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マッキンゼー流 問題解決の極意 #23

完全無欠(Bullet-Proof)の問題解決プロセス

0.問題解決の失敗要因

  • 問題定義文があいまいなまま分析に入る

  • 過去の経験のみに基づいて解決策を断定する

  • チームや規範を軽視している

  • 問題解決プロセスを反復しない

    • 本書で最も強調されていることの一つ。仮説・分析・結論を行ったり来たりする。

1.問題を定義する

「明確に定義された問題は、半分解決された問題である」

優れた問題定義文には次の6つの特徴がある。

  1. 中間成果やプロセスではなく、最終成果に焦点を当てている

  2. 具体的かつ測定可能である

  3. 時間的制約が設定されている

  4. 意思決定者の価値観や境界線(求められる精度や希望の規模)に対処するよう設計されている:理解を追うごとに問題定義文をアップデートすることで、全ての利害関係者にとって望ましい結果をもたらせる

  5. 構造化されている

  6. 局所最適化ではなく、全体最適化を目指している:1つの事業単位にとって意味のあることが、会社全体にとって意味のあることではない

実際取り組むにあったって、

  • 意思決定者は誰で

  • 意思決定者にかかる外的要因や制約はあるか

  • 問題自体の境界線や時間・金銭的制約はあるか

  • 何を達成すれば成功と言えるか

を論点に問題を定義する。

2.問題を分解する

ロジックツリーを使用して問題を分解し、分析のために構成要素を追跡し、解決策に対する洞察を構築する、最も重要なプロセスである。
鍵となるのはロジックツリーの選定で、「どのツリーであれば、エレガントな解決策を明確に見せてくれるか」が大事である。

本書では主に5つのツリーが紹介されている。

  1. 要因・レバー・構成要素ツリー

  2. 帰納的ツリー:一般原則についてはまだよくわからないが、特定のケースに関するデータや洞察があるという場合に使用する

  3. 演繹的ツリー:特に、ROICは企業の所有構造や余剰現金の規模に関係なく、資産収益に影響を及ぼすレバーを理解することで、企業を比較するのに役立つ

  4. 仮説ツリー

  5. 意思決定ツリー

問題を把握するための初歩的な構成要素ツリーを作るために、初期調査を行う。ここで多過ぎず少な過ぎない、適切な時間と労力を割く必要がある。最初の切り口では、明確な仮説がないため、多くの洞察が得られるわけではない。

ツリーを使って基本的な分解が終われば、既存のフレームワークや理論を用いて、問題をエレガントに洞察に満ちたパーツに分解する。このとき、リフレーミングが有効である。

注意:ツリーから仮説を引き出せない時は、MECEでない可能性が高い

3.優先順位づけをする

優れた問題解決には、「何をするか」と同じくらい「何をしないか」が重要である。

  • 2×2のマトリクスを使って優先順位をつける

4.作業計画を立てる

作業計画を立てるためのベストプラクティスは、仮説がない分析をしないこと。

作業計画の詳細

  • 課題:なぜ看護学校への入学者が減っているか?

  • 仮説:看護学校への需要は依然として高いが、プログラムの定員は減少している

  • 分析

    • 看護学校に応募する資格のある学生の数、入学者数、退学者数の評価

    • ベイエリアにおける看護学校の数と規模

    • プログラムの登録者数が減少した理由を明らかにする

  • データの出所

    • カリフォルニア州登録看護師委員会

    • 米国看護大学協会

    • 看護学校長へのインタビュー

  • 責任者とタイミング

    • XXX(今週末)

  • 最終成果物

    • 学校別の看護師募集、応募、合格率の縦断的なグラフ

    • 入学者数減少の要因分析

    • インタビュー結果

 本書のアプローチは、最も重要な初期分析に焦点を当てた作業計画を実行することである。
 中間目標地点の設定日やプロジェクト全体が計画の時間通りに進むように、ガントチャートを使っておおまかなプロジェクト計画を作成する。
 パレートの法則を活用し、収益の80%をもたらす20%の問題に作業を集中させる。
 プロセスのどの時点であっても、問題について今知っていること(1日の答え)を共有することで、どのような理解が生まれつつあるのか、答えと私たちの間にはどんな未知のものが立ちはだかっているかを明確にする。
 問題解決において、「最高のチームの定義」「陥りやすいバイアス」、「そのバイアスを軽減するアプローチ」が記されている。

状況-複雑化-結論という構造で「1日の答え」を仮定し、作業計画に沿ったチームプロセスの構造のもとで、分析でこれを常に圧力テストにかけていく。
「状況」を要約することで、問題に対する最善の理解を更新することができる。「観察」または「複雑化」することで、問題の緊張感、うまくいかないこと、それを解く方法に対する最善の洞察が得られる。「解決策」とは、私たちを答えに導いてくれる解経路に対する最善の理解なのである。

5.分析をする

全ての分析作業は、問題のレバーの大きさと形状を確認するのに役立つ簡単な要約統計とヒューリスティックスから開始する
ヒューリスティックスは以下が挙げられる。

  • オッカムの剃刀:常に用いる。仮定は少なければ少ないほどよい

  • 複利の成長率:成長を考えるときに用いる。有名な72の法則は、「72を成長率で割ることで、元本が2倍になる期間を推定できる」というものだ

  • S字曲線:新技術や新製品の採用を考えるときに用いる。市場に完全採用される可能性の割合をY軸に、採用後の年数をX軸にとって描かれる

  • アナロジー

  • 損益分岐点:ビジネスモデルの実行可能性を調べるときに用いる

  • 結果の分布:プロジェクトコストの見積もりや、M&Aなどで用いる

  • 5回のなぜ分析


直面している問題と、検証したい仮説を適切に組み立てたとき、問題が本当に複雑な分析を必要とするならば、「奥の手」を使わなければならない。
たとえば、エクセルのAnalysis ToolPakや、Pプロジェクトでは、それぞれ回帰分析と、モンテカルロシミュレーションが利用できる。

