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不倫の代償 ①

私の母親は長いこと不倫をしていた。
正確な期間は覚えていないが、おそらく20年前後はしていたと思う。

若くして夫(私の父親)を亡くし
専業主婦だった母親は仕事に出なければならなくなった。
当時、父親も母親もまだ30代。
私は小学生だった。

亡くなった父親の同僚であり親友の男性が
私の母親を心配して色々お世話をしてくれた。
勤め先もすぐに手配してくれた。

二人は少しずつ親しくなり
いつの間にか不倫関係となった。
もちろん、父親の親友であるその男性も既婚者だ。

その当時は携帯電話もない時代。
二人は毎日家電で連絡を取り合っていた。

電話がかかってくると母親は
「あぁ、あなた!!!」
と愛のこもった大きな声を出していつも会話をしていた。
父親のことはそう呼んでいなかったのに。

私が電話の取り次ぎをすることももちろんあったが、決して不機嫌に応対することはなかった。
その男性は母親の好きな相手…という事実は理解していたので、思春期だった私でも理性は働いていた。

二人は、週末に食事したり
月に数回泊まりで出かけたりしていた。
そういう日の夕食は決まって店屋物。
それはそれで楽しみではあった。

しかし、泊まりでいないとなると
私がやらなければならないことが出てくる為かなりのストレスだった。
夕方雨戸をしめなければならないし
お風呂も沸かさなきゃならないし
弟の世話も焼かなければならない。

不倫相手である男性は時々自宅にも来ていた。
悪い人ではなかったので、もちろんニコニコ会話もした。



しかし。



「不倫のくせに」
「食卓で子供とろくに会話もせず家事に追われてるのに、不倫相手の男のことは時間を割いて大事にしやがって」
「甘えた声出して気持ちが悪い」
「子供を家に残して、私にみんなおしつけて、不倫相手と泊まりなんて信じられない」


私の心の奥で日々積み重なるそんな小さなストレス…
母親が不倫相手と繰り広げるその日常が
中高生だった私の心を
知らず知らずにじわじわと蝕んでいった。


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