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2024年1月末のパリ

2024年1月末から2月の頭にかけて、コロナ以後初めてヨーロッパに仕事で行った時に気づいたこと、考えたことを記録しておく。どんどん忘れるので。まずはパリ。と言ってもシャンゼリゼやオペラ、ヴァンドーム広場などのショッピング街しか歩き回っていない。

美しさ至上主義

パリ。私が世界で一番好き、と思っている街。2019年6月以来の訪問なので、本当に久しぶり。空港からのタクシーで高速から一般道に入り、市街を南下していく時のときめきときたら。夕方着いたので、ホテルで荷物を置いたら、すぐ街歩きをすべく出かけた。

まず向かったのはシャンゼリゼ。ルイ・ヴィトンがオープンする予定のホテル(フュチュール・ルイ・ヴィトン)がどのくらいまで建設されているのを見てみたいという部下の要望で。

ジョルジュ・サンクの地下鉄から上がったら、なんと、もう出来上がっているではないか!ルイ・ヴィトンのトランクの形をしたビルが美しくライトアップされている。「あれ?もうオープンでしたっけ?」

おかしいな、と思いながらシャンゼリゼを渡って近づくと、なんてことはない、建物だと思っていたのは、建設現場を囲む仮囲い。中が見える小さな窓もあったので覗いたら、まだまだ基礎ができているくらいの状態だった。

しかし。工事現場をこんなに美しく見せるなんて。

昔からパリは歴史建造物の修復の仮囲いは、日本のそれと違って、完成予定の建物の絵が描かれていたり、あるいは美しい写真を使った広告が掲載されたりしていたと思う。

でも、この仮囲いは、立体的。上の方の蝶番も立体的だし、小窓も内側にライトが仕込まれていて、ライトアップを手伝っている。これを作るだけでもすごい予算が必要そうだ。もちろん、広告にはなるけど、それにしても、すごい。

他のラグジュアリーのショップなども、レノベーションしているところは、広告以上のアートな写真を使用したり、美しい主張をしている。

暗いから美しい

その部下が「街が暗いですね」と言うので驚いた。

そりゃー、東京に比べれば、暗いよね。というか、東京とか香港が異常なんだって、と言おうと思ったが、昨年ニューヨークに一緒に行っていて、タイムズスクエアの明るさを見ている彼からしたら驚きの暗さらしい(でもニューヨークだって、明るいの、タイムズスクエアだけじゃん、とも思う)。

ホテルの部屋も街も暗めで目を刺激しない黄色い灯り。人も調度品も建築物も美しく映し出す灯り。アラを隠す暗さでもあるのだと思う。これがヨーロッパの街の美しさの要素の一つだと思うが、「街が暗い」とまとめられるのはなんとなく癪にさわる。けど、実際、ホテルのバスルームも暗くてコンタクトするときとかに困ったのも事実。

エッフェル塔のシャンパンスパークリング

最後に訪れた時のエッフェル塔は、灯台のようなビームライトを回したりしていて、ホテルの窓から眺めると、カッコいいなあ、とは思っていた。しかし東京タワー(毎日ではないけど)や東京スカイツリーのライティングはとても素敵にデザインされていて、都民としてはちょっとした自慢(訪れる外国人に「綺麗でしょ!」と言える)。どんどん進化している感覚があって、誇りだった。

でも、今回見たエッフェル塔には「また突き放された…」と思った。時間帯が決まっているらしいが、キラキラシャンパンの泡が光るようにまばゆく煌めくライト。技術的にはシンプルそうだけど、見栄えの良さといったら!

タクシーの復権

私はUberが使える国ではUber使いたい派。支払いが簡単なのが一番大きいけど、行き先を間違えられることがない、遠回りされることがない、などもメリット。

だけど、ことパリに限っては、タクシーの方が便利かもしれない。まず、中心部の道路では、パスやタクシー専用レーンがあって、Uber車は通れない。中心部の渋滞がすごい時は、時間に相当な差ができる。また、タクシーはOKでもUberが客を乗せたりおろしたりが禁止ゾーンが結構ある。ステイしていたホテルも観光エリアの道沿いだったから、Uber呼ぼうとしてもブロックの端まで歩いて行かなければならなかった。

前回はそこまでの差を感じなかったので、タクシー業界が権益を守るために、こういう規制を勝ち取ったのかな、と推測する…が、単に私が前回規制に気づかなかっただけかな。

タクシーは空港と市街も固定料金だから安心だし、今のタクシードライバーはみんなナビを使うので(Uberの運転手は携帯のナビだけど、タクシーのナビは画面が大きい)目に見えて最短のルートで行くし、「クレジットカードの機械の調子悪いから、現金にして」みたいなことを言わなくなってる(前はよくあった!)。Uberが参入したおかげで改善したとは思うので、Uber大歓迎である。

シャンゼリゼの盛り上がり

今回驚いたのは、シャンゼリゼがショッピング街としてとても盛り上がっていること。昔は(90年代とか)、ラグジュアリーと言ったら、シャンゼリゼもあるけど、主にはサントノレの方だった。シャンゼリゼは、もちろんルイ・ヴィトンとかゲランはあったけど、ヴァージン・メガストアとか、fnacとか、Marks&Spencerとか、お土産屋さんがぎっしり入った雑居ビルとか、フーケとか、観光客が喜んで買い物したり食事するお店が多かったけど、ラグジュアリーは限られていたように思う。シャネルもエルメスもサントノレ方面だし、ハイジュエリーや高級腕時計の集まるヴァンドーム広場もエリアとしてはそちらの方だし。もちろん当時からモンテーニュ大通りもディオールをはじめ、ラグジュアリーが結構あった。でも今回は、完全にシャンゼリゼ大通り+モンテーニュ大通りのラグジュアリーのパワーがサントノレを圧倒していると感じた。

パリの友人いわく、LVMHがシャンゼリゼとモンテーニュに投資していて、地域の価値を上げ、客をサントノレ方面から奪っている、とのこと。実際、ラグジュアリーのコングロマリットが不動産を購入しているニュースは見かけるので、そうなのかもしれない。サントノレは道も狭いし歩きにくいよね。エルメスとシャネルも頑張らないと…。

サステナビリティはどれほど?

