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Café Bohemia Meeting 2020 [SONGS&FRIENDS 佐野元春]

Now&Here #23
SONGS&FRIENDS 佐野元春『Café Bohemia』
久しぶりの渋谷の街。
交錯するヒトと時間と欲望のスクランブル交差点。
相変わらず大きらいな場所だけど、
ヒトの流れにまかせて泳いで行くうちに
どこか心地いいヴァイブスにくるまっている気がしていた。

公園通りのてっぺん。
ぼくの知っている渋谷公会堂は、少し横にズレて、
LINECubeShibuyaとして新たに建て直されていた。

開場時間までまだ少し早かった。
入口手前で列になって待機。
気温は10.4度。ライムスターのMUMMY-Dとすれ違う。
開場してからもまだ場内には入る事は出来ず、
自分とほぼ同年代の方々に紛れて時間をやり過ごしていた。
席について見回してみる。
ステージには幕が下りていて、まだ主のいない楽器たちの
シルエットがぼんやりと浮かんでる。
出来立ての会場、座席は木製、天井は高く、木製の梁がしつらえてある。

ライブイベント『SONGS & FRIENDS 佐野元春「Café Bohemia」』
客電が落ちると天井近くの大きなスクリーンモニター下がり、
アルバムThe Essential Cafe Bohemiaでの
当時30歳がパリに滞在中の映像が映し出された。
続いてこのライヴのプロデューサー武部聡志さんから
このライヴの趣旨が説明され、幕が上がった。

オープニング!ギターのグルーヴとオルガンの音色が
会場を包み込む。   「ストレンジ・デイズ」
Glim Spankyが、まばゆく、そして力強く舞い降りて来た。
飾る必要のない若いそのままの情熱とグルーヴ、
伸びやかで力強い歌声と揺れる眩しいフレアスカートと
青みがかったギターがゴッ機嫌なギターソロを添えた
「HAPPY MAN」が、ここに招かれた
孤独なペリカン達を一気に舞い上がらせてた。

ハウスバンドは、TheHoboKingBandを元にした
女性コーラスとパーカッション、
そしてブラスセクションを加えたゴージャスなバンド!
”Café Bohemia GRAND ROCKESTRA”

続いて、パーカッションのスパムが、コンガのグルーヴで
会場の空気を混ぜっかえす。
舞台の下手よりハンドマイクでステージに
飛び込んで来たのは田中和将(GRAPEVINE)!!
テンションの高いボーカル、鋭く揺れながら「月と専制君主」の
複雑なメロディーラインを唄いあげる。
もう1曲、自身が選んだ曲  「ジャスミンガール」
フェンダーテレキャスターを抱えて、
古びた映画のような変わる街並みに虹を唄った。

レコードと同じ始まりのアコースティックギターの
調べが会場に響き渡る。
そして古田たかしのドラムスがなだれ込む。
山中さわお(the pillows)「WILD HEARTS –冒険者たち-」
Café Bohemia GRAND ROCKESTRAは、
オリジナルヴァージョンでかっ飛ばす!
きっとここにいるみんながあの頃やあの場所に
いっきに連れ去られていったと思う。
こらえきれないほどの想いが溢れだす。
MC「佐野さんが好き!佐野さんの顔も好き!!
今回で10回目!10回もあったんだぜ。
14才の時に最初に出会った曲、アルバムNo Damageの1曲目!
スターダストキッズ!!!」
Black&Whiteのギターを抱えたあの頃の少年の熱い歌声は、
ここにいる大人たちがいつの間にか胸の奥にしまいこんでた,
いくつかのネガフィルムに微かな色を付け加えていた。

大きなスクリーンモニターが再びゆっくりと下りてきて
アルバムThe Essential Cafe Bohemia映像の.
IMAGE FROM THE LIVE... TOKYO MONTHLY VOL.1 1986.4.14が流れる。

再び幕が上がる。RHYMESTER!!
 DJ.JINはターンテーブルのボックスに構え、
宇多丸とMUMMY-Dが舞台の上手からマイクを携え、
揺れて現れる。彼らが選ぶ楽曲が気になっていた。
クラブ・マナーに不慣れかもしれないオーディエンスを
丁寧に宇多丸が煽る。
「佐野さんが80年代にNYから運んできたヒップホップを、
この渋谷で2020年に完成させませんか?」
イェーッ!!始まったのは、直球で剛速球の
「COMPLICATION SHAKEDOWN」
スクラッチノイズが今を切り裂く。
言葉がグルーヴを生み出し、グルーヴがBEATを奏でた。
LINECUBU Shibuyaが2月の公園通りを転がり続けていた。

