まず語らねばならない要素があります。子供達の修学旅行です。実は戦時中もかなりぎりぎりまでは神社への聖地参拝旅行が行われています。修学旅行には神社への参拝に行く訳です。(ちなみにワタシも小学校の修学旅行でも行き先が伊勢志摩だったので伊勢神宮に参拝しています。市内の他の学校では奈良京都だったのです

少女に気軽な一人旅が届くまで問題6

前回、降伏文書に調印されて日本がGHQ占領下になったところで終わりましたが、その話に入る前に旅客機関係の話を挟みたいと思います。 日本で初めて民間定期航空路が開通したのは1922(大正11)年、日本航空輸送研究所が開設した堺──高松線です。堺市の大浜水上飛行場として小松島、高松──松山、大分、白浜などへ向かう路線があったそうです。 日本で一番早く提供された「民間人の乗れる旅客機サービス」です。 1923(大正12)年、朝日新聞社が設立した東西定期航空会が発足。当初は郵便業

少女に気軽な一人旅が届くまで問題5

鉄道連絡船に寄り道しましたが、1926年、とうとう昭和を迎えました。 まずはこの時点での交通についてざっくりと説明します。 青函航路があるので青森──函館間の乗り換えOKです。北海道に鉄道連絡船で行けます。 関門航路があるので下関──門司間の乗り換えOKです。九州に鉄道連絡船で行けます。 宇高航路があるので宇野──高松間の乗り換えOKです。四国に鉄道連絡船で行けます。 関釜航路があるので下関──釜山間の乗り換えOKです。朝鮮に鉄道連絡船で行けます。長春まで行けちゃいます。

少女に気軽な一人旅が届くまで問題4

ここまで来て大変重要なことを忘れているのに気が付きました。 船です。 「鉄道の話じゃなかったの? 船旅の話?」とお思いになるでしょうが、鉄道移動する際の合間にある船移動ターンの話です。 今は九州と本州を繋ぐのも、北海道と本州を繋ぐのもトンネルがあります。四国と本州を繋ぐのも瀬戸大橋があります。それ以前にはそうではなかったというのを完全に失念していました。今は鉄道で行けるのに、当時は鉄道だけでは行けない場所があるのです。 まずは昭和の鉄道状況に入る前に、鉄道連絡船について説

少女を旅に誘った作品問題

今回は割と息抜き回です。あまり論拠はなく、個人の印象で語っています。昭和の鉄道についてはこの後まだ頑張って本を読む予定です。 昔の若い女性が旅に出たい、旅行したいと思うきっかけについてについて考えていました。まだ決して治安もよくなく、ほとんどの人には経済的にも豊かではない時期、少女達はどんなきっかけで「旅に出たい」と考えたのでしょうか。 身の危険があってどこでもいいから逃げ出すというのでもなければ、何の知識もない、存在すら知らない場所に出向こうとは思うはずがないので、何か

少女に気軽な一人旅が届くまで問題3

1912年7月30日、年号は大正になりました。この時点での列車移動についてまずまとめます。前回はちゃんと扱っていなかった部分についてもここである程度まとめます。 注意 2以降のこの記事は鉄道情報が足りていません。追記の告知をせずゴンゴン書き足します。申し訳ありません。 国有鉄道、私鉄がかなり整備されたことで、いろんな場所に行けるようになっています。むしろこの時点で重要な『行けない場所』『ない場所』について説明しておいた方がいいかもしれません。 まず、山手線です。 全くな

少女に気軽な一人旅が届くまで問題2

今回は明治の鉄道についての話題です。 ……と、いきなり言ってもいくつか説明しておかないと理解不能になってしまうので、少し並べておきます。 今回はこんなのあるなーという程度で読み飛ばしてOKです。自習のためにウィキペディア首っ引き状態です。後で解らなくなった人は読み返してください。詳しい人は「あ、門外漢がアンチョコペーパー作ってるな」とあたたかい眼で見守ってやってください。何しろ高校で日本史取ってないレベルなので詳しくなさがすごいです。 注意 2以降のこの記事は鉄道情報が足り

少女に気軽な一人旅が届くまで問題1

半ば忘れられていそうですが、実は『少女トラベルミステリ』は山浦弘靖『星子ひとり旅シリーズ』と風見潤『幽霊事件シリーズ』に関する研究本プロジェクトです。 そのため最近の記事は「少女がトラベルミステリの主人公として成立し、ヒットするまでの流れ」を追いかけています。 今までの記事では『ミステリ』『少女探偵』などについては扱ってきていますが、最大の要素である『トラベル』について扱ってきていませんでした。門外漢ですし、ものすごく大変なので後回しにしていたところがかなりありますが、さす