文章組手「梅雨」1000字

「低気圧で動けない」

 これが本当に理解できない。天気が悪かったり台風が近づいてくると体調がおかしくなるというツイートを多く見る。正直、「今日は暑いから嫌どすなあ」みたいな感じで天気についての定型文だと思っていた。

 梅雨のツイッター、タイムラインは上記の言葉で埋め尽くされる。それに対して疑いを持っていたがその次に来たのは疎外感だった。「なんだこれは。俺だってみんなと一緒に調子悪くなりたい。ふざけるんじゃないよ」そのように思っていた。
 私はあまりにも鈍感すぎる。精神的な落ち込みがあってもシコるか寝れば復活する。あと、でっかい肉を食えばなんとかなる。それに天気が悪くても「雨か!鬱陶しいなあ!お客さんも来ないわ!」と怒りが大きくなるだけだ。

 別に「低気圧耐性持ちだが何か質問ある?」と言いたい訳ではない。単純に経験したい。低気圧という目に見えぬ存在を感じ、少しは調子悪くなってみたい。単純な好奇心なのだ。だが、私には無縁だった。

 インターネットで疎外感を感じるのはマジョリティの意見に同意できない時だ。1318631方美人の不細工メンの私は「そうだね~」ととりあえずいう。しかし、本当は体の奥底から湧き上がってくるパッションに満ちあふれている。雨なんか全部飲む。任せろや!だが梅雨の天気は私に何も任せてくれない。考えたら仕事でもプライベートでも人に何かを任されることは少ない。信用されていないんだ、俺。うるせえ!そんなのはどうでも良い。とりあえず低気圧にやられてみたいのだ。

 今年の7月は観測史上割と珍しい台風発生なしだったという。おお神よ、低気圧をそこまで私から遠ざけますか?マジファックでございます。
 梅雨が明けると「暑くてダルい」などのツイートが多く出てきた。それは理解できる。そこはマジョリティ。皆と一緒は何よりも安心できる。だからこそ、もっともっと安心したいのだ。皆と一緒になり、一体感を味わい、インターネット軍団になりたいのだ。

 台風は8月に入って発生した。チャンスだ。今年も挑戦をする。低気圧をこの体に浴び、体調を崩してみたい。そしてツイートをするのだ。「低気圧で動けないよ~」と。
 フォロワー(家族)の皆から「嘘ついてんじゃねえよハゲ」とリプライがくるかもしれない。しかし、それでも良い。私はマジョリティになれるのだ。その喜びを噛み締めながら、布団の中で唸っていたい。

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