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11:新しいテントを創造する

2種類のタイプが動き出す

前回の10:コンペに参加で、チームの編成が完了しました。
改めて、応募するテーマ「蚤の市を象徴するテントのリデザイン」の概要と事業者に直接ヒアリングをした内容から、どんなものを作っていくのかメンバーでアイデアを募っていきました。

■募集要項詳細
https://note.com/hdc2021/n/n1144ec1eb37f

■直接のヒアリングした内容
・電動工具を使わずに組立てが可能な機構を希望(現状は直接木ネジ)
・サイズは2,000×2,000×2,160(W・D・H)
・屋根は必須(現状はビニール生地)
・飲食店の利用もあるため屋根の生地は透過性のない方が良い
・カウンターのオプションは欲しい
・什器もあると良いが、導入のハードルが高いかも
・暖簾等のサインがあると嬉しい
・イベント時には40台を設置
・輸送に2tトラック2台を使用
・最終的にはこちらのサービスのラインナップに並ぶ予定
 https://machi-kagu.com/

▲リデザインするテント

元々のテントの機構自体がとても簡素かつ、強度がでるようにデザインされていたこともあり、「そもそもこれって、このままじゃダメなんだろうか?」というところまで議論が進んでいきました。
そして、テーマオーナーの株式会社コンパスさんの抱えている課題点・要望をクリアするため、最終的に2種類のタイプをデザインする方針で動き出します。

■リデザイン方針
TYPE01:簡略化を目指すタイプ
TYPE02:拡張性/新規性を目指すタイプ

まず、TYPE01では、以下の4点をクリアして、とにかくこれまで以上に設営や収納を簡略化する方針でリデザインすることにしました。

【TYPE01で考慮するポイント】
・電動工具を使わずに組立てが可能な機構
・イベント時には40台を設置
・輸送に2tトラック2台を使用
・車等での持ち運びシーンを踏まえ、「よりコンパクトなサイズ」での収納性を持つようなテントを実現したい

次に、TYPE02では、最低限の設営や収納を考慮しつつ、これまでの「テント」という考え方から離れて、利用されるシーンを想像しながら、拡張性や新規性を突き詰める方針でリデザインすることにしました。

【TYPE02で考慮するポイント】
・複数機のテント連結させて使用できるような複合的な使い方の実現
・自然との調和、有機性を意識したデザイン
・テント以外の什器(テーブルや椅子等)も展開していくためのモジュールのような仕組み

2種類のタイプがそれぞれどんな動きで進行していったか、次に詳細を説明していきます。


TYPE01:簡略化を目指すタイプ

簡略化を目指すタイプでは、元々金属パーツの技術監修をするはずだった王子全機の木本さんが、「ぼくのかんがえたさいきょうの屋台を見てくれ(原文まま)」というアイデアの図面をポストしたところから始まりました。

最強なだけあって、僅か2種類のパーツ13本だけでフレームを構成する仕組みになっていました。
組立に工具の必要もなく、ジョイントのパーツはローレット加工したものを手で締める方式を採用していました。

四角.001
▲3種類のパーツ
四角.002
▲組み上げると四角くなる
四角.003
▲ジョイント部は手で締める

コスト面や組立ての簡略化を考えて、今市場に出回っている組立て式のテント以上のものを想像すると、四角を基礎の型にしたシルエットになってきてしまうことは分かっていたので、このアイデアは一つの最適解として、アイデアシートへと落とし込むことにしました。


TYPE02:拡張性/新規性を目指すタイプ

一方、拡張性や新規性を突き詰める方針でリデザインを考えていたこちらのタイプでは、建築家の足立さんのアイデアが次々と湧いてきて、MTG毎に形が変貌していきます。
実際のやり取りの記録を見返して自分でも驚いていますが、以下のアイデアの発散やスケッチ/アイソメ図の制作を05/19〜28日の僅か10日間でやっていました。

Vol.01:Y型(ピースサイン)テント
今回のテントには「ピース」というテーマがあったので、TYPE01と同様に共通の制約となっている「コンパクト化」と合わせて、そこからどのような形が考えられるか?というアプローチの元、最初のアイデアを形作っていきました。

Vol.01では、Y型のジョイント材を起点にして、そこから組立てていく方法で考えていき、ピースを「piece」と捉えていくつものピース単位で構成される機構を採用しました。また、形もちょうど「ピースサイン」になるように設計していて複数の「ピース」という意味を持たせることにしました。

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▲Y型を基礎にしたジョイントパーツ
Y屋台.001
▲1つのジョイントにパーツを組んだ図
Y屋台.002
▲5つのジョイントでパーツを組んだ図
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▲14個のジョイントでパーツを組んだ図

このアイデアでは、TYPE02で考慮するポイントに挙げていた「複数機のテント連結させて使用できるような複合的な使い方の実現」は、叶えることができていたのですが、残りの2つのポイントの要素が弱かったので、再考することにしました。


Vol.02:折尺型テント
Vol.01のアイデアをブラッシュアップするつもりで、次のMTG挑んだのですが、足立さんは全く違うアプローチに切り替えていました。
Vol.01に不足していた「有機性なデザイン」や「テント以外の什器も展開していくモジュール」としての要素を加える形で、身近にあった折尺をヒントにしてアイデアが形作られていました。

▲傘のような形をしたテント
展開.001
▲アイデアのヒントになった折尺の機構
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▲実寸代での検証

このアイデアでは、実際に組立てた際の剛性や安定性に欠けるという実現性の理由で、違う形でアプローチしようという話になり、また再考することになりました。


Vol.03:ドーム型テント
Vol.02の剛性や安定性の課題があったので、僕から「アーチ状のドーム型」はどうだろうか?というアイデアを出して、MTG時にみんなでディスカッションしながらVol.03の形を作っていきました。

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▲ハウスのような形のドーム型テント

剛性については、アーチの形状によって担保されそうなことと、安定性については、ロープをペグダウンして張力によって担保できるのではないかと、Vol.03では、課題にしていた2点はクリアし、実現性が出てきました。
この辺りから、使用する部材の木材と金属の割合が、Vol.01の時の木材メインから、金属の部材が徐々に増えていきました。


Vol.04:ベンチ+テント=テント
もう本当にエントリーまでの時間がなく、Vol.03のアイデアをブラッシュアップして、資料化するつもりで最終MTG(アイデアシート提出3日前)を迎えましたが、足立さんは完全にゾーンに入っていたのでしょう。
全く新しいテントのアイデアが共有されました。

今度のアイデアは、「テント以外の什器(テーブルや椅子等)も展開していくためのモジュールのような仕組み」という要望に対して、逆の発想で「什器でテントを構築」するというアプローチで考えられていました。

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▲ベンチからテントを形作るアイデア

Vol.04のアイデアは目指していた拡張性/新規性はもちろんのこと、これまでの3つのアイデアで課題となっていたポイントが全てクリアできる形になっていました。
足立さん的にもかなり手応えがあったようで、既にサイズも検討されていたことやMTGに参加していたメンバーも満場一致で、このアイデアでコンペへ応募することに決まりました。

図面.001
▲寸法を入れた設計図

今回、アイデアでの審査ということで、アイデアシートを提出しないといけなかったので、ここから2日間でアイデアシートの制作を完了させなければいけません。
次回は、本当に時間がなくて提出は無理かもと諦めかけた、12:コンペにエントリーへ続きます。

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