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Now&Here #26
2021年11月11日(木)晴れ
佐野元春 & THE COYOTE BAND
ZeppTour2021初日
at KT ZeppYokohama

この日もコロナ禍の
休業要請日に充てた。
日本武道館から久しぶりの
LIVEというのもあって、
気分は昂って、はやって、
舞い上がっていたかもしれません。

現地まですぐ近くなんだから
そんなに早くに行かなくても
いいものをお天気もよかったので
お昼過ぎから出掛けて横浜駅から
みなとみらい各所を歩いて
歩いて歩きまわった。

少しづつ日が暮れ始めて、
辺りの景色が虚い夕闇が迫る。

臨港パークから見たベイブリッジの
向こうの紫色の空。 
運河に浮かぶ鳥。
こんなところにもある貨物の路線。
ピッカピカのタワーマンション。
造成したまま荒れた土地で
揺れてる枯れ草。
小さな波止場。
気高く孤独な釣り人たち。
穏やかに海を眺める犬と飼い主。 
暮れはじめた街を彩る巨大な観覧車。 

歩きまわってLIVEハウスに
着いてみるともう少しで開場時間。
何か今日の目的前に息切れして
疲れ果てた感じ……    
しばらくして入場。

ひと通りの感染予防を経て
新しい箱の中をブラブラと
さまよってみた。
1階はスタンディングでは
なくスチール椅子が添えられている。
開演前のアコースティックな音の
BGMがあたりの空気をほぐしてる。

ステージ上の鍵盤ウーリッツァーに
ユニークなアートペイントが
しつらえてある。
Bassの高桑きよし師匠の
作品とは知らずに
しばらく見とれていました。

2階に上がってみても
見晴らしがいい感じ。
歩き疲れていた割に
そうしてるうちにワクワク、
ときめく力ががみなぎってきた!

バンドのメンバーがステージに立つ。
佐野元春はアートペイントが施された
鍵盤の前に立つ。

1曲目 
アタックの2音!  ダダッ!!
「コンプリケーション•シェイクダウン」
ほぼオリジナルのアレンジ。
ベースとドラムスのグルーヴ、
鍵盤とギターのアクセントが、
やりきれない日々と
不安定な気持ちをギュッと
引き締める。
このサウンドを全身で受け止めた
ここにいる観客の思いが
マスクで声を上げる事なく
この空間をグワっと持ち上げた気がした。

「ストレンジ・デイズ」
硬質なグルーヴを
ストラトキャスターでかき鳴らす。
膨張した駅のコンコース、
冷たい雨に打たれた似たもの
同士が濡れた傘を片手に
素知らぬ顔ですれ違う。

「ポーラスタァ」
佐野元春とコヨーテバンドの
ひとつの到達点、発明だ。
言葉、ビート、グルーヴ、アタック、
すべてが気持ちよく融合した絶妙な
タイミングで機能した
ロックン・ロール サウンド。

「銀の月」
全体の展開と言葉使いの
巧みさがすごい!
これまでと今この瞬間を
配合させたこのバンドならではの
畳み掛けるグルーヴで舞い上がる。

この世界のその先に覚悟を
決めて向かい合うディープなSoul
未発表の新曲「斜陽」
「きみの魂を無駄にしないでくれ」
と唄う。

「東京スカイライン」
夏は過ぎ、アコギで奏でる
オープンチューニングの響きが
黄昏た文明の長く伸びた
影をゆっくりとなぞる。

ほとぼりが冷めたと
見せかけて再び変異を
してあたりを漂う、
先行きの見えない
新型ウィルスによる感染状況。
コロナ禍のせいだけではないけど、
それによって拍車がかかった
格差断絶の中で孤立する
殺伐とした状況へ確かな手を
差し出せないもどかしさと
苛立ちが「US」の
アグレッシブなサウンドに満ちていた。

「LaVita e Bella」
オリジナルよりも長い前奏、
ドラムスの横に腰掛けて
オーディエンスとその先を見つめてる。
この世界の行き着く先、
この目に見えること、
見えずに理解できなくても
感じること。
あらためて見つめ直して
この先へと歩き出す。

「インディビジュアリスト」
他人ヒトの権利を
侵害することなく
自分の流儀で夢を見ろ!と
スカビートサウンドの
ブレイクに放つ震える魂。

The Coyote Band。
ツアーを重ねるごとに
サウンドはギュッと凝縮されて、
そのエッセンスが炸裂してる気がする。

まだぎこちない新しい日々の
習慣に向き合う潔さと
冴え渡る数々の新しい楽曲を
携えてバンドは無類のビートを
この大地に叩きつける。
お互いの音とセンスを信じて感じ合い、
リスペクトして構築される豊かなサウンド。
計り知れない力を秘めていて
どこにどんな着地点が
あるのかすらぼくにはわからない。
この先もこのバンドが
繰り広げる冒険と挑戦を
見届ける準備をする事に胸が高鳴る。

見たいもの、聴きたいもの、
読みたいもの、伝えたいこと、
たくさんたくさんあるのに、
ぼんやり、ボヤボヤとしてる
うちに時間は知らぬ間に過ぎ去っていく。
残りの時間も気になるが、
明日の仕事のことばかりが気にかかる。

時が経るごとにじんわりと
魂を蝕んでいく無気力と無関心。
何も分けあえられないのかもしれない。
変わらないもの、
変わっていくもの、
その狭間で煽られて、
やる事なす事 コケたり
転んで滑ったり、何もする事なく、
ずる賢く、すり抜けて、しがみついて、
この揺れ動くでこぼこ道を
自分の歩幅で踏みしめて
歩いていくしかないよなぁ…と思ってる。

帰り道、久しぶりに崎陽軒の
シウマイ弁当を買って、
パンデミックの世界が
明けるのを待ちながら、
その先のきみとぼく、
家族や、過ぎ去った時間、
もう二度と会えない柴犬のみどり、
そしてこの先へ駆け抜けて行く
コヨーテバンドのことを
思いながら美味しく食べました。



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