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偉大なnezが星になった日

香水を日常的に使っておられる方の中で、調香師の名前を一人でも挙げられる方がどれだけいるだろうか。
そもそも「調香師って何?」という方もおられるかもしれない。

お恥ずかしながら、私はOlivier Pescheux氏(オリヴィエ・ペシュー)の名を知らなかった。
そして、悲しいことに、その名を知った日は、彼が星になった知らせを受け取った日だった。

Olivier Pescheux氏は、diptyqueにおいていくつもの名作を遺している。
私も、そのうちのいくつかを使っていながら、彼の名を気にすることがなかった。

最近でこそ、調香師の名を冠したブランドや、調香師自身が立ち上げたブランドが増えているが、超大手のブランドでもない限り、調香師が前面に出てくることはあまりないように思う。
だから、私なんぞは数年前まで、たとえばChanel No.5はシャネル自身が専門職の手を借りながら調香しているものだと思っていた。
「調香師」という職があることを知っていてもなのだから、それだけ調香師の存在を意識することはあまりない。

タイトルに書いた「nez」とはフランス語で「鼻」のこと。
数多いる調香師の中でも、nezと呼ばれる人たちはとても尊敬されているという。
そして、世界で活躍しているトップ調香師は、わずか150~200人くらいだと聞く。
Olivier Pescheux氏もその中の一人だ。

私は、彼と直接は何の繋がりもない。
それでも何だろう、大切な人がこの世からいなくなってしまったというこの喪失感は…

彼の作品はこれからも店頭に並べられ、人々を幸せにし続ける。
もしかすると、途中でレシピ変更がなされる可能性があるかもしれなくても、「初代」として名は残る。
彼はこの星だけではなく、あちらの星にも居を構えるのだ。

彼の魂が平和であらんことを。

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