北極星

朝、電車の椅子に腰を下ろし
指の先に視線を向けた

人差し指の爪の端
落としきれなかったネイルの
ラメが溜まって小さな輝きが見えた

何度拭っても
取りきれない小さな煌めきは
ありふれた日々の欠片のような
心の奥底に眠る記憶に似ている

そんな煌めきを少しだけ
掻き集めることが上手になった気がしていた

今は新鮮な輝かしい光を見つめることも増えた
同時に靄がかかって何だかもどかしい気持ちで
脳の隅が忙しくしている
これはきっと久しい感覚

私はこんな時
どんな曲を再生して良いか分からない
分かってたはずなのに
何かに乱されている

両耳に居るだけのイヤホンが
肌寒そうにしていた

喫茶店のレモンティーの上で揺れて上がる
対角線の煙草の煙が
少しだけ綺麗に見えた理由を知りたかった
その煙越しに見える私が
どんな顔をして
どんな姿で目に映ったのか
少しだけ教えて欲しかった

yonawoいいよね
そう言って再生してくれた
1月最後の日曜日
夜の空気がとても寒くて。

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眠れない夜に

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