ショウの中盤、小坂忠。
小柄な肉体は威厳のあるオーラを自然と身にまとっていた。
選んだ曲は、アルバム「The Barn」からロックンロールハート。
唄の区切り、細かなニュアンスがまさしく小坂忠。
ある時代の景色を体現してくれていた気がした。
そして、ステージにひとりの男を呼び込む。
山口洋。
コメントはなく演奏がふたりで始まる。
「君を連れて行く」
オリジナルを凌ぐ素晴らしい景色が会場を包み込む。

山口洋のソロ。
体の一部になっているヤイリのギターを抱えて始まったのは
「NewAge」 
Café Bohemia GRAND ROCKESTRAは
ハートランドヴァージョンを奏でる。
山口洋が口にする「数え切れない痛みのキス」
肉体と魂 いつだってギリギリにエッジを
ギラつかせて真っ白に燃え尽きる男。最高。

LOVE PSYCHEDELICO。
Café Bohemia GRAND ROCKESTRAは
オリジナルの「彼女が自由に踊るとき」を奏で始めた。
NAOKIのギターが長田進アニキに負けじと
キレッキレのサウンドをさらけ出す。
つづけて演奏されたのは「虹を追いかけて」
長田進のアコーステックギターのストロークから始まった。
フランキー・ヴァリが乗り移ったかのような
優雅でポップなサウンド。冬の天使が舞い降りてきた。
KUMIはシルバーのドレスを身にまとい、
揺れながら軽やかに踊り、唄う。

あの時の天使に何を話しかけたらいいんだろう?

堂島公平。ポップな表現が冴えわたるアーティスト。
選んだ曲は「Season in The Sun」と「Rainbow in my Soul」
mcで話す声とは違ったあのユニークな歌声には本当に引きつけられる。
歌い終わった後の佐野元春ライクなアクションもバッチリと決まっていた。

終盤に差し掛かる。
古くからのファンには聴き慣れたイントロが始まった。
オリジナルに近いアレンジの「ガラスのジェネレーション」
ハンドマイクで登場したのは 中村一義。
新しいアルバムがリリースされたばかりだ。
ユニークな黒のジャケットとパンツ。
誰も思いつかないポップで毒のある音を構築する男。
ハイトーンボイスがこの曲にピッタリ。

季節がちょっとずれたこの時に奏でられた
「クリスマス タイム イン ブルー」
渋谷のもうひとつの顔、アングラ。
レゲエのサウンドにあわせて女性のダンサーが
艶めかしくバンドのバックで踊る。

ずっと舞台袖で観ていたであろう佐野元春が呼び込まれた。
アルバムCafeBohemiaから演奏されたのは
「99Blues」「Individualists」
それぞれCafé Bohemia GRAND ROCKESTRAによる
久しぶりのオリジナルバージョン。
赤いストラトキャスター、ジャングルビート、
ロビンフッドの弓を射る仕草、間奏のランニングアクト。
最高!

そして3曲目に「Young Bloods」
すり切れたドーナツ盤。アルバムのB面1曲目。
何度、いつ、誰が、奏でようと、いつだって新しい!

ステージから佐野が去ると同時に
Café Bohemia GRAND ROCKESTRAは、
「Café Bohemia のテーマ」をゴージャスに演奏した。
本当に胸躍る素晴らしい演奏だった!!

アンコールでは
佐野さんはこのライヴの機会に感謝の意を表し
「僕が20代の頃に思い描いた理想の世界です。」と語った。

そして最後の曲に選んだのは
アルバムCafé Bohemia からではないが、
「約束の橋」
最後のヴァースでのラララのコーラスがリフレインされて
アーティストとオーディエンスを交えた
シング・アロングとなって素敵な幸福感が会場に満ちあふれていた。

この夜のライヴ。
まさしく自立した個が笑顔を携えながら、
このCafeのマナーに沿って
それぞれのRock&Roll回路を通して生み出された様々な表現。
佐野さんが30年以上前に思い描いていたCafeBohemia Meeting。
それを具現化されているように思えた。

アーティストとオーディエンスを交えた、
そんな2020年のCafeBohemia Meetingに立ち会えたことが
とても誇らしく,うれしかった。

奇妙な日々。
花粉、ウィルス、過労、絶望、デタラメ、嘘.....。
なれの果てに打ちのめされる前に、
どこへ向かっているのか目をこらしてみる。
あぁ、明日もこのカフェの灯に揺れて
君とずっと一緒に歩いて行けたらいいな......。


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