イベントレポート「G-Challenge KIBOW賞 受賞者が語る!子どもの食育と自己肯定感」
Globis公認クラブ、ワーキングペアレンツクラブ(GPC)が2024/7/26に開催したイベントレポートを、幹事の藤原 直樹(2020期東京校)がお届けします。
今回は、第11回のG-ChallengeでKIBOW賞を受賞し、こどもの料理教室「ゆめつぼ」を運営されているGLOBIS大阪校の大坪さん(23期)と尾崎さん(21期)をオンラインでお迎えし、「G-Challenge KIBOW賞 受賞者が語る!子どもの食育と自己肯定感」というテーマでご登壇いただきました。
大坪さん(大阪校23期)
ゆめつぼCEO・管理栄養士
大学卒業後、保健所、健診機関、少年院、小学校での管理栄養士として10年以上の経験を積む。献立作成、食事相談、料理教室など幅広い業務に従事。
少年院での勤務をきっかけに、こどもたちの自己肯定感の低さや不登校問題に関心を持ち、2017年に「こどもだけの料理教室ゆめつぼ」を創業。
■子どもの食育スポット ゆめつぼ
https://yumetsubo.com/
「こどもが料理をするのが当たり前の世界」を目指し、7名のスタッフと共に活動を続ける。家庭では男児2人(6歳、4歳)の母。
尾崎さん(大阪校21期)
製薬ヘルスケア営業
育休後アドバイザー キャリアコンサルタント
年子で3人の子供を子育て中。男性で育休を一年取得。
育休後アドバイザーとして、男女共同参画センターなどで講演多数。
大坪さんと一緒にゆめつぼでG-challengeでKIBOW賞を受賞。
①データを用いて理解するお手伝いの実態と調理と自己肯定感の関連性について
初めに、尾崎さんから参加者の事前アンケート結果も踏まえた、「調理と自己肯定感の関連性」について講演いただきました。
アンケート結果では、子どもにしてもらうお手伝いの中で「調理・配膳の比率は他のお手伝い(掃除や洗濯など)よりも高い」が、実際には「配膳のみが多く、実際に調理させることは抵抗あり」という結果に。
一方で、子ども自身が回答者のお手伝いに関する意識調査では、好きなお手伝い第1位は「料理」!
回答者の90%は「料理に興味がある」という結果とのこと。
つまり、子どもが好きな「料理のお手伝い」をさせてあげたいと親も思っている一方で、
・子どもにしてもらうと手間がかかる・自分がやった方が早い
・忙しくて時間や余裕がない
・火や刃物を扱わせるのは怖い、危ない
といった理由で、実際に子どもに料理の手伝いはしてもらっていない実態が見えてきました。(チャット欄は共感の嵐)
では、そのハードルを越えて子どもに料理を任せると、どんな良いことがあるのか?
なんと、子どもによる調理経験は「食事観」、「自尊感情」に直接的に影響を及ぼすだけでなく、教科(学校の勉強)に対する関心を高める可能性が示唆された研究結果もあるとのことでした。
②子どもの食育と自己肯定感~ゆめつぼの事例から~
続いて、少年院での勤務をきっかけに、こどもたちの自己肯定感の低さや不登校問題に関心を持ち、2017年に「こどもだけの料理教室ゆめつぼ」を創業した大坪さんから、ご自身の経験やゆめつぼでの事例も交えながら、「こどもの頃から料理をすることのメリット」と「自己肯定感を育む料理の始め方」について語っていただきました。
1.少年院でのエピソード
最初は少年院で働くことに迷いもあったが、「少年院に入所する子は家庭環境が複雑である場合が多く、食育の意義が大きいのでは?」と考え、チャレンジすることに決めた大坪さん。
実際に働き始めると、体にどんな影響があるかも知らず、1日にコーラ数Lやお菓子を大量に食べる子が多いことに驚かされ、「砂糖の摂りすぎは身体に良くない」といったことを教えるところから始まったそうです。
また、「少年院を出た際に一番最初に食べたいものは?」と質問した際に、「親が作ってくれた料理」と答える子が一定数いたことに、「料理で愛情を感じられる」「手料理を大切にしたい」と思ったとのこと。
少年院で調理実習を行ったところ、男子も女子も大喜びで、料理を作り上げたことに大きな達成感を感じている姿を見て、「料理はスポーツと違い、誰でも手軽に達成感を味わうことができる」そして、「自分が作ったものを誰かに食べて喜んでもらうこともでき、いいことづくめじゃないか」と感じたそうです。
ただし、法律や規則のハードルが高く、少年院では5年間の勤務で一度しか調理実習ができなかったことに加え、子どもがいる同級生が「家庭の中で料理ができるのが自分1人で大変」という話を聞き、「子どもの料理教室を開けば、子どもの自己肯定感が高まるだけでなく、家族も皆幸せになれるのでは?」と考え、料理教室を開こう!と起業を決意したそうです。
2.「こどもだけの料理教室ゆめつぼ」の紹介
”こころの栄養”で次世代を育む 全ての子が成功体験を積み、自信を持って社会で活躍する をミッションに、大阪を中心に展開。対象は4歳〜中学生までで、月間参加人数は日本最大規模!