ここで注意だが、オックスフォード大教授のロバーツが指摘するように、複雑な分析に着手する前に、問いや仮説を厳密に組み立てることが重要である。科学的方法の本質であるモデルの構造と、検証可能な仮説が明確になるまでは、機械学習による分析を開始してはならない。

下図は、複雑な分析を行うにあたって、どのツールを選択すべきか意思決定するためのツリーである。

分析の選択ツリー

以下、気になった点を抜粋する。

  • 回帰分析の落とし穴として、相関関係と因果関係が別であることには注意が必要である。また、モデルでは考慮されていないが、非常に重要な変数があるかもしれない場合、回帰モデルは誤解を招く可能性がある。

  • ベイズ統計学は、不完全なデータ環境下で、特に複雑な状況における条件付き確率を評価する方法として役にたつ。チャレンジャー号が離陸直後に爆発した原因が例示されている。

    • 爆発の原因は、高温のガスが漏れることを防ぐためのOリングが故障していたことである。

      • Oリングが故障した外的要因は、Oリングが本来温度によって圧縮・膨張するように設計されていたものの、打ち上げ時の気温が異常に低かったことだ。

      • 内的要因は、事故確率を予測するためのデータサンプルが、「Oリングに損傷が発生したフライト」のものしかなく、事故時の状況がデータの外れ値となってしまったことだ。

    • しかし、本来分析すべきだったのは「損傷が発生しなかったフライト」も含む、全てのフライトで条件付き確率を設定することだった。

  • ランダム化比較試験(RCT)は、他のすべての変数をコントロールしながら、1つの変数の変化を検証でき、その代表例にABテストがある。

  • 自然実験は、擬似実験とも呼ばれる。実験をデザインすることで問いにできたとしても、社会的・倫理的制約により実験を実施できない場合がある。このとき、世の中にすでに似たような実験がなされていないかを確認するのが自然実験だ。

  • 感度分析とは、既知のモデルがある場合、モデル内の異なる独立した入力ちを帰ると、結果の分布が変わるもの。

  • 機械学習は、適切な形式のデータが大量にあり、データの中に複雑なパターンや相互作用がある場合に有効である。ただし、ビジネス上の意思決定においては、学習アルゴリズムの採用に必要な大量の高品質のデータが不足していることが多い。

  • ゲーム理論は、難しい競争や敵対的な問題解決場面で使うのに適したツール。

6.分析結果を統合する

データ収集、インタビュー、分析、モデリングから得た知見を統合する。
作業から得られた洞察を強調するために、それぞれの発見を画像や図形の形で表現する。
以下は、図解の方法を学ぶ入門書である。

  • 『マッキンゼー流図解の技術』ジーン・ゼラズニー著

  • 『Google流資料作成術』コール・ナフリック著

7.ストーリーで語る

4.で出た「1日の答え」をピラミッド構造に移行する。
議論を構造化する方法は、「議論構造」と「グルーピング構造」に大別されるが、
本書では、「私は何をすべきなのか?」という問いに答える形で始め、状況を要約し、行動の根拠となる重要な観察事項を説明する順序で語ることを推奨している。
ここで、演繹法に頼りすぎず、帰納法で語ることも大事である。

ストーリーラインの要約が作成できたら、紙面を9つのボックスに分割し、それぞれを漫画やダミーで表現し、各セルの上部にストーリーラインのリード文を記入する。「物語の水平論理の展開とチェック」である。

ストーリーラインの例示とともに、クライアントの経営陣が聞きたくないような結果を伝えねばならない時のストーリーが以下である。
この場合、従来のピラミッド構造ではなく、意思決定ツリー構造を用い、議論のプロセスを明らかにする方が良い。

オイルコ経営陣を納得させるストーリーライン

不確実性に対処する

不確実性は、合理的に予測可能な未来であるレベル1から未知の未知であるレベル5まで五段階に分けられる。
問題がレベル5であるからといって、「難しすぎる」と議論を放棄するのではなく、不確実性のレベルと種類を認識して定量化し、自分たちが制御できるレバーを管理することによって、望ましい結果に向かって進むためのアプローチを開発するのだ。

不確実性は、戦略的な問題解決者にとって好材料になりうるのだ

p.269

不確実性に対処するための6つの行動は以下の通りである。

  • 情報の購入

  • ヘッジ:下振れイベントに対抗するために、合理的なコスト移動や投資を行うこと。化石燃料会社が再生可能エネルギーに投資すること。

  • 低コストの戦略オプション:複数のプロジェクトのポートフォリオを通じて低コストの戦略オプションを選択すること。大手金融機関がFinTechに投資していることが一例。

  • 保険の購入

  • 悔いのない手段

  • 大きな賭け

おまけ

  • 画期的な考え方とは?

    • 課題があった時、「課題を最も高いレベル・次元で解決するには?」という問いを立てる考え方

    • その答えとなるものが画期的な施策

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