神奈川県の大山へ
過去3年間、専門アドバイザーと選定委員を務めてきた観光庁による「歴史的資源を活用した観光まちづくり事業」に、今年度も携わらせていただくこととなり、今回は神奈川県の大山へ視察に行って参りました。東京から 1 時間の距離にある大山は、江戸住民にとって歴史的な巡礼地でした。
江戸の火消し、商人、農民たちは、源頼朝の伝統に従い、崇敬として巨大な木刀を神社に集め、大山阿夫利神社の神が雨や水に関連していたことから、大山は様々な職業や農業にとって歴史的に重要な場所となったと言われています。
参拝者は、滝行を行った後、急な傾斜の山道を登って山頂でお供え物を捧げます。山の天気は急速に変化し、丘の斜面を包む細い雲を作り出し、この場所の神秘性をさらに高めているように感じました。ケーブルカーや観光客向けのお店等のマス市場観光向けのインフラは、この魅力を半減させていたことは否めませんが、最近まで町が依存していたマス市場観光のためには必要不可欠な要素だと言えるでしょう。
宿泊は宿坊で提供され、それぞれの宿坊のオーナーが滞在中のガイドとして役割を果たしていました。夜には娯楽が提供されたため、巡礼地でありながらも、都会の喧騒から離れ、楽しく過ごすことができました。観光開発の重要なポイントとしては、歴史的な魅力は保ちながらも、伝統的な宿坊をよりモダンにし、より幅広い旅行者にアピールする必要性が挙げられます。正直なところ、現代の日本人で、10人で1部屋を共有し、バスルームが1つしかない状況に満足する人はほとんどいないのではないでしょうか。外国人観光客ならなおさらです。すでに空き家となっている物件がいくつかあり、所有者が高齢で事業を継続できないため、神社が買い取っていますが、いくつかの改修工事は完了しており、谷を見下ろす神社のカフェでいうと、豪華クルーズ船「GUNTU」の設計も手がけた建築家堀部安嗣によってデザインされています。
ハイキングコースは、ピークシーズン時のオーバーツーリズムへの対応と、「巡礼者」である旅行者に、より深い体験を提供することとのバランスを取る事が求められています。トレイルルートの景観美化やその他の運営上の障害を解決する必要もあると感じました。
滝行は、自然、文化を愛し、健康志向の旅行者を引き付ける大きな可能性を秘めています。権宮司は能楽師でもあり、神社には立派な能舞台があります。彼は地元の子供たちに能を教えており、少しアレンジをすることで特別な体験として運営できるのではと感じました。
成功の鍵は、ターゲット市場の特定、適切な改修工事、そして地元の合意を得ることです。東京からのアクセスの良さを考えると、大山は胸が踊るような可能性を秘めていますが、この地域にどのような旅行者を誘致したいのかという、難しい決断を下さなければなりません。