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【実話】家業を変革したい人が陥りやすい落とし穴 | 家業×〇〇を実現する方法

「このままだと家業が衰退してしまう」
「何か新しいことにチャレンジしたい」

このように感じられている家業持ちの方、ご家族の方はいらっしゃるかと思います。そこから何か新しいことを始めようとすることが多いと思いますが、実はそこには落とし穴が...!?

群馬県の千代田町でお寺を家業に持たれている海野さんも家業との向き合い方にかなり悩まれたそうです。しかしそこから「お寺×宿泊」という家業との掛け合わせを実現し、2023年1月30日に千代田町で初の「宿坊」となる「TEMPLE STAY ZENSŌ」を新しくOPENさせました。

今回のインタビューでは「海野さんとは何者なのか」「どのようにして新しい家業の形を作るに至ったのか」についてご紹介できればと思います。

※宿坊とは
お寺や神社の宿泊施設を指す


プロフィール

  • 名前:海野 峻宏(うみの・しゅんこう)

  • 年齢 :31歳

  • 家業:お寺

  • 何代目:海野になってから4代目(お寺ができてからだと47代目)

  • 詳細:黄檗宗大本山萬福寺専門道場にて修行後、複数のITベンチャー企業で法人営業、サービス企画、事業開発等を経験。未来の住職塾 NEXT 1期生。現在は株式会社GLOCALにて一棟貸しゲストハウス等の宿泊施設運営支援を行い、全国の宿泊施設立ち上げを行っている。また、お寺の業務に携わる中で、お寺のDXこそ急務であると肌で感じ、黄檗出身のエンジニアとともにお寺の情報基盤プラットフォームを開発中。


家業嫌いだった彼が継ぐことを決意したキッカケ

ー 群馬県でお寺を家業に持つ海野さんは、成人を迎えるまで、お坊さんになることからどうやったら逃げられるかをいつも考えていたほど、家業嫌いだったといいます。

・海野さん:
継がなければいけないプレッシャーは隅に置いて、自由なことがしたい、継がない道を探したい」と思いながらも、小さい頃は"プチ修行"に連れて行かれていました。一番印象的だったのは得度式と呼ばれる、お坊さんになる第一歩の儀式。京都の本山に行くんですが、小学4年生だった私は大号泣しながら頭を丸められて、連れて行かれました。坐禅も嫌い、梅干しも嫌い。本当に嫌でしたね(笑)


ー そんな海野さんが「腹を括った」のは大学2年生の時と聞きました。その時のお話を聞かせてください。

・海野さん:
東日本大震災が起こった時のことでした。禅宗のお坊さんが、亡くなった方の供養のためにお経を唱えて被災地を巡っている姿が、メディアに多く取り上げられているのを見て気持ちに変化がありました。「もしもの時に駆けつけられて、つらい思いをしている人に寄り添うことのできるお坊さんは尊敬できるし、不覚にもかっこいい!と思ってしまったのです。寺に生まれて育ったのに、何もできない自分がとても歯痒かった。まずは何をすればいいのか父(師匠)に聞いて、修行することにし、大学を休学して、修行に行きました。


ー どのようにして嫌いな家業を好きになっていったのですか?

・海野さん:
継ぎたくないとか、嫌だと思っていたのも家のことを知らなかったから、知ろうともしてなかったからだったんです。思考停止していたんですよね。まず家や、この寺がいつからあるんだろうという小さな事から知り始めました。すると、小さい寺だけどこの寺の歴史ってすごいんだとわかってきたのです。まずは知る事、知ろうとする事から始めるべきだなと思いました。

休学して修行し、家業を継ぐ決意を固めた海野さんでしたが一度家業から離れて働いてみようという思いから、大学卒業後はベンチャー企業に就職しました。その経験を活かして、気軽にお寺に宿泊したり、お寺で様々な体験をすることができるサービス「お寺ステイ」など家業のバックボーンを生かした事業を行なっています。

家業の新しい形を見つけた!? 地元初の「宿坊」をOPEN

ー 2023年1月30日に「お寺」と「宿泊」を掛け合わせた「TEMPLE STAY ZENSŌ」をオープンされましたが、その背景にはどんなものがありましたか?

