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本のこと2020

2020年は、例年と比べて読んだ本は少なめでした。

びっくりしたのは、ダ・ヴィンチのBOOK OF THE YEAR上位50冊(単行本)のうち、既読が一冊もなかったこと。13年間この企画をチェックしてきて、たぶん初めてのことだと思う。今年は自分の読書傾向変わったなと思ってはいたけど、ここまでとは予想外です。まず、小説を読む量が少なかった。エッセイとかルポ的なものが増えたし、韓国文学にハマったので、小説は小説でも韓国のものを読んでいたり。去年は韓国文学ブームを感じていたので、BOOK OF THE YEARに韓国文学がランクインしていないのもまた驚き。やっぱりこの企画は国内勢が強いのかな。

毎年、一年を振り返っておもしろかった本や感銘を受けた本など、特に記録したい本をまとめています。2020年分はこちら。


『さくら』西加奈子
『まにまに』西加奈子
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭
『フィフティ・ピープル』チョン・セラン
『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』花田菜々子
『ひとさらい』笹井宏之
『Rの異常な愛情 或る男の日本語ラップについての妄想』R-指定
『すべての雑貨』三品輝起
『星の子』今村夏子
『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング他2名
『調査されるという迷惑』宮本常一、安渓遊地
『武道館』朝井リョウ

大好きな西加奈子さんの小説は、いつも想像のその向こうを見せてくれる。まさに『さくら』もそれでした。他の小説でもそうだけど、文字と言葉での見せ方が西さんはすごいなと思う。そして、圧倒的肯定感をくれる。そんな西さんのエッセイ『まにまに』は、自分の自意識を恥ずかしがったり落ち込んだりがっかりしながらも、そこから逃げない様子が伺えた。一見底抜けに陽の人に見える西さんだけど、こういう一面があるからこそ、他人に寄り添って肯定してくれる小説が書けるのかなと思いました。


散々noteにもお気持ち供養した『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(文庫版)は私にとって大切な一冊になりました。面で飾れるエリアに飾ってあります。


『フィフティ・ピープル』は韓国文学にハマるきっかけとなった一冊です。これを機にチョン・セランさんの文章が大好きになって、他も読んでいます。短編でできているお話だけど、それぞれの登場人物が少しずつ繋がっているのがこの本のおもしろいところ。読者全員が登場人物の誰かに自分の一部を見つけるのでは、と思うくらい、いろんな感情と人生がぎゅうっと詰まってる。あとがきも含めて、作者の優しさやできるだけの公平さを感じました。韓国文学は、物語、あとがき、解説、訳者あとがきまで、関わった人たちの意志と気持ちが隅々まで行き渡っていると感じる本が多い。そういう本は、読んでいてとても満たされた気持ちになります。現在日本で翻訳されているものが、社会的テーマを扱った作品が多いからかな。


『シングルファーザーの〜』は私が好きな書店員花田さんの第二作目。自由な人にもなりきれず、かといって普通の生き方も選択できない、振り切れないから枠にぶつかって苦しむんだってことが言語化されていた本です。そんな自分の面倒くささを肯定してくれるような本でした。


『ひとさらい』は好きな歌人、笹井宏之さんの歌集です。この不思議な世界観はSFかファンタジー、はたまたメタファーなのかと思っていたけれど、あとがきを読んで、これは実際に笹井さんが見ていた世界、感じていた世界だったのかもと思いました。
「音を食らう仙人たちのあいだでは意外と評価の高いエミネム」が個人的にドンピシャすぎました。


R-指定さんのヒップホップ愛が詰まった『Rの異常な愛情』。さまざまなスタイルの方々へリスペクトを示しつつ、自分に合った音楽を模索し、自信を持って届ける。こんなにも謙虚で他者を尊重する姿勢があって、ちゃんとヒップホップで認められているのがRさんのすごさの一つだなと思います。表現したものへの批判や何もかもを引き受けている覚悟もかっこいい。Creepy Nutsのバックグラウンドが見えたのはファンとしてとても嬉しかったです。熱量と知識と考察の凄さたるや、先輩たちも嬉しいだろうな。(先輩たち、ご自身を語ってもらうならCreepy Nutsに任せた方がいいですよ…!)


見た目がオシャレな『すべての雑貨』だけど、中身は想像と全然違った。ひたすら雑貨を考えていく内容は、ノスタルジックな雰囲気を漂わせつつ、哲学のような難解さもあって、ふらりと迷い込んだ素人の私には理解が追いつかない部分も。でもとてもおもしろかったし、全く新しい切り口に出会えて脳が刺激されました。


『星の子』は宗教について書かれていて、個人的にタイムリーでした。ここ数年宗教について考えています。同じものを信じている人がたくさん集まればそれは宗教なのか。宗教と呼ばれるものとそうじゃないものの違いはなんなのか。ふつうに宗教として受け入れられているものと、「あやしい宗教」の違いはなんなのか。科学を盾に目に見えないものを否定する人たちは、科学を絶対的なものとする一種の宗教なのではないか。とても難しい。黒に近いグレーか白に近いグレーしかないというのを実感した話でした。


非常事態の今だからこそ、情報とどう付き合うかを考える必要があると思います。そのお供に『FACTFULNESS』はぴったり。


『調査されるという迷惑』『武道館』は別でnoteにちらっと書いたので割愛します。


今年はもう少し読みたいな。

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