フランスは2040年にはガソリン車を全面禁止することになっているらしいが、今回のパリ市内では全くその兆しを感じなかった。私が電気自動車に詳しくなく、見分けがついていない、というのもあると思うが、それにしても、あと15年でなくしていくようにはとても見えなかった。

また、コロナの間に、車の通行をかなり制限したと聞いていたが、今回歩いたり行動したエリアでは、自動車のレーンを減らして歩行者や自転車のレーンを増やしたり、という道路は見かけなかった。

報道にあった通り、電動キックボードのレンタルはもうなくなっているらしいが、キックボード自体はちらほら乗っている人は見かけた。自前のなのだろう。パリは「歩くにはちょっと遠いけど…」という距離感であちこち行かれる街なので、本当はキックボードって理想的な乗り物だろうと思う。ちょっと残念。

そして、脱プラスチックは徹底していた。ホテルの無料のミネラルウォーターのボトルはガラス瓶だったし(その後行ったバルセロナでも)、買い物をしても袋はなかなかくれないし、くれても紙袋だ。お土産に、百貨店のボンマルシェの食料品売り場「ラ・グランド・エピスリー」のショッピングバッグを買おうと思ったら、ペットボトルを再生したプラスチックバッグはもう売っていなくて、布製のしっかりしたものしかなかった(スーパーのモノプリにはペットボトル再生のプラエコバッグがあった)。ホテルのランドリーバッグも、ポリ袋ではなく、不織布製(その後行ったバルセロナでは、綿の布製だった…)。防水にポリ袋が欲しかった時には、ちょっと不便だった。

オリンピック・パラリンピックの準備は?

正直、今年オリンピック・パラリンピックを迎える都市なんだ!というのはあまり感じなかった。新しいスタジアムが出来ているのが空港からの道から見えたけど、全体的に、もうすぐオリンピック!みたいなポスターとかもそれほど見かけず、熱心にそれをアピールしている感じはしなかった(しているところは、してるのだろうけど)。パリ市民はたしか大半は反対してるんだよね?そして地下鉄も相変わらず全然エレベーターないし(ごく少数の駅にはあるらしい)、道路も決して歩きやすくないし、そこらじゅう段差あるし。地下鉄の駅で、ベビーカーのお母さんに「ちょっと一緒に持って」と声かけられるなど、手伝うのが当たり前、という意味で、人の心はバリアフリーなんだけど、構造物的には、なかなか。しかしこんなんでパラリンピックの選手たちは、空いている時間にどうやって街を巡るのだろう??

クラフツマンシップを大切にする国

パリの友人に「オテル・ドゥ・ラ・マリン」という博物館に行くことを勧められた。ちょうど閉館している期間なので残念ながら行かれなかったが、元々17世紀に王家の住まいの調度品などを調達する機関があった建物。その後海軍が使うようになった。今は、カタールの皇太子だったハマド・ビン・アル・タニの蒐集したアル・タニコレクションおよび海軍が使っていたものの展示、そして代々王家が使ってきた家具やタペストリーなどが展示されているという。

代々王家が使っていたもの…。革命の時に略奪されたりもしたそうだが、17世紀ごろからのものが丁寧に保存されているそうだ。国が、修復の専門チームを持っていて、それらの歴史的なものを修復し続けているそうだ。歴史的なものを修復していくために、国家予算を使う、というところに、歴史ある国の責任を感じる。

オテル・ドゥ・ラ・マリンには行かれなかったが、代わりに、その友人に勧められたニッシム・ドゥ・カモンド美術館に行った。これは商人として大成功したカモンド家が、ヴェルサイユのプチ・トリアノンを模した自宅に蒐集した18世紀後半の美術品や工芸品を家ごと国に寄付したもの。本当に今でも誰か住んでいるの?というくらい生き生きとした展示で、いかに綺麗に保管しているか、感心する。

日本も、例えば正倉院にはさらにはるかに古いものがたくさん保存されているわけで、それ以外にも、全国の神社仏閣などで何世紀も前の工芸品や美術品、織物などが保存されている、ものすごい国。そして、日本にもそれらを現代にも脈々と修復し続けている職人がいる、ということが、常々誇らしいと思ってきた。

そのようなクラフツマンシップを大事にしているフランスとの共通点のように感じて、嬉しい気持ちになる。

移民と難民

…二組のフランス人友人と会えたので、この件の話を聞かされたのだが、これについては長くなるので割愛。日本が今後移民や難民を受け入れていくにあたり、難しさは覚悟しないといけない、ということを痛感した、とだけ記しておく。

おまけ

部下と一緒だったので、日曜日はオフにする必要があり、でも、おかげで、美術館見たり、愛するノートル・ダムの建設の様子を横目に見ながらベルティヨンのホワイトチョコのアイス食べたり、左岸まで足を伸ばしたり、今回のパリ出張は自由時間がたくさんあって幸せだった。しかし、もう20年以上旅行では行っていないのだ。本当は、そろそろ旅行をしたいものだけど。

End.  



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