・海野さん:
作ろうと思った一番の理由は僕自身が「お寺と人々との関わり方」に違ったものを作っていきたいと思ったからです。生きてる時に出会うお寺という形でお寺の魅力や体験を広げていきたいなと思ってます。昔はお寺で宿泊をする「宿坊」と言われるものが多くあったのですが、今ではあまりやっているところも少なく、人が亡くなってから初めてお寺と関わることが増えてきました。そういった現状を変えたく、現代に即した宿坊を作りたいなと前から思っていました。

ー そうだったのですね。周りから反対はされなかったですか?

・海野さん:
先代や周りからの反対は特になかったです。
古い業界なので新しいことを取り入れることに抵抗がありそうと思われることは多いのですが、実はそもそも新しいことをやろうとしている人が少なく、そのようなステレオタイプだけが強いというのが僕の印象です。周りのお寺からも特に邪魔をされるとかはなく「オープンしたら見せてね〜」といった形で反応をもらってます。

ー オープンすると決めてからつまずくことはなかったですか?

・海野さん:
大きくつまずくことはなかったかもですね。
一番つまずきそうな営業許可証の手続きや消防設備の話などは、私がノウハウを持っていたので全て自分で行ってしまいました。これを誰かに相談しないでやったことが良かったですね。課題って出てくると思うのですが、それが超えられなかった時に誰かと進めている状態だと、「そこまでやる必要なくない?」という声がでがちです。そこを僕は1人で悩んで1人で解決して進めたので大きくつまずくことはなかった理由かなと思います。

家業を加速させるキャリア選択の極意

ー これまで宿泊系ベンチャーで働く経歴があったりと、家業を継ぐことを頭に入れながらキャリアを作られてきたのですか?

・海野さん:
「お寺をそのまま継ぐことはつまらない」継ぐことは決まってたので「就職して帰った時に何か持ち帰ろう」という視点で仕事を選んでました。そんな中で先ほど伝えた「生きているうちのお寺」という観点から「お寺✖︎宿泊」が結びついて、インバウンドの流れや需要もあったのでそちらにシフトしていったという感じです。家業との掛け合わせでキャリアを見ていましたね。

ー 家業に新しい価値を生み出すことはすごく難しいことかと思いますが、それを成功させるために海野さんが思う大切なことはありますか?

・海野さん:
家業のチャレンジは「既存ありきで考えないといけない」ということですかね。
25歳の時にグローバルで活躍している松本しょうけいさんという方とお話したことがありました。当時の私は「何か新しいことをしないとダメだ」とばかり思っていたのですが、そんな私に「なぜ君はそれが出来る環境にあるの?」と投げかけてくれたことがグサッと来たのがこう思うようになったキッカケです。

お寺でいえば檀家さんが何百年と支えてきた既存事業があり、それを無視して新しいことをするなんて自分のエゴでしかないんですよね。
そうハッとさせられてから、既存事業を崩さず時代に沿ったアップデートを行っていく形でうまくピースをはめていくことが大切だと思います。

なので、何か新しいことを始めることばかりを考えるのではなく、まずは自分の家業を知ることから始めることで、基盤が理解でき新しいアップデートに繋げられるのではないかと思ってます。

ー 海野さんとしてこれから目指していること/やっていきたいことはありますか?

・海野さん:
お寺を「誰かの背中を押すようなキッカケのある場所」にしていきたいと思ってます。人生では悩んだ時にポンと背中を押してほしいという時ってあると思うのですが、昔のお寺はそういった側面もあったりしました。今は法事などでしか接点がないですが、宿泊という形式で交わることで様々なターニングポイントで人とお寺が接することができる。そういった角度から、色々な人たちとの出会いやキッカケを作っていければと思います。


ー 家業とキャリアについて悩んでいる人へのメッセージはありますか?

・海野さん:
家業との掛け算を意識してキャリアを作ることですかね。既存の家業だけだと生き残っていくことは難しいことなのかもしれないですが、そこにまた別の何かを掛け算をしていくと、それだけで大きく景色が変わってくると思ってます。もちろんそれを自分が一番楽しんでいるということが大事なんですけどね。



今回は海野さんについてと、そのキャリアに関するお話を伺いました。
家業に危機感を感じている中でも闇雲に新しいことを始めるのではなく、既存事業との相性良い掛け合わせで新規事業を考えていくことが重要だと教えていただきました。

何か新しいことを初めていきたい方など、今後ご自身の家業を考えていく上で何か参考になれば幸いです。

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