また、料理教室以外にも「1年で冷蔵庫にあるもので1人で料理ができるようになる」独自メソッドによるレシピ動画「 POSICOOK」を展開されています。
■子どもの食育スポット ゆめつぼ
https://yumetsubo.com/
■POSICOOK
https://yumetsubo.com/posicook/
心の健康と身体の健康と2軸で考えた際、
・料理ができない→食の知識が不足→食生活の乱れ→体力・学力の低下懸念
・自己肯定感の低さ→自主性・創造性の低下→学習意欲の低下→不登校や非行のきっかけ
といった、負のスパイラルに陥ってしまう可能性があります。
そういった社会課題に対し、「ゆめつぼ」を通じて、子どものころから料理ができるようになり、自己肯定感も育まれる そんな世界を目指したい と力強く語ってくださいました。
3.自己肯定感を育む料理の始め方
次に、子どもの自己肯定感を育むための料理の始め方についてお話しいただきました。
①対象年齢
→出来るだけ興味があるうち、具体的には小学校低学年くらいまでがおすすめ!(もちろんそれ以上でも大丈夫ですが、思春期になるとハードルが高くなるとのこと)
②包丁やコンロの選び方
→ゆめつぼでは4歳から良く切れる包丁を渡しているが、半年もあれば使えるようになるとのこと。切れない包丁は正しい切り方が身につかず、逆に危険なので、短めでよく切れるものがGood。
※市販ではなかなか「短いがよく切れる包丁」がないため、岐阜県の有名包丁メーカーとゆめつぼに通うこどもたちとで、子どもでも扱いやすい「ゆめつぼうちょう」を開発したとのことです。
ゆめつぼうちょう~こどもたちと一緒に開発した唯一の包丁~
https://yumetsubo.com/yumetsubocho/
また、コンロ(火)については、危険をちゃんと伝える。
鍋への具材の入れ方を教えることがPoint。
③大人の意識改革と(料理が好きになる)言葉かけ
→重要なのは、「きれいにつくる!汚さない!はやくつくる!」の考えを一切取り払うこと
なぜなら、いきなり料理をうまくなってもらうことではなく、料理を好きになってもらうところから始めないと、嫌いになってやらなくなるから。好きになればいずれはうまくなる。順番を間違えないことが一番大切。
汚してもOK、時間をかけてもOK、効率悪くてもOK、という親の意識改革が一番ハードル高いとのことですが、実際にゆめつぼではジャガイモの皮の向き直しなどはさせないとのことです。※やり直しは達成感を奪ってしまう。多少野菜が太くてもよいじゃないか!精神を持つ
④レシピ動画の活用
→1つ1つ説明を受けながら進めることが苦手な子どももいる。子どもは暴走しがちでそもそも話を聞かないもの と理解したうえで、例えば料理をする前にレシピ動画などを見せておくと、子どもはそれに沿ってやろうとするとのことです。
ゆめつぼ キッズレシピMOVIE
https://yumetsubo.com/kidsrecipemovie/
③参加者による感想シェア
尾崎さん・大坪さんの講演後に、参加者の方も交えたブレイクアウトセッションを行い、各自が思ったことを共有いただきました。
・「最初から完璧に作ってほしいという自分の考えをまず変えます」
・「思い切ってこどもに包丁を使わせてみようと思う」
といった具体的なアクション宣言から、
・「関東や仙台でもゆめつぼを開いてほしい」
・「本当に良い事業だと思うので頑張ってほしい」
といった熱いエールのコメントが多くあり、一体感を感じました。
盛り沢山な濃い1時間半で、子どもに料理をしてもらう良いきっかけになった方も多いのではないでしょうか。個人的には終わってすぐに、妻と「多少のことは目をつぶって料理を好きになってもらうところから始めよう」と作戦会議をする夜になりました。
次回は2024年8月23日(金)、みずほ証券株式会社にお勤めで、”お金のプロ”の「くにねぇ」こと國崎さん(オンライン2023期)にご登壇いただき、「くにねえの新NISA講座~お金と子供と 時々 おとん~」をお話していただきます。お楽しみに!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?