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温浴施設での事故対策 ~熱中症~

 先日のこと。私がサウナから出たら倒れている方がいました。

 その方は私がサウナ前に湯に入った時点で入浴しており、その時点で舟を漕いでいる状態でした。「大丈夫かなぁ?」と思ったのですが、気持ち良くうとうとしているだけだったら声がけするのは失礼だと判断し、私はサウナ室へ行きました。

 2セット目を終えた約20分後、私がサウナ室から出るとその方は湯船の外で横たわっている状態でした。目撃者によると入浴したまま気を失ったようで顔をお湯につけてブクブクしている所を近くのお客さんが助け出したようです。

 すぐにバイタルのチェックをし、スタッフの方を呼び救急車の手配をし、意識を取り戻したその方は、少し水を飲み落ち着いた様子でした。約5分後救急隊が到着し、搬送されていきました。

 ご存知だとは思いますが、温浴施設で一番多い事故は「熱中症」です。とくにご高齢の方は体温のセンサーなどが衰え、暑いと感じないことが多く、結果的に熱中症になってしまうことが要因の一つです。

 予防することが一番ですが、なかなか難しいのも事実です。万が一熱中症を起こしてしまった際の応急処置を温浴施設のスタッフやお客さんが知って共有しておくことが大切かと考えます。

 熱中症応急処置のキーワードは【 F I R E 】と呼ばれます。

  • F:Fluid 水分補給

  • I:Icing 冷却

  • R:Rest 安静

  • E:Emergency 119番通報

 具体的な対応例としては下のフローチャートに記載の通りに進めていけば良いと思います。身体の冷却法としては水道水をかけ続ける「水道水散布法」が一番合っているかと考えます。

熱中症環境保健マニュアル P26

熱中症の応急処置 フローチャート

熱中症環境保健マニュアル
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

 以前は「蒸散冷却法」といって、身体に微温湯をかけ扇風機などで風を送り気化熱で冷やす方法が取られていましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)のため、蒸散冷却法は原則使用しないこととの通達があります。

Q 従来同様、蒸散冷却法(evaporative plus convective cooling)を用いて、患者を冷却してよいか?
A 蒸散冷却法は原則使用しない。各施設での使用経験や準備の状況に応じて、蒸散冷却法の代替となる冷却法を選択するのが望ましい。

新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き https://www.jaam.jp/info/2020/files/info-20200714.pdf

 そうなると身体を冷やす第一選択は「水道水散布法」になると思います。
ご高齢の方は持病も多く、急速に冷却するとショックを起こしたりすることもあるので、水道水散布法が万人に適していると考えます。

 水道水散布法はその名のとおり水道につないだホースで全身に水をかけ続けるという方法です。これであればどの温浴施設でも対応できるのではないかと考えます。

 また、熱中症の告知ポスターを掲示したりも効果的かと思います。熱中症を予防する方法を知らせ、熱中症の初期症状などがわかれば本人も対応できることも増えるかと思います。

 その掲示には「寝ていると思われる方にはお声掛けします。お客様も周りで寝ている方がいたらお声掛けして下さい」などの文言があると客である私達も寝ている方に対して声がけしやすいので良いのではないかと思います。温浴施設の方ご一考下さい。

 今回参考にした熱中症の資料を添付致しますので、お目通しいただければ幸いです。

 熱中症環境保健マニュアル
 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

 *フローチャートはP26にあります。大きく印刷したい場合ご参照下さい。

 熱中症予防情報サイト
 https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_library.php

『熱中症診療ガイドライン2015』 日本救急医学会
 https://www.jaam.jp/info/2015/pdf/info-20150413.pdf

 新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き
 https://www.jaam.jp/info/2020/files/info-20200714.pdf

 以上御参考まで。

ごとう整骨院 院長 後藤 健司 


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