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息子の一人遊び

私は結構なゲーマーで独身時代はぶっ通し50時間プレイなんかもよくやった。結婚後も睡眠時間を削って熱中し、陣痛が始まる直前にもプレイをしていたくらい。育児にも少し慣れ、目が届き、何かあってもすぐに対応できる距離でならゲームくらいは出来るようになったある日の出来事。
一通り一緒に遊んで少し眠くなってくると某教育番組を再生する。育児の味方、あの緑のワンちゃんだ。そうこうしているうちにお昼寝してくれるのが定番のパターンになっていた。お昼寝中は私の趣味の時間。ひと時の自由を満喫する。この当時は某サバイバルゲームにハマっており、お昼寝の気配を察知するとあの番組を再生してPCの電源を入れるのがルーティーンと呼んでも良いくらいだった。

安心とは言え時折目を配るのだがこの日はどうやら寝つきが悪いらしく、横にならずに座って番組を見ている息子。「そのうち寝るだろう」と最低限の目配りだけをしながらゲームに熱中していた。それでも万が一に備えて音にだけは聞き耳を立てている。おかげで番組中の歌はほとんど覚えた。
その一角に「ワンワンとむぎゅしよう♪」と歌いながら番組のマスコットキャラクターとくすぐりあったり、ハグしたり、高い高いしたりするお遊戯があるのだが息子はこれが好きらしく良く声を出して笑っていた。再生中の番組がこの歌に差し掛かったのでそろそろ笑い声が聞こえてくるだろうと思ったが聞こえて来ない。寝たか?と目線をやると息子は座っていた。そして声も出さずに「ワンワンとこちょこちょしよう♪」の歌に合わせてまだおぼつかない手で一生懸命自分をくすぐっていた。

ワンワンを画面越しに見つめて一人では出来ないお遊戯を一生懸命に真似をする息子がいじらしく、とても寂しそうに見えた。途端に自分が情けなくどうしようもないクズに思えてすぐさま息子を抱え、残った歌のフレーズを一緒に歌った。涙声で上手くは歌えなかったが、息子は少し笑って私にもたれかかったままお昼寝した。たまたま真似をしたのか、寂しかったのかは本人のみぞ知る所だが私は愛情の注ぎ方がまだまだ甘いのだと思い知った。
「プレイヤーは死亡しました。」と表示されたゲーム画面を見た時、私のゲームへの執着も死んでくれた気がした。

この日からゲームはほとんどしなくなり、動画再生中も一緒に歌ったりお遊戯したりするようになった。もう少し大きくなったら息子と一緒にゲームをして妻に叱られる日が来るかもしれないけれど、それはそれで幸せそうで楽しみでもある。子と共に親も成長出来るのが育児のすばらしさの一つである。


#子どもに教えられたこと

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