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重度障害者の彼女の恋

長年の親友の話である。
彼女は重度障害者で、日常生活のほとんどの場面で介護を必要としている。彼女は恋をしていて、それは一方通行である。相手は健常者の男性である。

この恋の為に彼女がとりうる手段は3つ。
1.思い切って告白する
2.潔く諦める
3.心の思うままにする

1.思い切って告白する
恋心を打ち明けることはおそらく健常者だって勇気のいることだ。
重度障害者にとって、そのハードルは高い。想いを告げるという目的は達成されても、その先のことを考えると彼女は打ち明けない方がお互いの為に良いのではと思っている。愛が育つ前に彼に介護を要求することは、彼女にはとうていできない。


2.潔く諦める
消極的ではあるが、最も彼女が傷つかずに済む方法である。しかし、彼女にとって恋とはいつも諦めるものになってしまい、それで良いのかと彼女は悩む。もう二度と恋などするものかと、高級焼き肉をやけ食いしてしまうかもしれない。


3.心の思うままにする
いずれ時が解決するまで流れに身を任せる。好きと言いたくなったら言えばいい、諦めがついたらそれでいい、強硬手段を取らず、しばらくどっちともつかぬ状態でいるのも良いかもしれない。たとえ眠れぬ夜を過ごすことになっても。

重度障害者が恋を実らせるのはとても難しいのが現実だ。
当事者でない人はよく言う、
「障害と恋愛は関係ない」
「どうなるかわからないよ」
励ましや慰めであることは理解しているが、これほど無責任な言葉はないのだ。
重度障害者だって恋を実らせ結婚をしている人もいる、無理だと思っていた交際が思わぬところから始まることもある。しかし現実問題として、それがどのくらいの確率で実現するだろうかと考えると、それらのポジティブな言葉ほど簡単ではない。
彼女はそれをよくわかっている。だから"そうだね"と空虚に返事をしなければならない。

さて、彼女はどう気持ちにけじめをつけたら良いのだろうか。それともけじめなんてつけないで、このまま悶々とし続けるのが良いのだろうか。

私は彼女に1つ提案をした。
自分を磨き、今より一回り素敵な女性になって、彼の方からアプローチしてくれるような人になること。
それは一長一短にできるわけではなく、その間に彼に恋人ができる可能性はある。それで諦めざるを得なくなるかもしれないが、きっとその努力は無駄にはならないはずだ。
私は、彼女が半年後、1年後、どんな女性になっているか楽しみである。

願わくば、彼が彼女に振り向いてくれますように。

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